月明かりに照らされて

「今宵の月は、明るいな」
「……そうだね」
 しっとりと汗に濡れた体を寄せ合って、襖越しに月明かりを眺める。
「確か今日って、満月じゃないんだよね? なのに、お前と来たら」
「……すまない。月明かりに照らされた兄者があまりにも綺麗で、つい……」
「つまり、ひと足早く狼男に食べられちゃった、ってわけか。はあ……」
 くったりと胸に寄りかかってくる髭切を、膝丸は労わるように優しく抱き寄せた。両者共にひどく体力を消耗し、喉もカラカラだ。
「水を持って来ようか?」
「うん……でも、もう少しだけこうしてたい……」
 さらに胸に顔を寄せてくる髭切に、たまらない愛おしさが込み上げる。膝丸がその額や頬、唇に柔らかな口付けを落とすと髭切がくすぐったそうに体を丸めてくすくすと笑い、やがて二人は長い脚を絡めて、しばし睦み合ったのだった。
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