クリスマスの内緒話
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―無月とX'mas―
★たまにはそんなキミも
毎年恒例、会社の忘年会。
いつもクリスマスの時期だから、どちらかと言うとクリスマス会ってノリかな。
――お酒を飲むと、無月は別人になる――
そんな噂は、以前誰かから聞いたことがあった。
いつも穏やかで静かな笑みを絶やさない無月が、一体どんなふうに変わってしまうのか、私は興味があった。
そして、それは会社のみんなも同じらしかった。
会が始まってしばらくたつと座も和み、自分の席から離れて談笑する姿が増えてきた。
『酔った無月を見てみたい』面々が、誰彼となくお酌をしに行くため、無月のグラスは空になることがない。
皆さん話の真偽を確かめたくて、わざわざ飲ませるのだから、無月本人としては断れるはずもない。
すすめられるままにビールをどんどん空け、そのうち誰かが日本酒まで持って来た。
お酒がすすむにつれ、だんだん陽気になってきた無月。
上司の背中をバシバシとたたきながら大笑いしたり、後輩に延々と人生論を語ったり。
いつもとは、明らかに様子が違う。
彼の変貌ぶりを実際にその目で確かめた同僚達は、もうそれで満足したようだった。
会もお開きとなり、大部分の人はそのまま二次会に移動する流れになった。
同じ部署の主任が、私のそばに来て耳打ちをする。
「瑠璃ちゃん、無月君頼むわね」
「ええっ、そんなあっ!?」
この酔っ払いを、一体どうしろと!?
「あれ?あなた達、付き合ってるんだよね?」
「えぇっ!?付き合ってませんよ、違いま……あ、主任~!?「ごめんね~、部長が呼んでる」」
先に歩いて行ってしまった部長の「おーい主任~!」と叫ぶ声に、彼女はみんなを追いかけて行ってしまった。
あとに残されたのは、途方に暮れる私と、飲むだけ飲んでご機嫌な無月。
私は、あきらめモードでため息をつくと、彼に声をかけた。
「無月、さあ、帰るよ」
「何言ってるんだ、まだまだ飲み足りないぞ」
「はいはい、それじゃあ、続きは私の部屋で飲みましょうね」
みんなには置いていかれてしまったし、この無月と二人で別のお店に入るのは避けたい。
面倒なことになるのは、想像に難くない。
それなら、まだ自力で歩いてくれるうちに、どこかに落ち着くのがベストだろう。
幸い私のアパートは、駅から歩いてすぐの所にある。
千鳥足の無月を励ましなだめつつ、ようやく私達は部屋の入り口にたどり着いた。
「ほら、靴脱いで」
よろける彼を、何とか我が家に上がらせた。
ここまで来れば、もう安心。
万が一このまま寝てしまわれても、一応室内だからね。
大きく息をついたら、壁に手をついて立っている無月が、こちらに向き直った。
「瑠璃……」
「ん?……っ!?ちょ……ちょっと、無月?」
両肩をつかまれ、彼と向き合う格好で距離が縮まる。
玄関の電灯に照らされながら、無月の顔が近づいてくる。
私は思わず身をすくめて目をつぶった。
無月の体重がかかってくる。
支えきれずに、私の背中は壁に押しつけられた。
…………………
………………………
恐る恐る目を開いてみたら……
「無月!?無月ってば」
私に抱きついた形で、無月は微かな寝息をたてていた。
ため息と苦笑いを同時にもらしながら、私は考えた。
まあ……ベッドまで引きずっていくのには、この体勢の方が好都合かもね。
翌朝――
なぜここにいるのかわからないといった様子の無月に、昨夜の出来事を説明すると、彼は沈痛な面持ちで言った。
「我は……そなたに、……その……何か……失礼なことは、しなかったか?」
「え……!?……あはは、大丈夫、なんにも」
無月のほっとしたような表情に、つい私は、彼の困った顔が見たくなった。
「ちょっとくらい、何かしてくれてもよかったんだけどな……」
「瑠璃……」
案の定、彼はちょっぴり困ったように顔を下に向けた。
「それは……やはり、飲んでいない時に、きちんと手順を踏んで……」
真面目な顔で弁解する無月。
私は、思わず吹き出してしまった。
「あはは、ごめんごめん……さ、朝ごはん食べよう?」
真面目な無月も、人格の変わった無月も、全部無月自身。
これからも君の隣にいて、いろんな顔を見ていたいな……
申し訳なさそうに食卓につく彼に向かって、私は心の中でつぶやいた。
