虹色ドーナツ vol.2~恋せよ乙女~
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まず、出場者の名前とクラス、お相手の女の子の紹介が行われた。
各学年五クラスあるうち、三年生は四チーム、二年生は三チーム、一年生一チームの計八チームが参加している。
並び方はエントリー順のようで、私達はステージ下手の端に立っていた。
私の斜め下にいる司会者の、弾けるような声が響いた。
「では、この晴れ舞台に立っての気持ちを一言ずつどうぞ!」
キツネ似の男子生徒がマイクを持って出てきて、一番はじっこにいた私が最初にマイクを向けられた。
「えっ?ちょっと待って……何を言えば……」
マイク係のキツネ君が「思ってることを何でも」と助け船を出してくれる。
それでは――
「もし優勝しても、私はA定食食べられないんですよね」
一瞬の静寂の後、会場は笑いに包まれる。
「おい、そうじゃなくて、このコンテストへの意気込みみたいなもんを言うんじゃねえのか?」
魁童が慌てて耳打ちをしてくれる。
「あ~、バカップルコンテストの「バカップルじゃねえ、ベストカップルだっ!!!」」
私達の会話をマイクが拾っているらしく、会場のあちこちからクスクス笑いが漏れる。
「よ!バカップル」なんて掛け声も飛ぶ。
「どっちも似たようなもんだと思うけどね……よし、わかった。では、改めまして……」
私は、差し出されたマイクに顔を近づけた。
「お米がほしいです~!ぜひとも……ぅわっ」
「もうおまえ強制終了!マイクよこせっ、俺の番だ」
魁童は、キツネ君からマイクをとりあげ叫んだ。
「食い物のことばっか考えてないで、ちったあ俺のことも考えろ!!」
観客から爆笑とともに拍手が起こった。
キツネ君にマイクを返すと、魁童は私を横目で見ながら
「おまえ、面白すぎ」
と呟いた。
他のカップルは皆さん、どれだけ相手のことが好きだとか、ずっと一緒にいようとか、そんな甘ったるいことを言っていた。
なるほど、ああいうことを言わないといけなかった訳ね…
私は片手で拝むような仕草をして、魁童に向かって(ごめん)と口を動かした。
魁童は、目で笑いながら親指を立てて応えてくれた。
さて、全員の『一言』が終わり、次は――というところで、客席からの声に司会者が呼び止められている。
なにか物言いがついたのだろうか……
最前列の生徒がマイクを受け取り喋り出す。
「24HRチームの二人って、本当に付き合ってるの?
なんか違和感あるんだけど。山田が出られなくなったからって、適当にカップルに仕立ててんじゃないの?」
24HRって、私達だよね!?
さては……私達がウケてたことに危機感を持って、他のクラスが妨害工作に出たな。
米10キロがかかってるのに、そうはさせるものかあ~!
「何をおっしゃいますやら」
私は、魁童の腕に抱きついた。
「私達こーんなに仲良しなのに、偽装だなんて失礼極まりない……ねえ、かっちゃん!」
魁童に目で同意を求めると、真っ赤になり、声を上ずらせながらも、調子を合わせてくれた。
「全くだ……てめえら、俺達があんまりに似合いのカップルだからって、嫉妬してんだろ。なあ……はるか……はるかタン♪」
魁童のクラスメイト達だと思われる人の輪から、爆笑と拍手が沸き起こる。
「おいっ!おまえら、笑うんじゃねえ!!」
ったく……こちとら必死だってえの、と魁童が呟く。
ふと魁童の方を見ると、目が合った。
照れたような笑いを浮かべる魁童に、つられて私も笑顔を返す。
「え~次のお題は、"互いを何と呼んでいるか"ですので、24HRチームは"かっちゃん"、"はるかタン♪"という答でクリアーとします」
司会の言葉に何とか救われ、私達は大きく息をついた。
*
他にも、『相手のことをどれだけ理解しているか』が問われる、いくつかの質問が出題された。
相手の得意、不得意教科というお題では、魁童は私が数学苦手だ、ってことは合ってたけれど得意科目は不正解。
反対に私は、魁童の得意科目は知ってるけれど、不得意はわからない、という結果だった。
