こんな雨の日
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季節は梅雨。
降りしきる雨。
祢々斬は雨が苦手なようで、ここのところ彼の姿を見かけない。
何となく気をもみながらも、瑠璃は屋敷の中の雑事に追われ、紅玉の丘を訪れるタイミングを見つけられずにいた。
そんな状態が数日続いた後、ようやく外出できたある日のこと―――
「祢々斬」
岩が庇のように突き出た下で雨宿りをしている祢々斬を見つけ、瑠璃は声を弾ませた。
ぬかるみに足をとられないよう、慎重に歩み寄る。
岩壁に背中を預け、気怠そうに宙を見ていた祢々斬だったが、突然の来訪者の足元のおぼつかなさに、思わず立ち上がる。
ようやく雨をしのげる場所までたどり着いた瑠璃は、傘をたたむと再び歩き出した――
が、最後の最後で足を滑らせた。
「っっ!!」
しりもちを覚悟した瑠璃の腕を、祢々斬がつかむ。
そしてそのまま、彼女を抱き寄せて自分の腕の中に収めた。
「ったく、おまえは……。こんな雨の日に……風邪でもひいたら、どうするつもりだ!?」
「大丈夫だよ」
瑠璃は、祢々斬を見上げて、にっこりと微笑む。
「その根拠のない自信は、一体どこからくるんだ?」
「ふふ、それはね……ここから」
嬉しそうに言いながら、瑠璃は祢々斬の頬を両手で包む。
「祢々斬がいてくれれば、風邪なんかひかない」
いつになく自分に触れ、甘えてくる瑠璃をそっと撫でながら、祢々斬は彼女に問いかける。
「寂しい思い……させたか?」
「うん……」
瑠璃は、祢々斬の衿を両手でギュッとつかむと、彼の胸に頬を寄せる。
「祢々斬に会いたくて、会いたくて……がまんできなくなって……来ちゃった」
二人で肩を寄せて座り、雨音に耳をすませる。
「私、雨の音を聞くのが好きなんだ」
独り言のように、瑠璃がつぶやく。
「物好きだな」
「いいの、好きなんだから」
瑠璃は、祢々斬の肩に頭を預けると、目を閉じる。
「今、この世界には私達だけ……二人きりなんだって……そんな気持ちになれるから」
祢々斬は、ふっと笑うと瑠璃の肩を抱き、自分の方にぐいと引き寄せた。
「ああ、確かにそうだな。過ぎてく時間から切り離されて、俺達のためだけに"今"があるようだ」
それにしても、と彼は続ける。
「ちゃんと屋根のある家が必要だな」
「雨に濡れると、火行の力に影響ある?」
「ふっ……俺一人なら、こんな雨どうってことねえ。実際、今までだって、こうやってやり過ごしてきたんだからな」
祢々斬の頬が、心なしか赤くなった。
「瑠璃……おまえを、雨に濡らす訳にはいかねえだろ」
「ねえ、祢々斬、それって……」
まっすぐ見つめる瑠璃の瞳に、祢々斬が映る。
「ああ……二人で暮らそう」
瑠璃は、勢いよく祢々斬の胸に飛びこんた。
瑠璃の不意打ち的な行動に、一瞬ぐらついた祢々斬だったが、腕に力をこめて彼女を抱きとめる。
「いつでもずっと、祢々斬と一緒にいられる……」
「ああ。雨の日でも、雪の日でもな」
「これ……プロポーズだと思っていいの?」
「なんだ、それは。」
「"求婚"……今私達、結婚の約束をしたって思っていいんだよね」
祢々斬が顔を赤らめ、目をそらしながらつぶやく。
「ああ……そういうことだな」
「祢々斬ってば、もっと感動してよ!」
瑠璃が、祢々斬の袖を引っ張る。
「私なんか……嬉しくって嬉しくって、雨の中に飛び出しちゃいたいくらいなのに……」
「頼むからそれはやめてくれ」
祢々斬が慌てて瑠璃の方に向き直り、彼女の両肩を押さえる。
「大事な花嫁が、風邪ひく気か?」
祢々斬を見上げた瑠璃の瞳は、幸せそうな光をたたえる。
「うん……わかった。私は祢々斬のものだもんね。ちゃんと、自分を大切にする」
祢々斬は、瑠璃の頭をクシャクシャと撫でると、ギュッと抱き締めた。
いつの間にか雨脚は弱まり、流れる雲は明るさを帯びている。
「瑠璃、約束の印だ」
顔を上げた瑠璃に、祢々斬はそっと口付けた。
