日頃の感謝を込めて

「トム、ユリアン。いつもお世話になってるから、今年もこれ、受け取って」
 サラから差し出された赤いハート型の箱を、トーマスとユリアンが、目を細めて受け取った。可愛い妹分からの贈り物を、拒む理由などない。
「ああ……そういえば、今日はそういう日だったか。ありがとう、サラ。大事に食べるよ」
「こちらこそ、いつもありがとな、サラ」
「どういたしまして。ほら、お姉ちゃんも」
 サラにうながされ、扉の陰から彼女の姉であるエレンが姿を現す。毎年恒例のこととはいえ、やはり照れ臭さは抜けないらしい。
「……毎年言ってるけど、中身は二人とも同じだし、義理だからね。変な期待をするんじゃないわよ」
 エレンからは、飾り気のない四角い箱。それでもその気持ちが嬉しくて、ユリアンとトーマスは、笑顔で頷く。
「分かってるって。それでも嬉しいよ、ありがとな、エレン。……初めて貰った時、チョコに思いっきり〝義理〟って書いてあったのには笑ったなぁ。どこで売ってたんだよ、あんなチョコ」
「こら、茶化すな。――エレンもありがとう。二人とも、お返しは一ケ月後に必ずするからな」
「うん。楽しみにしてるね」
「……まあ、ほどほどに期待しておくわ」
 ニコニコと笑い合うサラ、トーマス、ユリアンと、ぽりぽりと頬を掻くエレン。だがこの場に流れる穏やかで和やかな空気に、エレンもふ、と息を吐き、自然と表情を緩めたのだった。
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