"お互いの好物"は…どちらも『ドーナツ』で、正解。
"好きなブランド"は……
以前、魁童がプチ家出してきた時のバッグが『フーマ』だったからそう書いたら、正解。
魁童の答『コシヒカリ』って……そりゃま、ブランドには違いないけれども……不正解。
そんなこんなで質問コーナーは終了し、コンテストは新たな課題へ。
「さてお次は……女子の皆さんによる林檎の皮剥きです!」
隣チームの女の子は、口に手を当て「え~どうしよう~」なんて彼を見上げて、いちゃいちゃと可愛らしいこと。
「林檎を丸のまま、切れないようになるべく長く皮を剥いて下さい。それが出来たら、きれいに切って彼に食べさせてあげて下さい」
私にとっては……得意分野!日常茶飯事!まさに日々の生活の延長線上。
「いや~得意なことで良かったよ。"数学の問題を解け"なんて言われたら、完全にお手上げだったもん」
魁童と二人、思わずニヤリ。
「おさんどん係、期待してるぞ」
林檎と包丁、まな板が人数分載せられた机を、キツネ君がガラガラと引いてきた。
「制限時間は三分間。その前に切り終わった場合は、そのまま待っていて下さい。では、用意……はじめ!」
スタートの合図とともに、乙女の真剣勝負(?)の幕が切って落とされた。
何人かの女の子が悪戦苦闘している中、私は特に苦もなく林檎を剥き終え、八つに切り分けた。
皮を全部剥いちゃったら、ウサギリンゴにできないじゃん…なんて思いつつ林檎をお皿に移していたところで、タイムオーバーを告げる笛が鳴った。
皮は、あともうちょっとってところで切れてしまったが、高校生主婦を自負する私にとって、一応納得の出来だった。
「では、愛しの彼に食べさせてあげて下さい。どうぞっ!」
お皿を手に魁童の横に立つ。
他のチームから聞こえてくる『あーん♪』てやつを、私も真似てみることにした。
「じゃ……はい、あ~ん」
魁童の口元にひと切れの林檎を差し出すと、はた目にもわかるくらいに彼の顔は赤い。
一瞬ためらった後で、思いきったように林檎を口にする。
じっと見られるのが恥ずかしいのか、顔をそらしながら咀嚼する魁童に、
「おいしい?……って、私が作った訳じゃないけど」
と声をかける。
ゴクンと飲み下してから、
「今まで食った林檎の中で、一番うまいっ」
とびきりの笑顔をみせる魁童。
私は、ふた切れ目の林檎をつまんだが、思わず彼の顔と林檎とを見比べた。
そんなにおいしいのか………
――パク――
「あーっ!!おいこらっっ!!!自分で食うなよっ」
魁童の絶叫が響く。
「だって……どんなにおいしいのかなって気になっちゃって……」
観客席に、再び笑いが起こる。
まずまずの成績を残して(と勝手に解釈して)林檎の皮剥きは終了。
「お次は、男子による"彼女の似顔絵"です。実物を見ず、記憶だけを頼りに描いていただきます。その間に女子の皆さんには、最終審査の水着に着替えていただきます」
「「水着!?」」
魁童と私は、同時に声をあげて顔を見合わせてしまった。
他のチームは、別段慌てる様子はない。
ということは、水着審査は毎年恒例で、皆さんちゃんとリサーチ&了承済みなんだな。
「水泳の授業だと思えば、何とか……」
私は、呆然とする魁童と自分を鼓舞するように呟いた。
だが、追い打ちをかけるがごとく、司会者の言葉が続く。
「例年どおり、水着にはいろいろな形のものがあり、誰にどれが当たるかはわかりません。中には、超セクシーなビキニも混ざっておりますので、皆様どうぞお楽しみに!」
観客席がどよめく。
「魁童……ビキニなんて当たっちゃったら、どうしよう……っと……え?ちょっと……」
魁童は私の手をとると、客席に向かってスタスタ歩き出した。
そして、ステージの端まで来ると手を離し、体育館のフロアに飛び降りた。
そのまま、司会者のマイクを奪う。
「わりい、俺、おりるわ」
客席がざわめく。
「今さら何言ってんだよー」という声も聞こえる。
「24HRのみんなには悪いと思うけどさ…好きな女の水着姿を晒し者にするなんて……俺にはできねえ」
