無人島のマル秘グルメ
普段は淡々としている表情が険しくなり、澄んだ海色の瞳に、闘志が宿る。敵を前にした時のカイは、まるで別人だ。
双剣を構え、低く腰を落としてカイは目の前の敵――巨大ガニと対峙する。彼は「僕一人で大丈夫、みんなに迷惑をかけるわけにはいかないから」と言ったが、カイはキリルの大切な仲間で、友人だ。「ううん、僕も行く」と言い張るキリルに根負けし、彼はもちろんキリルを心配するアンダルクとセネカ、カイを幼い頃から知るスノウが同行することになった。スノウの同行理由は「僕もカイの友達だから」「鈍 った体を少しでも慣らしてみんなの力になりたいから」だ。
だが、決着は一瞬でついた。真っ先に動いたカイが、左手に宿した『罰の紋章』を発動したからである。
『諸刃の剣』――範囲内の対象にランダムで八回攻撃する、強力にして容赦のない紋章魔法。集中攻撃を浴びた巨大ガニは反撃する間もなく息絶え、その巨体は無人島の美しい砂浜の上に沈んだ。それ が完全に動かなくなった頃を見計らってカイが駆け寄り、再び動き出す危険がないことを確認すると、双剣を器用に使ってさっそく巨大ガニの死体を捌 き出す。
「……私たち、いらなかったみたいですねえ」
「一人でいい、とおっしゃっていた意味が分かりました。やはり真の紋章の力は、桁外れに強い……」
「すごい……でも、カニを捌くのは僕たちも手伝ったほうがいいんじゃないかな……?」
「大丈夫だよ、キリルくん。カイのサバイバル能力と食い意地は人一倍だから。幼なじみの僕が保証する」
四人が話している間にも巨大ガニはみるみるうちに解体され、手際よく火を起こしてほぐした身を焼くと、カイはそれらを串に刺して行く。
「――できた。わざわざ来てくれたんだし、みんなで食べよう」
「……僕たち、何もしてないのにいいの?」
「もちろん。ついてきてくれただけで心強いよ。それにここで食べたほうが、分け前も増えるし」
「カイ、君 ……どれだけ食べるつもりなんだい……?」
スノウが呆れている間に、カイはもう一本目を食べ終わっている。「食い意地は人一倍」という話も本当のようだ。
「ふふ。いっぱい食べる男の子、私好きよ。たくさん食べるのに太らないって、羨ましいわぁ」
「……おいしい。巨大ガニって見た目は怖いけど、こんな味がするんだ。カイが躍起になってたのも、ちょっと分かったかも」
「だろう? 分かってくれる人がいて良かった」
「……流れで私たちもご相伴にあずかっていますが、その……カイ様と仲のよろしいキリル様が感化され、いつかあのような危険な行為に及ばれては……」
「それはさすがに大丈夫だと思うんですけど……彼は普段は冷静で控えめですし。食べ物が絡むと目の色が変わるだけで……」
ひそひそと囁き合うアンダルクとスノウをよそに、一同は捌きたての巨大ガニの身を十分過ぎるほど堪能したのだった。
双剣を構え、低く腰を落としてカイは目の前の敵――巨大ガニと対峙する。彼は「僕一人で大丈夫、みんなに迷惑をかけるわけにはいかないから」と言ったが、カイはキリルの大切な仲間で、友人だ。「ううん、僕も行く」と言い張るキリルに根負けし、彼はもちろんキリルを心配するアンダルクとセネカ、カイを幼い頃から知るスノウが同行することになった。スノウの同行理由は「僕もカイの友達だから」「
だが、決着は一瞬でついた。真っ先に動いたカイが、左手に宿した『罰の紋章』を発動したからである。
『諸刃の剣』――範囲内の対象にランダムで八回攻撃する、強力にして容赦のない紋章魔法。集中攻撃を浴びた巨大ガニは反撃する間もなく息絶え、その巨体は無人島の美しい砂浜の上に沈んだ。
「……私たち、いらなかったみたいですねえ」
「一人でいい、とおっしゃっていた意味が分かりました。やはり真の紋章の力は、桁外れに強い……」
「すごい……でも、カニを捌くのは僕たちも手伝ったほうがいいんじゃないかな……?」
「大丈夫だよ、キリルくん。カイのサバイバル能力と食い意地は人一倍だから。幼なじみの僕が保証する」
四人が話している間にも巨大ガニはみるみるうちに解体され、手際よく火を起こしてほぐした身を焼くと、カイはそれらを串に刺して行く。
「――できた。わざわざ来てくれたんだし、みんなで食べよう」
「……僕たち、何もしてないのにいいの?」
「もちろん。ついてきてくれただけで心強いよ。それにここで食べたほうが、分け前も増えるし」
「カイ、
スノウが呆れている間に、カイはもう一本目を食べ終わっている。「食い意地は人一倍」という話も本当のようだ。
「ふふ。いっぱい食べる男の子、私好きよ。たくさん食べるのに太らないって、羨ましいわぁ」
「……おいしい。巨大ガニって見た目は怖いけど、こんな味がするんだ。カイが躍起になってたのも、ちょっと分かったかも」
「だろう? 分かってくれる人がいて良かった」
「……流れで私たちもご相伴にあずかっていますが、その……カイ様と仲のよろしいキリル様が感化され、いつかあのような危険な行為に及ばれては……」
「それはさすがに大丈夫だと思うんですけど……彼は普段は冷静で控えめですし。食べ物が絡むと目の色が変わるだけで……」
ひそひそと囁き合うアンダルクとスノウをよそに、一同は捌きたての巨大ガニの身を十分過ぎるほど堪能したのだった。
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