クリスマスの内緒話
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―玖々廼馳とX'mas―
★Happy Puppy Present
最近、学校帰りに時々立ち寄るペットショップ。
お気に入りの子――真っ白なロングコートチワワに会うためだ。
「お姉ちゃん!」
「あ、玖々廼馳、こんにちは」
ちょうど私がここに通い始めた頃、玖々廼馳も、この子に会いに来るようになった。
彼は、このチワワを気に入ってしまったのだが、犬が苦手な家族(竜尊とかいう……)に、飼うことを許してもらえないんだそうだ。
『飼えなくてもせめて顔を見に来よう』
同じ思いで、ここにやって来る私達。
何度か会ううち、お互いに"犬仲間"のような気持ちが芽生えた。
妙な連帯感というか。
私達は、勝手にその子を『ミルク』という名前で呼んでいた。
ミルクのように真っ白だから。
ミルクちゃんを媒介として、まるきり面識のなかった私達は友達になり、ショップの店長である月讀さんとも顔なじみになった。
もうすぐ冬休み。
町中どこのお店も、ディスプレイや店内に流れる音楽は、クリスマス一色だ。
今日も放課後は、学校からペットショップに直行。
店の入り口で落ち合った玖々廼馳と、二人でミルクちゃんのケージに向かう。
……あれ?
あれれ??
「……お姉ちゃん……」
「玖々廼馳……」
私達は泣きそうな顔を見合わせた。
「ミルク……いなくなっちゃいましたね……」
「うん……」
呆然とたたずむ私達のそばに、月讀さんが歩み寄ってきた。
「あなた方が会いに来てくれていたチワワですが」
私達は、食い入るように月讀さんを見つめた。
「新しいおうちで暮らすことになりましたよ」
「誰かが買っちゃった……ってことですよね」
玖々廼馳が声を絞り出す。
「ええ。クリスマスに、新しい家族として迎え入れたい、というお宅に」
犬を飼いたいという人が訪れても、命を預かるのだという覚悟と、きちんと育てられる環境になければ、月讀さんは犬を売らない。
そんな彼が納得して譲ったのだから、きっと、ミルクちゃんは幸せになるだろう。
心から望んでくれる家族の元で、たくさんの愛情を注いでもらって―――
喜んであげなくちゃ。
頭では、ちゃんとわかってる。
わかってるんだけど―――
ここで、あの愛らしい表情や仕草を見ることは、もうできないんだよね……
玖々廼馳と私は、言葉もなく、空になったケージを見つめていた。
ションボリとしている私達を見かねたのか、月讀さんがあえて明るい声で言った。
「そうそう、あなた方に差し上げたいものがあります」
彼は、レジのカウンターから小さなかごを持ってきた。
その中から取り出したのは、犬のマスコットのついたキーホルダーだった。
「あ!ミルクちゃん」
「ほんとです……白いチワワです……」
「クリスマスのキャンペーンで、いろいろな犬種のキーホルダーをお配りしていたのです。ちょうどこの二つが残っていました。単なる偶然とは思えませんね」
私達の手にひとつずつキーホルダーを手渡しながら、月讀さんはにっこりと微笑んだ。
私は、手の中のチワワをそっと撫でた。
「ありがとうございます……きっと、ミルクちゃんからのクリスマスプレゼントですね」
玖々廼馳も、顔をほころばせた。
「月讀さん……ありがとうございます……お姉ちゃんとおそろいなのも、すごく嬉しいです……」
「喜んでいただけて何よりです」
自動ドアが開く音がした。
「それでは、お二人ともよいクリスマスを」
そう言って月讀さんは、入ってきたお客さんに「いらっしゃいませ」と声をかけながら、仕事に戻っていった。
お店を出て、玖々廼馳と並んで歩く。
「私、大人になったら、ミルクちゃんみたいな犬を飼いたいな」
「僕も……飼いたいです……できれば、お姉ちゃんと一緒に……」
「え……玖々廼馳、それって……」
思わず立ち止まり、二人で顔を見合わせる。
「本当にそうなったら素敵だね」
「はい……叶うといいです……」
私達はちょっぴり赤く染まった頬で互いに微笑み合うと、再び歩き出した。
冷たい風が吹く寒空の下でも、玖々廼馳とつないだ手は、とても温かかった。
*
★Happy Puppy Present
最近、学校帰りに時々立ち寄るペットショップ。
お気に入りの子――真っ白なロングコートチワワに会うためだ。
「お姉ちゃん!」
「あ、玖々廼馳、こんにちは」
ちょうど私がここに通い始めた頃、玖々廼馳も、この子に会いに来るようになった。
彼は、このチワワを気に入ってしまったのだが、犬が苦手な家族(竜尊とかいう……)に、飼うことを許してもらえないんだそうだ。
『飼えなくてもせめて顔を見に来よう』
同じ思いで、ここにやって来る私達。
何度か会ううち、お互いに"犬仲間"のような気持ちが芽生えた。
妙な連帯感というか。
私達は、勝手にその子を『ミルク』という名前で呼んでいた。
ミルクのように真っ白だから。
ミルクちゃんを媒介として、まるきり面識のなかった私達は友達になり、ショップの店長である月讀さんとも顔なじみになった。
もうすぐ冬休み。
町中どこのお店も、ディスプレイや店内に流れる音楽は、クリスマス一色だ。
今日も放課後は、学校からペットショップに直行。
店の入り口で落ち合った玖々廼馳と、二人でミルクちゃんのケージに向かう。
……あれ?