マイクを司会者に押し付けた魁童は、ステージの先端に立ち尽くしている私のそばに歩み寄ると、
「ほら」
と手を差しのべてくれた。
「あ……うん……」
彼の手をとろうとしゃがみこんだ時、司会者の声が聞こえた。
「えー、皆さんお静かに願います。ただいま、24HRチームから棄権する、という意志表明がありました。ですが……司会者個人の意見としましては、ここまで盛り上げてくれたチームのリタイアは、もったいない気がします」
一旦静まった客席が、再びざわめき出す。
「出来ましたら、24HRチームには、水着を選べる権利を与えて、参加続行をお願いしたいのですが……皆様、ご賛同いただけますでしょうか」
会場から、割れるような拍手が起こる。
「魁童……」
「はるかが大丈夫って言うなら、続けるけど……無理すんなよ?」
「うん!わかった。心配してくれてありがとうね」
拍手の波に送られて、私を含む女子一同は更衣室に向かった。
体育館の舞台裏にしつらえられた更衣室で私が選んだのは、空色に白い小花模様のワンピースで、下はスカートになっているものだった。
着替え終わると、みんなでステージに戻った。
「「おお~~っ!!!」」
という歓声に迎えられる。
男子校だけあって、男子が多いんだろうな……とぼんやり考えつつ、魁童の前まで進む。
「ごめん……みんなすごくグラマーなのに、私はこんなに貧弱で……」
そう、皆さん本当に発育がよろしくて、ボンキュッボン!のグラマラスなボディの持ち主で。
なんだか、恥ずかしいのを通り越して申し訳なくなってしまい、私は胸に手を当てて魁童に謝った。
頬を赤く染めた魁童は、目のやり場に困った様子だったが、私の手につられてその視線は胸元にたどり着く。
浅いとはいえ、一応それらしくできた谷間で彼の目が止まった……と思ったその途端――
鼻血を噴いた。
*
各学年五クラスあるうち、三年生は四チーム、二年生は三チーム、一年生一チームの計八チームが参加している。
並び方はエントリー順のようで、私達はステージ下手の端に立っていた。
私の斜め下にいる司会者の、弾けるような声が響いた。
「では、この晴れ舞台に立っての気持ちを一言ずつどうぞ!」
キツネ似の男子生徒がマイクを持って出てきて、一番はじっこにいた私が最初にマイクを向けられた。
「えっ?ちょっと待って……何を言えば……」
マイク係のキツネ君が「思ってることを何でも」と助け船を出してくれる。
それでは――
「もし優勝しても、私はA定食食べられないんですよね」
一瞬の静寂の後、会場は笑いに包まれる。
「おい、そうじゃなくて、このコンテストへの意気込みみたいなもんを言うんじゃねえのか?」
魁童が慌てて耳打ちをしてくれる。
「あ~、バカップルコンテストの「バカップルじゃねえ、ベストカップルだっ!!!」」
私達の会話をマイクが拾っているらしく、会場のあちこちからクスクス笑いが漏れる。
「よ!バカップル」なんて掛け声も飛ぶ。
「どっちも似たようなもんだと思うけどね……よし、わかった。では、改めまして……」
私は、差し出されたマイクに顔を近づけた。
「お米がほしいです~!ぜひとも……ぅわっ」
「もうおまえ強制終了!マイクよこせっ、俺の番だ」
魁童は、キツネ君からマイクをとりあげ叫んだ。
「食い物のことばっか考えてないで、ちったあ俺のことも考えろ!!」
観客から爆笑とともに拍手が起こった。
キツネ君にマイクを返すと、魁童は私を横目で見ながら
「おまえ、面白すぎ」
と呟いた。
他のカップルは皆さん、どれだけ相手のことが好きだとか、ずっと一緒にいようとか、そんな甘ったるいことを言っていた。
なるほど、ああいうことを言わないといけなかった訳ね…
私は片手で拝むような仕草をして、魁童に向かって(ごめん)と口を動かした。
魁童は、目で笑いながら親指を立てて応えてくれた。
さて、全員の『一言』が終わり、次は――というところで、客席からの声に司会者が呼び止められている。
なにか物言いがついたのだろうか……
最前列の生徒がマイクを受け取り喋り出す。
「24HRチームの二人って、本当に付き合ってるの?