*
降りしきる雨。
祢々斬は雨が苦手なようで、ここのところ彼の姿を見かけない。
何となく気をもみながらも、瑠璃は屋敷の中の雑事に追われ、紅玉の丘を訪れるタイミングを見つけられずにいた。
そんな状態が数日続いた後、ようやく外出できたある日のこと―――
「祢々斬」
岩が庇のように突き出た下で雨宿りをしている祢々斬を見つけ、瑠璃は声を弾ませた。
ぬかるみに足をとられないよう、慎重に歩み寄る。
岩壁に背中を預け、気怠そうに宙を見ていた祢々斬だったが、突然の来訪者の足元のおぼつかなさに、思わず立ち上がる。
ようやく雨をしのげる場所までたどり着いた瑠璃は、傘をたたむと再び歩き出した――
が、最後の最後で足を滑らせた。
「っっ!!」
しりもちを覚悟した瑠璃の腕を、祢々斬がつかむ。
そしてそのまま、彼女を抱き寄せて自分の腕の中に収めた。
「ったく、おまえは……。こんな雨の日に……風邪でもひいたら、どうするつもりだ!?」
「大丈夫だよ」
瑠璃は、祢々斬を見上げて、にっこりと微笑む。
「その根拠のない自信は、一体どこからくるんだ?」
「ふふ、それはね……ここから」
嬉しそうに言いながら、瑠璃は祢々斬の頬を両手で包む。
「祢々斬がいてくれれば、風邪なんかひかない」
いつになく自分に触れ、甘えてくる瑠璃をそっと撫でながら、祢々斬は彼女に問いかける。
「寂しい思い……させたか?」
「うん……」
瑠璃は、祢々斬の衿を両手でギュッとつかむと、彼の胸に頬を寄せる。
「祢々斬に会いたくて、会いたくて……がまんできなくなって……来ちゃった」
二人で肩を寄せて座り、雨音に耳をすませる。
「私、雨の音を聞くのが好きなんだ」
独り言のように、瑠璃がつぶやく。
「物好きだな」
「いいの、好きなんだから」
瑠璃は、祢々斬の肩に頭を預けると、目を閉じる。
「今、この世界には私達だけ……二人きりなんだって……そんな気持ちになれるから」
祢々斬は、ふっと笑うと瑠璃の肩を抱き、自分の方にぐいと引き寄せた。
「ああ、確かにそうだな。過ぎてく時間から切り離されて、俺達のためだけに"今"があるようだ」
それにしても、と彼は続ける。
「ちゃんと屋根のある家が必要だな」
「雨に濡れると、火行の力に影響ある?」
「ふっ……俺一人なら、こんな雨どうってことねえ。実際、今までだって、こうやってやり過ごしてきたんだからな」
祢々斬の頬が、心なしか赤くなった。
「瑠璃……おまえを、雨に濡らす訳にはいかねえだろ」
「ねえ、祢々斬、それって……」
まっすぐ見つめる瑠璃の瞳に、祢々斬が映る。
「ああ……二人で暮らそう」
瑠璃は、勢いよく祢々斬の胸に飛びこんた。
瑠璃の不意打ち的な行動に、一瞬ぐらついた祢々斬だったが、腕に力をこめて彼女を抱きとめる。
「いつでもずっと、祢々斬と一緒にいられる……」
「ああ。雨の日でも、雪の日でもな」
「これ……プロポーズだと思っていいの?」
「なんだ、それは。」
「"求婚"……今私達、結婚の約束をしたって思っていいんだよね」
祢々斬が顔を赤らめ、目をそらしながらつぶやく。
「ああ……そういうことだな」
「祢々斬ってば、もっと感動してよ!」
瑠璃が、祢々斬の袖を引っ張る。
「私なんか……嬉しくって嬉しくって、雨の中に飛び出しちゃいたいくらいなのに……」
「頼むからそれはやめてくれ」
祢々斬が慌てて瑠璃の方に向き直り、彼女の両肩を押さえる。
「大事な花嫁が、風邪ひく気か?」
祢々斬を見上げた瑠璃の瞳は、幸せそうな光をたたえる。
「うん……わかった。私は祢々斬のものだもんね。ちゃんと、自分を大切にする」
祢々斬は、瑠璃の頭をクシャクシャと撫でると、ギュッと抱き締めた。
いつの間にか雨脚は弱まり、流れる雲は明るさを帯びている。
「瑠璃、約束の印だ」
顔を上げた瑠璃に、祢々斬はそっと口付けた。
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