あれれ??
「……お姉ちゃん……」
「玖々廼馳……」
私達は泣きそうな顔を見合わせた。
「ミルク……いなくなっちゃいましたね……」
「うん……」
呆然とたたずむ私達のそばに、月讀さんが歩み寄ってきた。
「あなた方が会いに来てくれていたチワワですが」
私達は、食い入るように月讀さんを見つめた。
「新しいおうちで暮らすことになりましたよ」
「誰かが買っちゃった……ってことですよね」
玖々廼馳が声を絞り出す。
「ええ。クリスマスに、新しい家族として迎え入れたい、というお宅に」
犬を飼いたいという人が訪れても、命を預かるのだという覚悟と、きちんと育てられる環境になければ、月讀さんは犬を売らない。
そんな彼が納得して譲ったのだから、きっと、ミルクちゃんは幸せになるだろう。
心から望んでくれる家族の元で、たくさんの愛情を注いでもらって―――
喜んであげなくちゃ。
頭では、ちゃんとわかってる。
わかってるんだけど―――
ここで、あの愛らしい表情や仕草を見ることは、もうできないんだよね……
玖々廼馳と私は、言葉もなく、空になったケージを見つめていた。
ションボリとしている私達を見かねたのか、月讀さんがあえて明るい声で言った。
「そうそう、あなた方に差し上げたいものがあります」
彼は、レジのカウンターから小さなかごを持ってきた。
その中から取り出したのは、犬のマスコットのついたキーホルダーだった。
「あ!ミルクちゃん」
「ほんとです……白いチワワです……」
「クリスマスのキャンペーンで、いろいろな犬種のキーホルダーをお配りしていたのです。ちょうどこの二つが残っていました。単なる偶然とは思えませんね」
私達の手にひとつずつキーホルダーを手渡しながら、月讀さんはにっこりと微笑んだ。
私は、手の中のチワワをそっと撫でた。
「ありがとうございます……きっと、ミルクちゃんからのクリスマスプレゼントですね」
玖々廼馳も、顔をほころばせた。
「月讀さん……ありがとうございます……お姉ちゃんとおそろいなのも、すごく嬉しいです……」
「喜んでいただけて何よりです」
自動ドアが開く音がした。
「それでは、お二人ともよいクリスマスを」
そう言って月讀さんは、入ってきたお客さんに「いらっしゃいませ」と声をかけながら、仕事に戻っていった。
お店を出て、玖々廼馳と並んで歩く。
「私、大人になったら、ミルクちゃんみたいな犬を飼いたいな」
「僕も……飼いたいです……できれば、お姉ちゃんと一緒に……」
「え……玖々廼馳、それって……」
思わず立ち止まり、二人で顔を見合わせる。
「本当にそうなったら素敵だね」
「はい……叶うといいです……」
私達はちょっぴり赤く染まった頬で互いに微笑み合うと、再び歩き出した。
冷たい風が吹く寒空の下でも、玖々廼馳とつないだ手は、とても温かかった。
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