なんか違和感あるんだけど。山田が出られなくなったからって、適当にカップルに仕立ててんじゃないの?」
24HRって、私達だよね!?
さては……私達がウケてたことに危機感を持って、他のクラスが妨害工作に出たな。
米10キロがかかってるのに、そうはさせるものかあ~!
「何をおっしゃいますやら」
私は、魁童の腕に抱きついた。
「私達こーんなに仲良しなのに、偽装だなんて失礼極まりない……ねえ、かっちゃん!」
魁童に目で同意を求めると、真っ赤になり、声を上ずらせながらも、調子を合わせてくれた。
「全くだ……てめえら、俺達があんまりに似合いのカップルだからって、嫉妬してんだろ。なあ……はるか……はるかタン♪」
魁童のクラスメイト達だと思われる人の輪から、爆笑と拍手が沸き起こる。
「おいっ!おまえら、笑うんじゃねえ!!」
ったく……こちとら必死だってえの、と魁童が呟く。
ふと魁童の方を見ると、目が合った。
照れたような笑いを浮かべる魁童に、つられて私も笑顔を返す。
「え~次のお題は、"互いを何と呼んでいるか"ですので、24HRチームは"かっちゃん"、"はるかタン♪"という答でクリアーとします」
司会の言葉に何とか救われ、私達は大きく息をついた。
*
他にも、『相手のことをどれだけ理解しているか』が問われる、いくつかの質問が出題された。
相手の得意、不得意教科というお題では、魁童は私が数学苦手だ、ってことは合ってたけれど得意科目は不正解。
反対に私は、魁童の得意科目は知ってるけれど、不得意はわからない、という結果だった。
"お互いの好物"は…どちらも『ドーナツ』で、正解。
"好きなブランド"は……
以前、魁童がプチ家出してきた時のバッグが『フーマ』だったからそう書いたら、正解。
魁童の答『コシヒカリ』って……そりゃま、ブランドには違いないけれども……不正解。
そんなこんなで質問コーナーは終了し、コンテストは新たな課題へ。
「さてお次は……女子の皆さんによる林檎の皮剥きです!」
隣チームの女の子は、口に手を当て「え~どうしよう~」なんて彼を見上げて、いちゃいちゃと可愛らしいこと。
「林檎を丸のまま、切れないようになるべく長く皮を剥いて下さい。それが出来たら、きれいに切って彼に食べさせてあげて下さい」
私にとっては……得意分野!日常茶飯事!まさに日々の生活の延長線上。
「いや~得意なことで良かったよ。"数学の問題を解け"なんて言われたら、完全にお手上げだったもん」
魁童と二人、思わずニヤリ。
「おさんどん係、期待してるぞ」
林檎と包丁、まな板が人数分載せられた机を、キツネ君がガラガラと引いてきた。
「制限時間は三分間。その前に切り終わった場合は、そのまま待っていて下さい。では、用意……はじめ!」
スタートの合図とともに、乙女の真剣勝負(?)の幕が切って落とされた。
何人かの女の子が悪戦苦闘している中、私は特に苦もなく林檎を剥き終え、八つに切り分けた。
皮を全部剥いちゃったら、ウサギリンゴにできないじゃん…なんて思いつつ林檎をお皿に移していたところで、タイムオーバーを告げる笛が鳴った。
皮は、あともうちょっとってところで切れてしまったが、高校生主婦を自負する私にとって、一応納得の出来だった。
「では、愛しの彼に食べさせてあげて下さい。どうぞっ!」
お皿を手に魁童の横に立つ。
他のチームから聞こえてくる『あーん♪』てやつを、私も真似てみることにした。
「じゃ……はい、あ~ん」
魁童の口元にひと切れの林檎を差し出すと、はた目にもわかるくらいに彼の顔は赤い。
一瞬ためらった後で、思いきったように林檎を口にする。
じっと見られるのが恥ずかしいのか、顔をそらしながら咀嚼する魁童に、
「おいしい?……って、私が作った訳じゃないけど」
と声をかける。
