くりすますの内緒話

魁童編 ★夢見る贈り物

ここ常盤國では、年末の慌ただしい一日に過ぎないけれど……
私の世界なら、今日は大いに盛り上がっているはず。
そう、今日はクリスマス!

魁童にクリスマスの説明をしたら、由来とか街のイルミネーションの話とかよりも、七面鳥の丸焼きとか大きなケーキとか、食べ物にばかり興味を持っていたけれど。

あ、あと……
サンタクロースが配るプレゼントの話にも、目を輝かせてたな。

「すげえな!その、さんたくろーすって奴が、おまえの世界の人間全員に贈り物を配るのか!?」

「ん~……世界中にクリスマスが広まって、サンタさん一人では一晩にプレゼント配りきれないからねえ……」

身を乗り出して聞いている魁童は、サンタさんを信じる子供のようだ。

ふふ、なんだか可愛い…

鬼である魁童相手に、そんなふうに感じる自分に内心苦笑しつつ、私は続ける。

「私がいた国では、寝てる間に、親がサンタさんの代理で、枕元にプレゼント置いといてくれるのが一般的だったかな」

「おまえにとっては、親がさんたくろーすだった、ってことか」

「ん~まあ、直接的には、そういうことになるのかな?」

「……この世界にも、さんたくろーすがいればいいのにな」

真剣な眼差しでため息をつく魁童に、私の顔はついほころんでしまう。

「ねえねえ、魁童」

魁童が、首をかしげながら私を見る。

「この世界でクリスマスを知ってるのは魁童だけだから、魁童のサンタさんは私だよ」

魁童の顔が、パッと明るくなる。
次の瞬間、いいことを思いついた!というような、得意げな表情で私を見た。

「んじゃ、はるかのさんたは俺だな」

「嬉しいな、魁童が私にプレゼントくれるの?」

途端、魁童は腕組みをして考えこんだ。

「女への贈り物か……しかも、異界の……。女ってもんは、蛙とかトカゲとかをもらったって喜ばねえんだろ?」

私は、前のめりにこけそうになった。
男の子である魁童の認識としては、虫や爬虫類は、見つけて捕まえたら嬉しくなる対象なのだろう。

う~ん……
さすがに、それは勘弁してほしいかな……

「相手のほしいものを考えるのって、難しいもんだな」

神妙な顔で、魁童がつぶやく。

「確かにね……私も、男の子が喜んでくれるものって、正直想像がつかないんだ」

プレゼント……
別に、物じゃなくたっていいんだよね。

私は、思いついた妥協案を口にした。

「じゃあさ、相手にしてほしいことを言うってのはどうかな?」

「してほしいこと!?」

魁童の顔がだんだん赤くなる。

「ちょ……ちょっと……魁童ってば、何考えたの?」

「う……うるせえ!なんだっていいだろ!?」

顔をプイッとそむけながら、魁童は目だけをこちらに向ける。

「そ……そういうおまえは、俺に何をしてほしいんだよ?」

「ん~、一応決めたけど、魁童が先に言ってよ」

「…………」

ためらうように、無言のまま目を合わさない魁童。

だが、意を決したように私をまっすぐ見ると、両肩を掴んだ。

顔が近づいてきて……

重なった唇は、数秒で離された。

そのままそっと抱き寄せられ、お日様を思わせる魁童の匂いに顔をうずめる。

「お……おまえから俺への贈り物は、今のだ」

私は、思わず顔を上げた。

「違うよ、今のは魁童から私への贈り物でしょ?」

不思議そうに私を見つめる魁童。

私は、彼の赤い頬を両手で包むと、そっと口付けた。
さっきよりも長く。


口付けを終えて、目が合う。
お互い気恥ずかしくて、下を向いてしまう。

「あ~あ、さっきので、私がもらう分使っちゃった」

私のお願い事とは違ったけれど、魁童がキスをくれたから……それが彼から私への贈り物。

「そういや……おまえは、なんて言うつもりだったんだ?」

魁童が私に尋ねる。

「それはね……初詣に一緒に行こうって言いたかったの」

「なんだ、そんなことか」

私は、ギュッと抱きしめられた。

「それは、おまえに頼まれなくたって、しっかり俺様の予定に入ってたぞ」

「……じゃあ、もっと難しいことにすればよかったかな」

「おまえへの贈り物は、さ……さっきの……その……接吻も含めた俺自身でいいだろ?」

魁童の背中に回した腕に、私もギュッと力をこめた。

「ん~、じゃあ、そういうことにしといてあげる」



大好きな相手へのプレゼントは、自分自身。
お互いにね。

クリスマスもお正月も、春夏秋冬ずっとずっと……

傍にいてね、魁童。

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