神のみぞ知る
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
秋が深まり、霜月も半ば。
祢々斬と瑠璃が並んで、賑やかな町中を歩いていた。
神社に続く通りには、着飾った家族連れの姿が、時折見受けられる。
「そっか、七五三の時期だもんね」
よそ行きの着物を身につけ、きれいにお化粧した女の子が、お母さんと手をつないで向こうから歩いてくる。
後ろには、まだ小さな男の子を抱っこしたお父さんが続く。
すれ違いざま、父親が抱いている男の子の足から、草履の片方が落ちた。
「あ、草履……」
駆け寄った瑠璃が、拾った小さな草履を、若いお父さんに手渡す。
「おっと……こりゃあ、すみませんねぇ」
笑顔で受け取った父親は、抱えている子供に「ほら、お姉ちゃんが草履拾ってくれたぜ、ちゃんとありがとうしな」と促し、幼い男の子がペコリとお辞儀の仕草をする。
前を歩いていた母親と娘が気づいて戻って来ると、家族そろって瑠璃に頭を下げ、神社に向かって再び歩き出した。
はにかんだような、満ち足りた笑顔で彼らを見送る瑠璃に、やや憮然とした表情をつくる祢々斬。
「……今の男、竜尊に似てたな」
「え、そうだった?」
瑠璃は、頬を桜色に染めると、それを隠すように両手で覆った。
「……行くぞ」
なぜか急に不機嫌になった祢々斬に、瑠璃が首をかしげる。
「祢々斬ってば、どうしたの?」
「何でもない」
「何でもないことないでしょう?」
語気を強めた瑠璃に、目を合わせないまま祢々斬が言う。
「今、なにを考えてた?」
「今?草履を拾ってから、祢々斬が機嫌悪くなるまでは、幸せな気持ちだったかな」
「竜尊のことじゃないのか?」
なんで竜尊がでてくるの……とつぶやきながら、瑠璃は、家族連れが去って行った方角に目をやった。
「いつか祢々斬と、ちゃんとした夫婦になって、子供が生まれて……そしたら、私たちもきっと、あんなふうに、家族で町を歩くんだろうなあって……そう思ったの」
自分の嫉妬が的外れであったことにようやく気付いた祢々斬は、立ち止まって申し訳なさそうに口を開いた。
「……悪い……ことあるごとに竜尊がちょっかい出してきやがるからな、つい、心配になっちまうんだよ」
「心配?なにが?」
「そりゃ……奴に似た男を嬉しそうに見送ってるおまえを見たら……心配になるさ。いつか、あいつの所に行っちまうんじゃないかって……」
祢々斬の言葉に目を丸くしてから、その目を次第に細めて瑠璃がポツリと言った。
「そんなに信用ないんだ、私」
「瑠璃?」
「私ひとりで将来のこととか夢見て浮かれてて……けど祢々斬は、私のこと、そんなふうに思ってたんだ?」
そうなんだ、ふーん……とつぶやきながら、瑠璃が祢々斬に背を向ける。
「お、おい……ちょっと待てよ」
慌てて彼女の側に駆け寄り、後ろから腕をつかむ祢々斬。
顔だけを振り向かせちらっと祢々斬を見てから、瑠璃はおもむろに口を開いた。
「……私を信じてくれる?」
「ああ、悪かったって」
「いつでも、そばにいてくれる?」
「当たり前だ、おまえこそ、他のやつの所になんか、行くんじゃねえぞ」
「あ、ほら!信じてない「違うっ!」」
祢々斬は、背中から瑠璃を抱きしめた。
「ちょっと祢々斬……こんな人前で……」
「おまえが減らず口をたたくからだ」
「なっ……」
後ろから瑠璃の肩にあごを乗せた祢々斬が、彼女の耳元でささやく。
「そろそろ帰るか」
「えっもう?」
「祝言なんぞあげてなくたって、俺らはちゃんとした夫婦だ。子作りするんだろ?」
「祢々斬ってば、こんな所で何言って……」
悪戯っぽい瞳で顔を覗き込んでくる祢々斬から目をそらし、うつむいてしまった瑠璃だったが、何かを思いついたように小さく声をあげた。
「あのね」
「どうした?」
さっきよりも頬を赤くした瑠璃が、恥ずかしそうにつぶやく。
「もし赤ちゃんが出来たって言ったら、月讀さん……私たちに結婚式挙げさせてくれるかな」
「かもしれんな。……じゃあ、今日はそのつもりでいいんだな?」
「ん……なんだか、重大決心してるみたいな気がするよ……」
――孕んじまえば、律儀なこいつのことだ。
俺のもとから離れて竜尊になびくなんて可能性は、万にひとつも無くなるだろうな――
そんな考えがふと頭をよぎったのを気取られないよう、祢々斬は、瑠璃の横に並ぶと彼女の手をとった。
