息吹
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
~終わりよければ~
「はるか!」「魁童!」
互いの姿を認めた二人は、弾かれたように駆け寄り、固く抱き締め合う。
懐に忍ばせた黄金色の匂い袋が、甘い香りを放つ。
「魁童、魁童……夢みたい……」
「あぁ、はるか……会いたかった、ずっとずっと……」
二人は、求めてやまなかった相手のぬくもりを存分に確かめる。
「かっちゃん、お姉ちゃん……本当によかったです!」
「全くだ。魁童のへこみようったら、尋常じゃなかったからな」
祢々斬と玖々廼馳の笑顔に、無月もうなずく。
「はるか……おまえ、顔色よくないぞ?」
魁童がはるかを抱き締めたまま、鼻と鼻をくっつけて心配そうに呟く。
「しばらく体調が悪くて……でも、もう大丈夫。魁童がいてくれるから……」
少し離れて再会の抱擁を眺めていた竜尊が、はるかに歩み寄る。
「はるか、先だって俺が言ったこと、ちゃんとわかってるか?」
「竜尊、私が帰って来れたの竜尊のおかげだよ。本当にありがとう。言われたとおり、がんばってご飯食べたよ」
「ちゃんと二人分食べたか?」
「……え?……あ……もしかして……うそっ!?」
竜尊は魁童に向かってニッと笑いかける。
「魁童、はるかは身籠ってるんじゃないのか?」
「「「えーーーっ!!」」」
魁童だけではなく、その場にいる全員から驚きの声があがる。
「そ……そういえば……最近、月のものが来てなかったような……もしかして、ずっと具合悪かったのって、つわりだったのかな……」
「はるか!本当に本当か!?」
「……なのかな?魁童……どうしよう?」
はるかを抱き締める魁童の腕に力がこめられる。
「どうするもこうするも……やったぜ!!はるかっ!」
「なんだと~!?魁童が父親ぁ!?」
「かっちゃん、いっぺんに元気になりましたね」
「ふむ……そなた達の子供となれば、楽しみだな」
鬼達が思い思いの言葉を口にし、幸せそうな二人をなでたり小突いたり。
やれ、赤子は男の子だ、いや女の子だ、だの、最初に抱っこするのは俺だ、僕です、いや我だ、等々……
にぎやかなこと、この上ない。
「月讀、よかったのう。はるかが笑っておるのじゃ……」
歓喜の渦を遠巻きに見つめながら放心したように立ち尽くしていた月讀は、久遠に着物の袂を引かれて我に返る。
「ええ……私は、取り返しのつかない過ちをおかすところでした」
「月讀……」
「おいおい、こんな隅っこで何やってんだ?子狐、あいつらを祝福してやってきたらどうだ?」
いつの間にか背後に近寄っていた竜尊に促され、久遠がはちきれんばかりの笑顔で駆け出し、鬼達の輪に加わる。
その様子を満足そうに見届けた月讀は、目の前の土の鬼に視線を移す。
「竜尊、今回ばかりは、あなたに感謝しなくてはなりませんね」
「なあに、礼には及ばんぜ。おまえのためじゃない、魁童とはるかのためだからな……さあ、おまえも行ってやれ」
歩み寄る月讀に気付いて、はるかは魁童の背中に回していた腕をゆるめる。
「月讀さん……ごめんなさい、私、月讀さんの本当の気持ちも知らずに……向こうに戻されたこと、恨んでしまいました」
「あなたのためにと……良かれと思ってしたことでしたが……結果的に、あなたを苦しみの淵に追い落としてしまいました。謝るのは私の方です」
月讀は、力なく笑った。
「はるかさん……そして魁童にも、本当に申し訳ないことをしました。このとおりです」
月讀は、二人に向かって頭を下げる。
「月讀さん!」
はるかの声に、月讀が顔を上げる。
「そんなつらそうな顔、月讀さんには似合いません。私は今、とっても幸せなんですよ?『終わりよければ全てよし』っていうじゃないですか」
屈託なく笑う彼女の声の心地よさに、改めて月讀は思う。
彼女の存在そのものこそが、自分にとって、そしてこの世界全てにとって、眩しく暖かな光であったのだと……。
「はるかさん、あなたはいつの間にか、すっかりたくましくなっていたのですね。新しい命の息吹がそうさせるのでしょうか?」
「おぉっ!!それいいなっ!」
目を輝かせて叫ぶ魁童に、はるかが首を傾げてみせる。
「え?どういうこと?」
「だーかーら、子供の名前だよ。"いぶき"……いい名前だろ?男でも女でも大丈夫だし」
「いぶき、いぶき……うんっ!素敵な名前だね」
瞳を合わせ微笑み合う二人。
はるかの中に宿る小さな命は、こうして『いぶき』という名を与えられ、数多の祝福を受けながら、やがてこの世界に生まれ出でることになる。
