紫陽花月夜
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村外れの空き家の庭に、とてもきれいな紫陽花が咲いているから、見に行こう――
無月に誘われ、今日は二人で紫陽花見物に行ってきた。
夕暮れ前には蒼玉の湖に戻り、それから、二人で肩を並べて座り、とりとめもない会話を楽しんでいた。
暦の上では夏とは言え、吹く風はまだ冷たい。
吹きわたった風に、思わず身ぶるいをすると、無月がそっと、私の肩を抱いた。
「寒いのか?」
「ん、ちょっと」
「まだ、風が冷たい。そなたの身に障りがあってはいけない。そろそろ、屋敷まで送ろう」
「…………」
まだ帰りたくなくて、私は無言のまま、無月の着物の袖をつかんだ。
「月讀が心配するぞ?」
「月讀さんは……今晩は戻らないの」
甘い湿気をはらんだ初夏の宵の空気に、もっと浸っていたかった。
無月が、微かにため息をついた。
私、無月を困らせてる……
ほんの少し、泣きたい気持ちになったその時、肩に回された無月の腕に、力がこめられた。
「困ったな……ますます、そなたを帰したくなくなる」
見上げると、無月のはにかんだような微笑みが、私に向けられていた。
「今宵は月がきれいに見えるはずだ。昼間の紫陽花を、もう一度見に行ってみるか?」
「月と紫陽花かぁ……きっと、きれいだろうね」
「また、けっこうな距離を歩かねばならぬが、それでもよいのか?」
「うん、大丈夫!無月と一緒にいられるんだから、がんばるよ!」
「ふ……そなたは全く……」
無月は微笑みながら、私の頭をやさしくなでた。
再び、村外れの空き家に着いた時には、日はすっかり暮れ、空にはきれいな満月が輝いていた。
月明かりに照らされ、紫陽花の花は、昼間とは違った美しさを見せている。
「来て良かった!きれいだね、無月!」
はしゃいで小走りになった私は、足元の段差につまづいて、転びそうになった。
転ばなかったのは……無月の大きな手が、私をしっかり支えてくれたから。
「##NAME1##は、本当に危なっかしい」
私の肩を無月が抱いたまま、庭を見渡せる縁台まで二人で歩く。
縁台に並んで腰かけると、月と紫陽花をゆっくり眺めた。
余分な言葉なんて、なくてもいい。
無月と、こうしていられるだけで、私は幸せ……
だんだん心地よい眠気が襲ってきて、私の頭は、無月の肩にもたれかかった。
「##NAME1##、眠くなったのか?」
「ん…………」
無月が、私の肩にそっと手をおいて、やさしく抱き寄せる。
「無月……きれいだね」
「本当だな……そなたとともに見る景色は、なおさら美しい」
「無月ってば……」
何よりもあたたかく安らげる、無月の体温を感じながら……
長い道のりを歩いた 疲れがでたのか、私の意識は、そこで途切れてしまった。
目を覚ますと、そこは見慣れた私の部屋だった。
「おお、##NAME1##!目を覚ましたようじゃの」
ちょうど久遠が、様子を見に部屋に入ってきた。
「どうして、私ここに……」
「##NAME1##、無月に感謝するのじゃ」
「無月……!……私、無月と一緒にいて、寝ちゃったんだ……」
遠い村外れから、私を抱えてきてくれた無月に、申し訳なさでいっぱいになった。
「あやつは、眠っているお主が目を覚まさぬように、風邪をひかぬようにと、それはそれは大事に運んで来てくれたのじゃぞ」
無月が触れた肩が、ほんのりと熱を帯びる。
「さあさあ、夕飯にするのじゃ。お主がなかなか起きないから、待ちくたびれてしまったぞ」
「うん、おなかペコペコだよね……ごめんね、久遠」
「先に温め直しておくから、お主も早く来るのじゃぞ」
久遠は、足早に部屋から出ていった。
起きなきゃ……そう思いながら、月の光に浮かび上がる紫陽花と、肩に置かれた無月の手のあたたかさが思い出される。
いつも私をやさしく包み込んでくれる、無月の存在。
私にとって、なくてはならない、大切な大切な相手。
無月にとっての私も、そうであってほしい……