めでたく子を宿し、月讀に結婚を祝ってもらうことが出来るのか否か……
それは、神のみぞ知る。
*
祢々斬と瑠璃が並んで、賑やかな町中を歩いていた。
神社に続く通りには、着飾った家族連れの姿が、時折見受けられる。
「そっか、七五三の時期だもんね」
よそ行きの着物を身につけ、きれいにお化粧した女の子が、お母さんと手をつないで向こうから歩いてくる。
後ろには、まだ小さな男の子を抱っこしたお父さんが続く。
すれ違いざま、父親が抱いている男の子の足から、草履の片方が落ちた。
「あ、草履……」
駆け寄った瑠璃が、拾った小さな草履を、若いお父さんに手渡す。
「おっと……こりゃあ、すみませんねぇ」
笑顔で受け取った父親は、抱えている子供に「ほら、お姉ちゃんが草履拾ってくれたぜ、ちゃんとありがとうしな」と促し、幼い男の子がペコリとお辞儀の仕草をする。
前を歩いていた母親と娘が気づいて戻って来ると、家族そろって瑠璃に頭を下げ、神社に向かって再び歩き出した。
はにかんだような、満ち足りた笑顔で彼らを見送る瑠璃に、やや憮然とした表情をつくる祢々斬。
「……今の男、竜尊に似てたな」
「え、そうだった?」
瑠璃は、頬を桜色に染めると、それを隠すように両手で覆った。
「……行くぞ」
なぜか急に不機嫌になった祢々斬に、瑠璃が首をかしげる。
「祢々斬ってば、どうしたの?」
「何でもない」
「何でもないことないでしょう?」
語気を強めた瑠璃に、目を合わせないまま祢々斬が言う。
「今、なにを考えてた?」
「今?草履を拾ってから、祢々斬が機嫌悪くなるまでは、幸せな気持ちだったかな」
「竜尊のことじゃないのか?」
なんで竜尊がでてくるの……とつぶやきながら、瑠璃は、家族連れが去って行った方角に目をやった。
「いつか祢々斬と、ちゃんとした夫婦になって、子供が生まれて……そしたら、私たちもきっと、あんなふうに、家族で町を歩くんだろうなあって……そう思ったの」
自分の嫉妬が的外れであったことにようやく気付いた祢々斬は、立ち止まって申し訳なさそうに口を開いた。
「……悪い……ことあるごとに竜尊がちょっかい出してきやがるからな、つい、心配になっちまうんだよ」
「心配?なにが?」
「そりゃ……奴に似た男を嬉しそうに見送ってるおまえを見たら……心配になるさ。いつか、あいつの所に行っちまうんじゃないかって……」
祢々斬の言葉に目を丸くしてから、その目を次第に細めて瑠璃がポツリと言った。
「そんなに信用ないんだ、私」
「瑠璃?」
「私ひとりで将来のこととか夢見て浮かれてて……けど祢々斬は、私のこと、そんなふうに思ってたんだ?」
そうなんだ、ふーん……とつぶやきながら、瑠璃が祢々斬に背を向ける。
「お、おい……ちょっと待てよ」
慌てて彼女の側に駆け寄り、後ろから腕をつかむ祢々斬。
顔だけを振り向かせちらっと祢々斬を見てから、瑠璃はおもむろに口を開いた。
「……私を信じてくれる?」
「ああ、悪かったって」
「いつでも、そばにいてくれる?」
「当たり前だ、おまえこそ、他のやつの所になんか、行くんじゃねえぞ」
「あ、ほら!信じてない「違うっ!」」
祢々斬は、背中から瑠璃を抱きしめた。
「ちょっと祢々斬……こんな人前で……」
「おまえが減らず口をたたくからだ」
「なっ……」
後ろから瑠璃の肩にあごを乗せた祢々斬が、彼女の耳元でささやく。
「そろそろ帰るか」
「えっもう?」
「祝言なんぞあげてなくたって、俺らはちゃんとした夫婦だ。子作りするんだろ?」
「祢々斬ってば、こんな所で何言って……」
悪戯っぽい瞳で顔を覗き込んでくる祢々斬から目をそらし、うつむいてしまった瑠璃だったが、何かを思いついたように小さく声をあげた。
「あのね」
「どうした?」
さっきよりも頬を赤くした瑠璃が、恥ずかしそうにつぶやく。
「もし赤ちゃんが出来たって言ったら、月讀さん……私たちに結婚式挙げさせてくれるかな」
「かもしれんな。……じゃあ、今日はそのつもりでいいんだな?」
「ん……なんだか、重大決心してるみたいな気がするよ……」
――孕んじまえば、律儀なこいつのことだ。
俺のもとから離れて竜尊になびくなんて可能性は、万にひとつも無くなるだろうな――
そんな考えがふと頭をよぎったのを気取られないよう、祢々斬は、瑠璃の横に並ぶと彼女の手をとった。
めでたく子を宿し、月讀に結婚を祝ってもらうことが出来るのか否か……
それは、神のみぞ知る。
*
1/1ページ