首なし騎士:お題


「……」
「……」

数分の睨み合いの末、一寸の隙もない彼に手を上げて降参を示した。
満足そうに唇の端を持ち上げると、壁に追い込まれた私の顎に手を掛け、軽く上向かせる。
彼の端整な顔を間近で見つめたと思った次の瞬間には、唇を塞がれた。
大きな彼の手が私の後頭部をしっかりと支え、深く深く合わさる。
恥ずかしさにきつく目を閉じているが、彼が笑っているのは解った。

キスなのか喰われているのかいまいち判断出来ないが、どっちであれ、きっと私の唇は腫れる。
当分部屋から出れなくなるから止めてほしいが、彼は一度では満足してくれないのだ。
翻弄されるようなキスの中、息苦しくて彼の胸を叩いたがぜんぜん止めてくれる気配がない。

「ーーッ!」

声にならない声で抗議すると、ようやく彼は唇を離した。
上がった息を整える間も惜しいのか、見上げたアルベルトの顔はあからさまに不満そうだ。
赤く瞬く瞳の奥に、獣のような獰猛さを押し殺した光がちらつく。
射竦められるような鋭い視線が、私を急かすように見つめ続ける。

何度か深呼吸し、再び彼を見上げる。
彼は心底嬉しそうに笑って、私の唇を塞いだ。
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