酔っているのは、酒のせいだけではなく
「……ここの酒は、値段の割には質が良くないな」
とある村の夜の酒場で静かにグラスを傾けていたカミューが、ぽつりと小声で呟いた。それを聞いたマイクロトフは肉を切っていた手を止め、「そうだろうか?」と返す。
「俺は、この口当たりの軽さは嫌いではないが」
「口当たりが軽いというより、単純に薄いんだ。まるで、水を入れて薄めたような――例えるなら、部屋飲みの最中 にベッドになだれ込んで事が済んだ後に再び飲む、溶けた氷ですっかり薄まったウイスキーだな」
「……」
――親友から恋人となったカミューと共にグラスランドに来てからというもの、とても身に覚えがある。気まずそうに肩を竦 めたマイクロトフへ、カミューは恥じらうことなくははは、と笑った。幸い近くに客はいないものの、このような場で話すことではないだろうと、マイクロトフは溜息を吐く。
「……まったく、お前という奴は……」
「少しは恥じらえ、と? 悪いが私がそんなに可愛げのある人間ではないことは、お前が一番よく分かっているだろう」
「それはそうだが……そういう話は、せめて部屋に戻ってからにしろ。公衆の面前で口にしていい話題ではない」
「ふ、相変わらずお前はお堅いな。ひとたび二人きりになれば、あれだけ情熱的に私を――」
「言ったそばから!」
思わず腰を浮かせて声を荒らげるマイクロトフを、カウンターの奥にいる店主とその手前に座っている数人の客が不思議そうな顔で見つめた。「なんだ、喧嘩か?」「よく見たら二人ともかなりの美形じゃないか」「あの図体は、旅の剣士あたりか?」と話す声が聞こえ、マイクロトフは再び気まずそうに肩を竦めて着席する。
「っ、くくっ……お前は、本当に面白い男だな。見ていて飽きないよ」
「……お前のせいだぞ」
「はいはい、私の発言のせいだな。今夜はお前の希望を何でも聞いてやるから、早く機嫌を直せ」
琥珀色の瞳を妖しく細め人差し指で頬を突 いてくるカミューに、瞬時に脈打った胸の鼓動と体の火照りを感じたマイクロトフは、己 も既に色々な意味で酔っているのだと、改めて自覚したのだった。
とある村の夜の酒場で静かにグラスを傾けていたカミューが、ぽつりと小声で呟いた。それを聞いたマイクロトフは肉を切っていた手を止め、「そうだろうか?」と返す。
「俺は、この口当たりの軽さは嫌いではないが」
「口当たりが軽いというより、単純に薄いんだ。まるで、水を入れて薄めたような――例えるなら、部屋飲みの
「……」
――親友から恋人となったカミューと共にグラスランドに来てからというもの、とても身に覚えがある。気まずそうに肩を
「……まったく、お前という奴は……」
「少しは恥じらえ、と? 悪いが私がそんなに可愛げのある人間ではないことは、お前が一番よく分かっているだろう」
「それはそうだが……そういう話は、せめて部屋に戻ってからにしろ。公衆の面前で口にしていい話題ではない」
「ふ、相変わらずお前はお堅いな。ひとたび二人きりになれば、あれだけ情熱的に私を――」
「言ったそばから!」
思わず腰を浮かせて声を荒らげるマイクロトフを、カウンターの奥にいる店主とその手前に座っている数人の客が不思議そうな顔で見つめた。「なんだ、喧嘩か?」「よく見たら二人ともかなりの美形じゃないか」「あの図体は、旅の剣士あたりか?」と話す声が聞こえ、マイクロトフは再び気まずそうに肩を竦めて着席する。
「っ、くくっ……お前は、本当に面白い男だな。見ていて飽きないよ」
「……お前のせいだぞ」
「はいはい、私の発言のせいだな。今夜はお前の希望を何でも聞いてやるから、早く機嫌を直せ」
琥珀色の瞳を妖しく細め人差し指で頬を
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