ひだまり兄妹
小川の辺 に膝を抱えて座るサラを見つけて、ユリアンは、やや早足で近付きながら声をかけた。
「サラ? こんな所で何してるんだ?」
「あ、ユリアン……」
顔を上げて振り向いた少女は泣いてこそいなかったが、その表情は暗く、落ち込んでいるのは明らかだった。これはオレの出番だなと傍 らに立ち、兄貴分の一人として、また年上の親友として、相談に乗る体勢に入る。
「……原因は、エレンか?」
「……うん。マキ割りをしてみたいって言ったら、危ないからダメ、って」
「やっぱりかー。サラを大事に思ってるのは分かるけど、度が過ぎるんだよなーエレンは。なんでもかんでもダメダメ言ってたら、なんにもできない人間になっちまうってのに」
「うん……私だってもっと色々なことをできるようになって、みんなの役に立ちたい。守られるだけなんて、イヤ」
「だよな。サラは器用で頭もいいってトムも褒めてたくらいだし、〝もう大人〟なんだから、一人で色々やってみたいよな」
そこまで言って青年は、きょろきょろと辺りを見回した。話題に出した「トム」ことトーマスは家の用事があって来られないことは分かっているが、サラの姉であるエレンの姿が見えないことに、今更ながら疑問を抱いたからだ。
「噂 しておいて何なんだけど、エレンは?」
「おばあちゃんを手伝ってるわ。さっき言ったマキ割りとか、力仕事は全部」
「なるほど。仕事中でもそうだもんな。あんなに細いのに、あの怪力……つくづく不思議だよなぁ。実は脱いだら凄いタイプだったり? ……あ、いや、変な意味じゃなくてだな。腹筋が割れてるとか、そういう」
「その割には顔がニヤけてますよ、ユリアンさん」
サラのからかうような口調に、ユリアンはあっさり観念した。大げさに肩を竦 めてみせたが、その顔には優しい笑みが浮かんでいる。
「しょうがないだろー、男子なんだから。本人がいない所での勝手な妄想くらいは許してくれって。
……ついでだからこのまま、オレの畑に来ないか? 色々な野菜が収穫時を迎えてるから、カーソン家にもお裾分けするよ」
「え、いいの? いつもありがとう。じゃあ貰った野菜で、またパウンドケーキを作るね」
「おー、あのうまいヤツか~嬉しいなぁ。トムの手料理とサラの手作りデザートで、またテーブルが賑わうな。楽しみだ」
年下の少女にも笑顔が戻り、二人は顔を見合わせて笑い合った。出会ったばかりの頃は複雑な気持ちを抱いてトラブルも起こしたが、今では可愛い妹のように思っている。弟分と妹分同士、お互いにしか相談し合えないこともあるくらいなのだ。
(――『宿命の子』じゃなかったとしても。サラはオレたちの妹で、大切な仲間だ。絶対に、何があっても護 る)
『死食』によって生まれて間もなく死んだ、実の妹の分まで。笑顔の下に今一度強い決意を秘め、前を行く黄緑髪の青年は、お馴染なじみの仲間たちとパブで過ごす至福の時間に思いを馳せたのだった。
「サラ? こんな所で何してるんだ?」
「あ、ユリアン……」
顔を上げて振り向いた少女は泣いてこそいなかったが、その表情は暗く、落ち込んでいるのは明らかだった。これはオレの出番だなと
「……原因は、エレンか?」
「……うん。マキ割りをしてみたいって言ったら、危ないからダメ、って」
「やっぱりかー。サラを大事に思ってるのは分かるけど、度が過ぎるんだよなーエレンは。なんでもかんでもダメダメ言ってたら、なんにもできない人間になっちまうってのに」
「うん……私だってもっと色々なことをできるようになって、みんなの役に立ちたい。守られるだけなんて、イヤ」
「だよな。サラは器用で頭もいいってトムも褒めてたくらいだし、〝もう大人〟なんだから、一人で色々やってみたいよな」
そこまで言って青年は、きょろきょろと辺りを見回した。話題に出した「トム」ことトーマスは家の用事があって来られないことは分かっているが、サラの姉であるエレンの姿が見えないことに、今更ながら疑問を抱いたからだ。
「
「おばあちゃんを手伝ってるわ。さっき言ったマキ割りとか、力仕事は全部」
「なるほど。仕事中でもそうだもんな。あんなに細いのに、あの怪力……つくづく不思議だよなぁ。実は脱いだら凄いタイプだったり? ……あ、いや、変な意味じゃなくてだな。腹筋が割れてるとか、そういう」
「その割には顔がニヤけてますよ、ユリアンさん」
サラのからかうような口調に、ユリアンはあっさり観念した。大げさに肩を
「しょうがないだろー、男子なんだから。本人がいない所での勝手な妄想くらいは許してくれって。
……ついでだからこのまま、オレの畑に来ないか? 色々な野菜が収穫時を迎えてるから、カーソン家にもお裾分けするよ」
「え、いいの? いつもありがとう。じゃあ貰った野菜で、またパウンドケーキを作るね」
「おー、あのうまいヤツか~嬉しいなぁ。トムの手料理とサラの手作りデザートで、またテーブルが賑わうな。楽しみだ」
年下の少女にも笑顔が戻り、二人は顔を見合わせて笑い合った。出会ったばかりの頃は複雑な気持ちを抱いてトラブルも起こしたが、今では可愛い妹のように思っている。弟分と妹分同士、お互いにしか相談し合えないこともあるくらいなのだ。
(――『宿命の子』じゃなかったとしても。サラはオレたちの妹で、大切な仲間だ。絶対に、何があっても
『死食』によって生まれて間もなく死んだ、実の妹の分まで。笑顔の下に今一度強い決意を秘め、前を行く黄緑髪の青年は、お馴染なじみの仲間たちとパブで過ごす至福の時間に思いを馳せたのだった。
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