強がりTyphoon
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朝から吹いていた、雨の匂いを含んだ風が急激に強まる。
気付いた時には、いきなり叩きつけるような雨が降りだしていた。
「魁童……雨と風がすごくなってきたけど……台風かな」
「台風?おまえの世界の言葉か?」
「うん……嵐って言ったら伝わる?」
「ああ、そんならわかるぞ。しっかし……すげえ雨と風だな。この小屋大丈夫かな」
風が唸るたびに、今二人がくつろいでいる、魁童の根城である小屋が軋む。
「ねえ、魁童……今なんか聞こえなかった……?」
「え?別になんにも聞こえねえぞ」
「そ、そう?だったら、いいんだけど……」
妙におどおどしながら落ち着かない様子のはるかに、魁童は首をかしげる。
その時、何かが地面を這うような音が、今度は魁童の耳にもはっきりと聞こえた。
「ひっっっ!!!」
声にならない悲鳴をあげ、はるかが身を縮める。
「もしかして……おまえ、雷が怖いのか?」
はるかは、キッと顔を上げる。
「ば……ばばば、ばかにしないでよっ。五行の力を操る術士が雷怖いなんて…」
「ドッカーン!!」
「やあああぁ~っ!!!」
はるかは、両手でしっかりと耳をふさぐと目を固く閉じ、膝を抱えるような格好でうずくまった。
その肩は小刻みに震えている。
「お……おい……」
魁童がおずおずと声をかけるが、反応がない。
「おいっ……!はるか、大丈夫か?」
慌てた魁童に肩をつかまれ揺さぶられ、はるかはゆっくりと顔を上げる。
恨めしそうに魁童を睨み付ける彼女の目には、涙がにじんでいた。
「わりい……やり過ぎたよ。こんなに怖がるなんて思わなかったからさ……ほんとに、悪かった!」
パン!と両手を合わせ、拝むような仕草で謝る魁童に、彼女は何も言い返す気配がない。
「悪かったって……おい、なんか言えよ」
はるかの顔を覗き込んだ魁童は、彼女が無言でいる理由を察知した。
魁童に見られまいと顔をそらした彼女は、『言葉を発したら泣いてしまう』……そう思って唇をかみしめているのに違いなかった。
はるかが普段、表に見せる顔といえば……
――いつも"のほほん"と脱力系。
それでいて、どこか飄々としていて弱味は見せなくて――
そんな彼女に、このような、か弱く女の子らしい一面があったとは。
――こいつのこんな顔、知ってるのは俺だけだよな――
そこはかとない優越感を覚え、魁童の口元は自然にゆるむ。
笑みがこぼれそうになり、彼は慌ててはるかの頭を抱えると、自分の胸に引き寄せた。
子供をあやすように、彼女の背中をポンポンと優しくたたく。
「安心しろ、こうしててやるから」
相変わらず無言のままだが、はるかは微かに頷きながら、その顔と身体を魁童にギュッと押し付けた。
小屋の外では、雨風が激しさを増している。
魁童は手を伸ばし、はるかが異界から調達してきた、"そーらー充電"とかいうランタンに灯りをともす。
ふっと顔を上げたはるかと瞳を合わせてニカッと笑うと、魁童は再び彼女を抱きしめる。
「台風がやむまで、ずっとこうしててやる」
薄暗くなった小屋の中で、ランタンの灯りだけが煌々と輝いていた。
*
気付いた時には、いきなり叩きつけるような雨が降りだしていた。
「魁童……雨と風がすごくなってきたけど……台風かな」
「台風?おまえの世界の言葉か?」
「うん……嵐って言ったら伝わる?」
「ああ、そんならわかるぞ。しっかし……すげえ雨と風だな。この小屋大丈夫かな」
風が唸るたびに、今二人がくつろいでいる、魁童の根城である小屋が軋む。
「ねえ、魁童……今なんか聞こえなかった……?」
「え?別になんにも聞こえねえぞ」
「そ、そう?だったら、いいんだけど……」
妙におどおどしながら落ち着かない様子のはるかに、魁童は首をかしげる。
その時、何かが地面を這うような音が、今度は魁童の耳にもはっきりと聞こえた。
「ひっっっ!!!」
声にならない悲鳴をあげ、はるかが身を縮める。
「もしかして……おまえ、雷が怖いのか?」
はるかは、キッと顔を上げる。
「ば……ばばば、ばかにしないでよっ。五行の力を操る術士が雷怖いなんて…」
「ドッカーン!!」
「やあああぁ~っ!!!」
はるかは、両手でしっかりと耳をふさぐと目を固く閉じ、膝を抱えるような格好でうずくまった。
その肩は小刻みに震えている。
「お……おい……」
魁童がおずおずと声をかけるが、反応がない。
「おいっ……!はるか、大丈夫か?」
慌てた魁童に肩をつかまれ揺さぶられ、はるかはゆっくりと顔を上げる。
恨めしそうに魁童を睨み付ける彼女の目には、涙がにじんでいた。
「わりい……やり過ぎたよ。こんなに怖がるなんて思わなかったからさ……ほんとに、悪かった!」
パン!と両手を合わせ、拝むような仕草で謝る魁童に、彼女は何も言い返す気配がない。
「悪かったって……おい、なんか言えよ」
はるかの顔を覗き込んだ魁童は、彼女が無言でいる理由を察知した。
魁童に見られまいと顔をそらした彼女は、『言葉を発したら泣いてしまう』……そう思って唇をかみしめているのに違いなかった。
はるかが普段、表に見せる顔といえば……
――いつも"のほほん"と脱力系。
それでいて、どこか飄々としていて弱味は見せなくて――
そんな彼女に、このような、か弱く女の子らしい一面があったとは。
――こいつのこんな顔、知ってるのは俺だけだよな――
そこはかとない優越感を覚え、魁童の口元は自然にゆるむ。
笑みがこぼれそうになり、彼は慌ててはるかの頭を抱えると、自分の胸に引き寄せた。
子供をあやすように、彼女の背中をポンポンと優しくたたく。
「安心しろ、こうしててやるから」
相変わらず無言のままだが、はるかは微かに頷きながら、その顔と身体を魁童にギュッと押し付けた。
小屋の外では、雨風が激しさを増している。
魁童は手を伸ばし、はるかが異界から調達してきた、"そーらー充電"とかいうランタンに灯りをともす。
ふっと顔を上げたはるかと瞳を合わせてニカッと笑うと、魁童は再び彼女を抱きしめる。
「台風がやむまで、ずっとこうしててやる」
薄暗くなった小屋の中で、ランタンの灯りだけが煌々と輝いていた。
*
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