桜さくら
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日も夢の中、竜尊は会いに来てくれた。
だけど……何だかいつもと雰囲気が違う。
ちょっと悲しげな微笑みをたたえたまま、遠くから私を見つめるだけ。
「竜尊!」
思わず駆け寄って両手を伸ばすのに、ちっとも竜尊との距離は縮まらない。
足がもつれて転んでしまい、涙ながらに顔を上げた――ところで目が覚めた。
竜尊の身に何かあったの?
胸騒ぎを抑えられず、まだ夜の明けきらない道を私は無我夢中で柘榴の祠に向かった。
走り続けてやっとたどり着いた――道は間違っていなかったはずだ。
けれど、今私の目の前にある光景は、妖しいまでに見事に咲き誇る桜。
そして……桜の幹に背中を預けて立っている竜尊。
「竜尊!!」
転がるように竜尊のそばに駆け寄った私は、息が切れて座りこんでしまった。
「瑠璃……こんな時間におまえの方から会いに来てくれるなんて、嬉しいな」
台詞はいつもどおり……だけど、こちらを振り向いた竜尊はあまりにも儚げで、今にも消えてしまいそうに思えた。
「竜尊っ!だめえっっ!!」
引き留めなくちゃいけない……そんな気がして、私は全身の力を込めて竜尊に抱きついた。
「瑠璃にしては珍しく積極的じゃないか」
私の背中にそっと腕を回した竜尊を見上げ、琥珀色の瞳をしっかりと見つめる。
「竜尊……行っちゃだめっ」
「俺が瑠璃をおいて、どこかに行くと思うか?」
「今朝の夢が、そんな夢だったの。だから私、慌てて……」
こみ上げるものがあり、言葉につまる。
竜尊は、そんな私の耳元に唇を寄せて囁く。
「きっと、会いたいという俺の気持ちが瑠璃に通じたんだな」
「何かあったの?」
私を優しく包んだまま、竜尊がポツリとつぶやく。
「桜に――桜の精霊に魅入られたかな」
「え?」
この世界ならば、そういった話も一気に現実味を帯びる。
「力のある者ほど、同調して桜の精に呼ばれる。毎年一人や二人は、戻って来ないというからな」
「そんな……!?どうすればいいの?」
やめて、やめて!
私の竜尊を連れて行くなんて……いくら精霊が相手でも、それだけは絶対に許さない!
竜尊が、優しく私の髪をなでる。
私は竜尊を抱き締める腕にギュッと力を入れ、彼の胸に顔をうずめた。
――――とその時、
ザザアー――ー!!
つむじ風が巻き起こり、私達は吹き荒れる桜吹雪にのみこまれる。
息もできないほどの風圧に何とか耐えながら、私は声を振り絞って叫んだ。
「竜尊を連れて行かないで!……どうしても連れて行くなら、私もついて行くっ!!」
風はますます激しく荒れ狂い、私達は互いを離すまいと必死だった。
ああ、もうだめだ……だんだん気が遠くなってくる。
腕の力が抜けそうになったその時――懐かしい香りに包まれ、私の意識は一瞬はっきりする。
この香り……すごく安心できる、土の匂い 。
竜尊だ、竜尊の匂い… …
竜尊が発する光に守られるように、ふっと体が楽になる。
そのまま私は気を失ってしまった。
気がつくと、私達はしっかりと抱き締め合ったまま、降り積もった桜の花びらの上に横たわっていた。
まだ目を閉じている竜尊の頬には、私をかばって出来たに違いない無数の細かい切り傷がある。
その頬にそっと手を触れ、小声で名前を呼んでみる。
「竜尊……竜尊、お願い、目を開けて」
傷が痛んだのか一瞬顔をしかめてから、竜尊が目を覚ました。
「瑠璃……よかった」
思いきり抱き締められて、息ができなくなる。
「苦しいよ」
そう言いながら、私も強く竜尊を抱き締める。
「竜尊、どこにも行かないでね……ずっと私のそばにいてね」
「ああ、こんなに愛しい瑠璃を、俺が離すわけないだろう?瑠璃は…俺の命よりも大切な女だ」
いつもなら、ふざけてると思って聞き流してしまうような言葉も、今は竜尊の心からの言葉だってわかる。
視線が合うと、竜尊はニッコリと目を細めた。
「……しかし、さすがの俺も、今回はかなりの力を消耗したな。瑠璃、おまえの霊力を少し分けてもらうぞ」
返事をする間もなく、竜尊の唇が私の唇に重なった。
大切な大切な相手との口付けに、とても安らかで優しい気持ちになる。
ずっと、こうしていたい――
私達の上に、桜の花びらが静かに舞い散っていた。
*
だけど……何だかいつもと雰囲気が違う。
ちょっと悲しげな微笑みをたたえたまま、遠くから私を見つめるだけ。
「竜尊!」
思わず駆け寄って両手を伸ばすのに、ちっとも竜尊との距離は縮まらない。
足がもつれて転んでしまい、涙ながらに顔を上げた――ところで目が覚めた。
竜尊の身に何かあったの?
