お前の好きなところ -Side C-
「今日は、私がお前の好きなところを挙げて行こうと思う」
「……まだ続いてたのか」
マイクロトフがカミューに促されて彼の好きなところを言わされた日の、翌日。どうやら今回は逆パターンを試みるらしく、どこかうきうきとした表情のカミューが頬杖をついてマイクロトフを見下ろした。だが口下手気味な恋人のやや呆れたような反応に、カミューはむっ、とわずかに口を尖らせる。
「お前ばかりに語らせるのはフェアじゃないだろう? 私だって、お前を愛している。それに……負けたままでは悔しいからな」
「負けた?」
「こっちの話だ。お前はただ、私に口説かれていればいい」
妖しく微笑むカミューに、マイクロトフは「ならば今日はおとなしく口説かれるか」と提案を受け入れることにした。自分から促すことはないが、カミューが己 のどこを気に入っているのか、気にならないわけではないからだ。
「……ゴホン。まずは……やはり、見た目だな。生真面目さを体現するかのような短く切り揃えられた黒髪に、凛々しく太い男らしい眉。がっしりとした体は、貫禄十分。その温もりと感触を知っているのが私だけというのは、とても誇らしい」
「……」
「続いて、その中身。初めは私と対等に渡り合える好敵手、真面目が服を着て歩いているような面白い奴という印象だったが、お前の人となりを知って行くうちに、徐々に親友以上の好意を抱くようになった。私がよそ者であることで何かと風当たりが強かった時にお前は常に傍 に居てくれて、全力で庇ってくれた……それが、恋心をはっきりと自覚した瞬間だった」
「……そうか」
「だが当然、そんなことを正直に伝えるわけにはいかなかったからな。男から告白されて喜ぶ男など、ほとんどいないだろう。せっかく築いた友情を壊したくなかったし、この想いはずっと胸に秘めたまま、いつかお前がお前を慕う女性と恋に落ちて、その行方を見届けた後にそっと離れようと思っていた」
「……」
「けれど……長く隣にいるうちに、お前も私に気があるのではないかと思い始めた。他の人間への接し方と、私に対する態度や表情が違うことに気が付いたんだ。しかし、確信は持てなかった。仲のいい親友にだけ見せる表情なんて、いくらでもある……自分にそう言い聞かせて、変わらず友であろうとした」
「……」
「それをぶち壊したのが、他ならぬお前だった。いざ私がグラスランドに帰るとなった時にあれ だ。あの日のことは生涯忘れないし、人生で最も幸せだった瞬間だと言っても過言ではない」
「……カミュー……」
その時のことを思い出したのかうっとりと目を細めるカミューを、マイクロトフがじっと見つめる。話がだいぶ逸れたのではないかと思ったが、最早そんなことはどうでもいい。カミューが本心を打ち明けてくれた、それだけで、堪らなく嬉しいのだ。
「……ふふ、ただの告白になってしまったな。本題に戻そう。この、骨張った大きな手も――」
「分かった、お前の気持ちはよく分かった。これ以上聞かされたら、またお前を抱き潰したくなってしまう」
つい先程まで散々愛し合っていたのだ。行為中に「もう無理」「死んでしまう」などと息も絶え絶えに口走っていたくらいだから、「それはさすがに勘弁してくれ」と言われるだろうと、マイクロトフは予想したのだが。
「……話していたら、またシたくなってきたな。もうすっかりお前無しではいられない体になってしまった。責任取れよ?」
上目遣いで誘われて、我慢できるマイクロトフではなく。彼は素早くカミューを組み敷くと、低く掠れた声で囁く。
「……ああ。一生をかけてお前の身も心も満たすと、約束する」
「はは。我が恋人は、こんな時でも真面目過ぎだ。まあ、そんな所も愛おしいんだが」
恋人を受け入れるべく両腕を広げて微笑むカミューの唇に、マイクロトフは衝動のままに己のそれを熱く重ねたのだった。
「……まだ続いてたのか」
マイクロトフがカミューに促されて彼の好きなところを言わされた日の、翌日。どうやら今回は逆パターンを試みるらしく、どこかうきうきとした表情のカミューが頬杖をついてマイクロトフを見下ろした。だが口下手気味な恋人のやや呆れたような反応に、カミューはむっ、とわずかに口を尖らせる。
「お前ばかりに語らせるのはフェアじゃないだろう? 私だって、お前を愛している。それに……負けたままでは悔しいからな」
「負けた?」
「こっちの話だ。お前はただ、私に口説かれていればいい」
妖しく微笑むカミューに、マイクロトフは「ならば今日はおとなしく口説かれるか」と提案を受け入れることにした。自分から促すことはないが、カミューが
「……ゴホン。まずは……やはり、見た目だな。生真面目さを体現するかのような短く切り揃えられた黒髪に、凛々しく太い男らしい眉。がっしりとした体は、貫禄十分。その温もりと感触を知っているのが私だけというのは、とても誇らしい」
「……」
「続いて、その中身。初めは私と対等に渡り合える好敵手、真面目が服を着て歩いているような面白い奴という印象だったが、お前の人となりを知って行くうちに、徐々に親友以上の好意を抱くようになった。私がよそ者であることで何かと風当たりが強かった時にお前は常に
「……そうか」
「だが当然、そんなことを正直に伝えるわけにはいかなかったからな。男から告白されて喜ぶ男など、ほとんどいないだろう。せっかく築いた友情を壊したくなかったし、この想いはずっと胸に秘めたまま、いつかお前がお前を慕う女性と恋に落ちて、その行方を見届けた後にそっと離れようと思っていた」
「……」
「けれど……長く隣にいるうちに、お前も私に気があるのではないかと思い始めた。他の人間への接し方と、私に対する態度や表情が違うことに気が付いたんだ。しかし、確信は持てなかった。仲のいい親友にだけ見せる表情なんて、いくらでもある……自分にそう言い聞かせて、変わらず友であろうとした」
「……」
「それをぶち壊したのが、他ならぬお前だった。いざ私がグラスランドに帰るとなった時に
「……カミュー……」
その時のことを思い出したのかうっとりと目を細めるカミューを、マイクロトフがじっと見つめる。話がだいぶ逸れたのではないかと思ったが、最早そんなことはどうでもいい。カミューが本心を打ち明けてくれた、それだけで、堪らなく嬉しいのだ。
「……ふふ、ただの告白になってしまったな。本題に戻そう。この、骨張った大きな手も――」
「分かった、お前の気持ちはよく分かった。これ以上聞かされたら、またお前を抱き潰したくなってしまう」
つい先程まで散々愛し合っていたのだ。行為中に「もう無理」「死んでしまう」などと息も絶え絶えに口走っていたくらいだから、「それはさすがに勘弁してくれ」と言われるだろうと、マイクロトフは予想したのだが。
「……話していたら、またシたくなってきたな。もうすっかりお前無しではいられない体になってしまった。責任取れよ?」
上目遣いで誘われて、我慢できるマイクロトフではなく。彼は素早くカミューを組み敷くと、低く掠れた声で囁く。
「……ああ。一生をかけてお前の身も心も満たすと、約束する」
「はは。我が恋人は、こんな時でも真面目過ぎだ。まあ、そんな所も愛おしいんだが」
恋人を受け入れるべく両腕を広げて微笑むカミューの唇に、マイクロトフは衝動のままに己のそれを熱く重ねたのだった。
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