*
★たまにはそんなキミも
毎年恒例、会社の忘年会。
いつもクリスマスの時期だから、どちらかと言うとクリスマス会ってノリかな。
――お酒を飲むと、無月は別人になる――
そんな噂は、以前誰かから聞いたことがあった。
いつも穏やかで静かな笑みを絶やさない無月が、一体どんなふうに変わってしまうのか、私は興味があった。
そして、それは会社のみんなも同じらしかった。
会が始まってしばらくたつと座も和み、自分の席から離れて談笑する姿が増えてきた。
『酔った無月を見てみたい』面々が、誰彼となくお酌をしに行くため、無月のグラスは空になることがない。
皆さん話の真偽を確かめたくて、わざわざ飲ませるのだから、無月本人としては断れるはずもない。
すすめられるままにビールをどんどん空け、そのうち誰かが日本酒まで持って来た。
お酒がすすむにつれ、だんだん陽気になってきた無月。
上司の背中をバシバシとたたきながら大笑いしたり、後輩に延々と人生論を語ったり。
いつもとは、明らかに様子が違う。
彼の変貌ぶりを実際にその目で確かめた同僚達は、もうそれで満足したようだった。
会もお開きとなり、大部分の人はそのまま二次会に移動する流れになった。
同じ部署の主任が、私のそばに来て耳打ちをする。
「瑠璃ちゃん、無月君頼むわね」
「ええっ、そんなあっ!?」
この酔っ払いを、一体どうしろと!?
「あれ?あなた達、付き合ってるんだよね?」
「えぇっ!?付き合ってませんよ、違いま……あ、主任~!?「ごめんね~、部長が呼んでる」」
先に歩いて行ってしまった部長の「おーい主任~!」と叫ぶ声に、彼女はみんなを追いかけて行ってしまった。
あとに残されたのは、途方に暮れる私と、飲むだけ飲んでご機嫌な無月。
私は、あきらめモードでため息をつくと、彼に声をかけた。
「無月、さあ、帰るよ」
「何言ってるんだ、まだまだ飲み足りないぞ」
「はいはい、それじゃあ、続きは私の部屋で飲みましょうね」
みんなには置いていかれてしまったし、この無月と二人で別のお店に入るのは避けたい。
面倒なことになるのは、想像に難くない。
それなら、まだ自力で歩いてくれるうちに、どこかに落ち着くのがベストだろう。
幸い私のアパートは、駅から歩いてすぐの所にある。
千鳥足の無月を励ましなだめつつ、ようやく私達は部屋の入り口にたどり着いた。
「ほら、靴脱いで」
よろける彼を、何とか我が家に上がらせた。
ここまで来れば、もう安心。
万が一このまま寝てしまわれても、一応室内だからね。
大きく息をついたら、壁に手をついて立っている無月が、こちらに向き直った。
「瑠璃……」
「ん?……っ!?ちょ……ちょっと、無月?」
両肩をつかまれ、彼と向き合う格好で距離が縮まる。
玄関の電灯に照らされながら、無月の顔が近づいてくる。
私は思わず身をすくめて目をつぶった。
無月の体重がかかってくる。
支えきれずに、私の背中は壁に押しつけられた。
…………………
………………………
恐る恐る目を開いてみたら……
「無月!?無月ってば」
私に抱きついた形で、無月は微かな寝息をたてていた。
ため息と苦笑いを同時にもらしながら、私は考えた。
まあ……ベッドまで引きずっていくのには、この体勢の方が好都合かもね。
翌朝――
なぜここにいるのかわからないといった様子の無月に、昨夜の出来事を説明すると、彼は沈痛な面持ちで言った。
「我は……そなたに、……その……何か……失礼なことは、しなかったか?」
「え……!?……あはは、大丈夫、なんにも」
無月のほっとしたような表情に、つい私は、彼の困った顔が見たくなった。
「ちょっとくらい、何かしてくれてもよかったんだけどな……」
「瑠璃……」
案の定、彼はちょっぴり困ったように顔を下に向けた。
「それは……やはり、飲んでいない時に、きちんと手順を踏んで……」
真面目な顔で弁解する無月。
私は、思わず吹き出してしまった。
「あはは、ごめんごめん……さ、朝ごはん食べよう?」
真面目な無月も、人格の変わった無月も、全部無月自身。
これからも君の隣にいて、いろんな顔を見ていたいな……
申し訳なさそうに食卓につく彼に向かって、私は心の中でつぶやいた。
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