胸騒ぎを抑えられず、まだ夜の明けきらない道を私は無我夢中で柘榴の祠に向かった。
走り続けてやっとたどり着いた――道は間違っていなかったはずだ。
けれど、今私の目の前にある光景は、妖しいまでに見事に咲き誇る桜。
そして……桜の幹に背中を預けて立っている竜尊。
「竜尊!!」
転がるように竜尊のそばに駆け寄った私は、息が切れて座りこんでしまった。
「瑠璃……こんな時間におまえの方から会いに来てくれるなんて、嬉しいな」
台詞はいつもどおり……だけど、こちらを振り向いた竜尊はあまりにも儚げで、今にも消えてしまいそうに思えた。
「竜尊っ!だめえっっ!!」
引き留めなくちゃいけない……そんな気がして、私は全身の力を込めて竜尊に抱きついた。
「瑠璃にしては珍しく積極的じゃないか」
私の背中にそっと腕を回した竜尊を見上げ、琥珀色の瞳をしっかりと見つめる。
「竜尊……行っちゃだめっ」
「俺が瑠璃をおいて、どこかに行くと思うか?」
「今朝の夢が、そんな夢だったの。だから私、慌てて……」
こみ上げるものがあり、言葉につまる。
竜尊は、そんな私の耳元に唇を寄せて囁く。
「きっと、会いたいという俺の気持ちが瑠璃に通じたんだな」
「何かあったの?」
私を優しく包んだまま、竜尊がポツリとつぶやく。
「桜に――桜の精霊に魅入られたかな」
「え?」
この世界ならば、そういった話も一気に現実味を帯びる。
「力のある者ほど、同調して桜の精に呼ばれる。毎年一人や二人は、戻って来ないというからな」
「そんな……!?どうすればいいの?」
やめて、やめて!
私の竜尊を連れて行くなんて……いくら精霊が相手でも、それだけは絶対に許さない!
竜尊が、優しく私の髪をなでる。
私は竜尊を抱き締める腕にギュッと力を入れ、彼の胸に顔をうずめた。
――――とその時、
ザザアー――ー!!
つむじ風が巻き起こり、私達は吹き荒れる桜吹雪にのみこまれる。
息もできないほどの風圧に何とか耐えながら、私は声を振り絞って叫んだ。
「竜尊を連れて行かないで!……どうしても連れて行くなら、私もついて行くっ!!」
風はますます激しく荒れ狂い、私達は互いを離すまいと必死だった。
ああ、もうだめだ……だんだん気が遠くなってくる。
腕の力が抜けそうになったその時――懐かしい香りに包まれ、私の意識は一瞬はっきりする。
この香り……すごく安心できる、土の匂い 。
竜尊だ、竜尊の匂い… …
竜尊が発する光に守られるように、ふっと体が楽になる。
そのまま私は気を失ってしまった。
気がつくと、私達はしっかりと抱き締め合ったまま、降り積もった桜の花びらの上に横たわっていた。
まだ目を閉じている竜尊の頬には、私をかばって出来たに違いない無数の細かい切り傷がある。
その頬にそっと手を触れ、小声で名前を呼んでみる。
「竜尊……竜尊、お願い、目を開けて」
傷が痛んだのか一瞬顔をしかめてから、竜尊が目を覚ました。
「瑠璃……よかった」
思いきり抱き締められて、息ができなくなる。
「苦しいよ」
そう言いながら、私も強く竜尊を抱き締める。
「竜尊、どこにも行かないでね……ずっと私のそばにいてね」
「ああ、こんなに愛しい瑠璃を、俺が離すわけないだろう?瑠璃は…俺の命よりも大切な女だ」
いつもなら、ふざけてると思って聞き流してしまうような言葉も、今は竜尊の心からの言葉だってわかる。
視線が合うと、竜尊はニッコリと目を細めた。
「……しかし、さすがの俺も、今回はかなりの力を消耗したな。瑠璃、おまえの霊力を少し分けてもらうぞ」
返事をする間もなく、竜尊の唇が私の唇に重なった。
大切な大切な相手との口付けに、とても安らかで優しい気持ちになる。
ずっと、こうしていたい――
私達の上に、桜の花びらが静かに舞い散っていた。
*
1/1ページ