卒業
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
竜尊編
「やあ、瑠璃。とうとう卒業だな……」
卒業式を終え、すでに人影のない昇降口の物陰で声をかけてきたのは……
「竜尊……先生!」
「もう、制服姿の瑠璃を拝めなくなると思うと、ちょっと寂しいな」
(この変態っ!!)
その言葉は、我慢して飲み込んだ。
竜尊先生との出会いは、入学式の数日前の電車の中。
痴漢にあって半泣きで動けなかった私を助けてくれたのが彼だった。
そして、入学式で運命の(?)再会……。
それ以来、何かと私にちょっかいを出してくる。
ずいぶんおモテになるのだから、相手には不自由していないでしょうに、なぜか私に構いたいらしい。
「今日の夜は空いてるのか?」
「クラスの有志で、カラオケです」
「ふーん……途中でさらいに行ってやろうか?」
「一応、あなたは先生なんですよ?不謹慎ですっ」
竜尊先生は口元に微笑みをたたえる。
「もう、教師と生徒じゃないよな」
(ああ、そうか。私、卒業しちゃったんだなあ……)
目頭がじんわりと熱くなり、何も言えない私の頭を、歩み寄ってきた彼が優しくなでる。
「そろそろ俺のことを、一人の男として見てもらいたいんだがな」
「え……」
確かに私は……
今まで『先生だから』と、自分の中で常にブレーキをかけてきた。
だけど、彼に会えた日は嬉しくて。
からかわれたり話しかけてもらったりした日は、胸がキュって暖かくなった。
これって……
卒業証書の入ったカバンをしっかりと抱え、私はまっすぐ彼に向き直った。
自分の気持ちに嘘をついて、後悔するのは嫌だから――
「私……これからも、先生のこと見ていたいです」
竜尊先生は一瞬驚いた顔をしたが、ふっと笑うと私の頬にそっと触れた。
「見ているだけでいいのか?」
顔がカァーっと熱くなり、思わず下を向く。
「瑠璃、俺はずっと、おまえのこと好きだった……立場上我慢してきたけどな」
「…………」
「もう、気持ちを抑えなくたっていいよな?俺は、瑠璃に傍にいてほしいんだ」
そんな唐突な……
しかも、まだ学校の敷地内だし。
そう思いながらも、嬉しさで私の鼓動は速くなる。
「今晩は、カラオケ途中で抜けて、俺に付き合え」
私は小さく頷いた。
「本当は、制服のままの方がそそられるんだけどな」
「っ!?……やっぱり、変態?」
聞こえないようにボソッとつぶやいたのに
「なんか言ったか?」
軽く頬をつねられた。
お互い、ちょっと離れて見つめ合ってきた三年間。
今日からは、手を伸ばせば触れられる距離にいられるのかな……。
私はとびきりの笑顔で、竜尊先生に手をふり、通い慣れた校舎を後にした。
*
6/6ページ