ゴクンと飲み下してから、
「今まで食った林檎の中で、一番うまいっ」
とびきりの笑顔をみせる魁童。
私は、ふた切れ目の林檎をつまんだが、思わず彼の顔と林檎とを見比べた。
そんなにおいしいのか………
――パク――
「あーっ!!おいこらっっ!!!自分で食うなよっ」
魁童の絶叫が響く。
「だって……どんなにおいしいのかなって気になっちゃって……」
観客席に、再び笑いが起こる。
まずまずの成績を残して(と勝手に解釈して)林檎の皮剥きは終了。
「お次は、男子による"彼女の似顔絵"です。実物を見ず、記憶だけを頼りに描いていただきます。その間に女子の皆さんには、最終審査の水着に着替えていただきます」
「「水着!?」」
魁童と私は、同時に声をあげて顔を見合わせてしまった。
他のチームは、別段慌てる様子はない。
ということは、水着審査は毎年恒例で、皆さんちゃんとリサーチ&了承済みなんだな。
「水泳の授業だと思えば、何とか……」
私は、呆然とする魁童と自分を鼓舞するように呟いた。
だが、追い打ちをかけるがごとく、司会者の言葉が続く。
「例年どおり、水着にはいろいろな形のものがあり、誰にどれが当たるかはわかりません。中には、超セクシーなビキニも混ざっておりますので、皆様どうぞお楽しみに!」
観客席がどよめく。
「魁童……ビキニなんて当たっちゃったら、どうしよう……っと……え?ちょっと……」
魁童は私の手をとると、客席に向かってスタスタ歩き出した。
そして、ステージの端まで来ると手を離し、体育館のフロアに飛び降りた。
そのまま、司会者のマイクを奪う。
「わりい、俺、おりるわ」
客席がざわめく。
「今さら何言ってんだよー」という声も聞こえる。
「24HRのみんなには悪いと思うけどさ…好きな女の水着姿を晒し者にするなんて……俺にはできねえ」
マイクを司会者に押し付けた魁童は、ステージの先端に立ち尽くしている私のそばに歩み寄ると、
「ほら」
と手を差しのべてくれた。
「あ……うん……」
彼の手をとろうとしゃがみこんだ時、司会者の声が聞こえた。
「えー、皆さんお静かに願います。ただいま、24HRチームから棄権する、という意志表明がありました。ですが……司会者個人の意見としましては、ここまで盛り上げてくれたチームのリタイアは、もったいない気がします」
一旦静まった客席が、再びざわめき出す。
「出来ましたら、24HRチームには、水着を選べる権利を与えて、参加続行をお願いしたいのですが……皆様、ご賛同いただけますでしょうか」
会場から、割れるような拍手が起こる。
「魁童……」
「はるかが大丈夫って言うなら、続けるけど……無理すんなよ?」
「うん!わかった。心配してくれてありがとうね」
拍手の波に送られて、私を含む女子一同は更衣室に向かった。
体育館の舞台裏にしつらえられた更衣室で私が選んだのは、空色に白い小花模様のワンピースで、下はスカートになっているものだった。
着替え終わると、みんなでステージに戻った。
「「おお~~っ!!!」」
という歓声に迎えられる。
男子校だけあって、男子が多いんだろうな……とぼんやり考えつつ、魁童の前まで進む。
「ごめん……みんなすごくグラマーなのに、私はこんなに貧弱で……」
そう、皆さん本当に発育がよろしくて、ボンキュッボン!のグラマラスなボディの持ち主で。
なんだか、恥ずかしいのを通り越して申し訳なくなってしまい、私は胸に手を当てて魁童に謝った。
頬を赤く染めた魁童は、目のやり場に困った様子だったが、私の手につられてその視線は胸元にたどり着く。
浅いとはいえ、一応それらしくできた谷間で彼の目が止まった……と思ったその途端――
鼻血を噴いた。
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