そう思いながら更けてゆく、初夏の宵だった。
*
無月に誘われ、今日は二人で紫陽花見物に行ってきた。
夕暮れ前には蒼玉の湖に戻り、それから、二人で肩を並べて座り、とりとめもない会話を楽しんでいた。
暦の上では夏とは言え、吹く風はまだ冷たい。
吹きわたった風に、思わず身ぶるいをすると、無月がそっと、私の肩を抱いた。
「寒いのか?」
「ん、ちょっと」
「まだ、風が冷たい。そなたの身に障りがあってはいけない。そろそろ、屋敷まで送ろう」
「…………」
まだ帰りたくなくて、私は無言のまま、無月の着物の袖をつかんだ。
「月讀が心配するぞ?」
「月讀さんは……今晩は戻らないの」
甘い湿気をはらんだ初夏の宵の空気に、もっと浸っていたかった。
無月が、微かにため息をついた。
私、無月を困らせてる……
ほんの少し、泣きたい気持ちになったその時、肩に回された無月の腕に、力がこめられた。
「困ったな……ますます、そなたを帰したくなくなる」
見上げると、無月のはにかんだような微笑みが、私に向けられていた。
「今宵は月がきれいに見えるはずだ。昼間の紫陽花を、もう一度見に行ってみるか?」
「月と紫陽花かぁ……きっと、きれいだろうね」
「また、けっこうな距離を歩かねばならぬが、それでもよいのか?」
「うん、大丈夫!無月と一緒にいられるんだから、がんばるよ!」
「ふ……そなたは全く……」
無月は微笑みながら、私の頭をやさしくなでた。
再び、村外れの空き家に着いた時には、日はすっかり暮れ、空にはきれいな満月が輝いていた。
月明かりに照らされ、紫陽花の花は、昼間とは違った美しさを見せている。
「来て良かった!きれいだね、無月!」
はしゃいで小走りになった私は、足元の段差につまづいて、転びそうになった。
転ばなかったのは……無月の大きな手が、私をしっかり支えてくれたから。
「##NAME1##は、本当に危なっかしい」
私の肩を無月が抱いたまま、庭を見渡せる縁台まで二人で歩く。
縁台に並んで腰かけると、月と紫陽花をゆっくり眺めた。
余分な言葉なんて、なくてもいい。
無月と、こうしていられるだけで、私は幸せ……
だんだん心地よい眠気が襲ってきて、私の頭は、無月の肩にもたれかかった。
「##NAME1##、眠くなったのか?」
「ん…………」
無月が、私の肩にそっと手をおいて、やさしく抱き寄せる。
「無月……きれいだね」
「本当だな……そなたとともに見る景色は、なおさら美しい」
「無月ってば……」
何よりもあたたかく安らげる、無月の体温を感じながら……
長い道のりを歩いた 疲れがでたのか、私の意識は、そこで途切れてしまった。
目を覚ますと、そこは見慣れた私の部屋だった。
「おお、##NAME1##!目を覚ましたようじゃの」
ちょうど久遠が、様子を見に部屋に入ってきた。
「どうして、私ここに……」
「##NAME1##、無月に感謝するのじゃ」
「無月……!……私、無月と一緒にいて、寝ちゃったんだ……」
遠い村外れから、私を抱えてきてくれた無月に、申し訳なさでいっぱいになった。
「あやつは、眠っているお主が目を覚まさぬように、風邪をひかぬようにと、それはそれは大事に運んで来てくれたのじゃぞ」
無月が触れた肩が、ほんのりと熱を帯びる。
「さあさあ、夕飯にするのじゃ。お主がなかなか起きないから、待ちくたびれてしまったぞ」
「うん、おなかペコペコだよね……ごめんね、久遠」
「先に温め直しておくから、お主も早く来るのじゃぞ」
久遠は、足早に部屋から出ていった。
起きなきゃ……そう思いながら、月の光に浮かび上がる紫陽花と、肩に置かれた無月の手のあたたかさが思い出される。
いつも私をやさしく包み込んでくれる、無月の存在。
私にとって、なくてはならない、大切な大切な相手。
無月にとっての私も、そうであってほしい……
そう思いながら更けてゆく、初夏の宵だった。
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