*
「はるか!」「魁童!」
互いの姿を認めた二人は、弾かれたように駆け寄り、固く抱き締め合う。
懐に忍ばせた黄金色の匂い袋が、甘い香りを放つ。
「魁童、魁童……夢みたい……」
「あぁ、はるか……会いたかった、ずっとずっと……」
二人は、求めてやまなかった相手のぬくもりを存分に確かめる。
「かっちゃん、お姉ちゃん……本当によかったです!」
「全くだ。魁童のへこみようったら、尋常じゃなかったからな」
祢々斬と玖々廼馳の笑顔に、無月もうなずく。
「はるか……おまえ、顔色よくないぞ?」
魁童がはるかを抱き締めたまま、鼻と鼻をくっつけて心配そうに呟く。
「しばらく体調が悪くて……でも、もう大丈夫。魁童がいてくれるから……」
少し離れて再会の抱擁を眺めていた竜尊が、はるかに歩み寄る。
「はるか、先だって俺が言ったこと、ちゃんとわかってるか?」
「竜尊、私が帰って来れたの竜尊のおかげだよ。本当にありがとう。言われたとおり、がんばってご飯食べたよ」
「ちゃんと二人分食べたか?」
「……え?……あ……もしかして……うそっ!?」
竜尊は魁童に向かってニッと笑いかける。
「魁童、はるかは身籠ってるんじゃないのか?」
「「「えーーーっ!!」」」
魁童だけではなく、その場にいる全員から驚きの声があがる。
「そ……そういえば……最近、月のものが来てなかったような……もしかして、ずっと具合悪かったのって、つわりだったのかな……」
「はるか!本当に本当か!?」
「……なのかな?魁童……どうしよう?」
はるかを抱き締める魁童の腕に力がこめられる。
「どうするもこうするも……やったぜ!!はるかっ!」
「なんだと~!?魁童が父親ぁ!?」
「かっちゃん、いっぺんに元気になりましたね」
「ふむ……そなた達の子供となれば、楽しみだな」
鬼達が思い思いの言葉を口にし、幸せそうな二人をなでたり小突いたり。
やれ、赤子は男の子だ、いや女の子だ、だの、最初に抱っこするのは俺だ、僕です、いや我だ、等々……
にぎやかなこと、この上ない。
「月讀、よかったのう。はるかが笑っておるのじゃ……」
歓喜の渦を遠巻きに見つめながら放心したように立ち尽くしていた月讀は、久遠に着物の袂を引かれて我に返る。
「ええ……私は、取り返しのつかない過ちをおかすところでした」
「月讀……」
「おいおい、こんな隅っこで何やってんだ?子狐、あいつらを祝福してやってきたらどうだ?」
いつの間にか背後に近寄っていた竜尊に促され、久遠がはちきれんばかりの笑顔で駆け出し、鬼達の輪に加わる。
その様子を満足そうに見届けた月讀は、目の前の土の鬼に視線を移す。
「竜尊、今回ばかりは、あなたに感謝しなくてはなりませんね」
「なあに、礼には及ばんぜ。おまえのためじゃない、魁童とはるかのためだからな……さあ、おまえも行ってやれ」
歩み寄る月讀に気付いて、はるかは魁童の背中に回していた腕をゆるめる。
「月讀さん……ごめんなさい、私、月讀さんの本当の気持ちも知らずに……向こうに戻されたこと、恨んでしまいました」
「あなたのためにと……良かれと思ってしたことでしたが……結果的に、あなたを苦しみの淵に追い落としてしまいました。謝るのは私の方です」
月讀は、力なく笑った。
「はるかさん……そして魁童にも、本当に申し訳ないことをしました。このとおりです」
月讀は、二人に向かって頭を下げる。
「月讀さん!」
はるかの声に、月讀が顔を上げる。
「そんなつらそうな顔、月讀さんには似合いません。私は今、とっても幸せなんですよ?『終わりよければ全てよし』っていうじゃないですか」
屈託なく笑う彼女の声の心地よさに、改めて月讀は思う。
彼女の存在そのものこそが、自分にとって、そしてこの世界全てにとって、眩しく暖かな光であったのだと……。
「はるかさん、あなたはいつの間にか、すっかりたくましくなっていたのですね。新しい命の息吹がそうさせるのでしょうか?」
「おぉっ!!それいいなっ!」
目を輝かせて叫ぶ魁童に、はるかが首を傾げてみせる。
「え?どういうこと?」
「だーかーら、子供の名前だよ。"いぶき"……いい名前だろ?男でも女でも大丈夫だし」
「いぶき、いぶき……うんっ!素敵な名前だね」
瞳を合わせ微笑み合う二人。
はるかの中に宿る小さな命は、こうして『いぶき』という名を与えられ、数多の祝福を受けながら、やがてこの世界に生まれ出でることになる。
*
4/4ページ