いつもお決まりの散歩コースがあった。


右に父さんが、左に母さんがいて。
オレはその真ん中で、両手を繋いで。

道の途中に水たまりがあれば、父さんと母さんは一緒に

「それっ」

なんて言いながら、オレの手を空中へ引っ張り上げるんだ。


「ねぇ、もう一回やってよぉ」
「ええ？もう重いから嫌よお」
「ははっ。母さんは日頃の鍛え方が足りないんじゃないか？」
「まぁ言うわね。でも現役のボクサーに言われても悔しくはないわ」
「む」
「ねぇ、もう一回〜」
「まったく一郎は元気ねぇ」
「それっ」
「やったぁ。あはははっ」





いつしか左手は空になり、
そして右手も・・・・




春になると
桜を見ると


あの日失った笑い声がどこからか聞こえてきて






オレはまたそっと両手を
ポケットにしまいこむ。






END



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2021/10/26 高杉R２６号
スキボタンありがとうございました！
宮田くんがいつも両手をポケットに入れているのには暗い理由があるんじゃないかと妄想してみました。中途半端なポエムですいません。