つかのまの独白
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もうすぐ夜が明ける。
窓の外は雨。
薄暗い部屋の中で、僕は束の間の思考に耽る。
絶え間なく降り注ぎ地面を濡らす水の音は、なんとなく陰鬱な感じがする。
でもさ、僕はけっこう好きなんだ。
世の中のしがらみとか、うんざりするような現実を、すべて覆い隠してくれそうな……そんな気がするから。
ベッドから上体を起こして傍らの温度に目をやれば、なんの不安もなさそうにスヤスヤ眠ってる千鶴ちゃん。
どんな夢を見てるのかな。
君のことなら、すべて知っていたいと思う。
でも、『そんなこと無理に決まってるでしょ』って頭の中のさめた自分が皮肉めいた笑いを浮かべる度に、僕は絶望の淵に突き落とされるんだ。
僕は……
以前の僕とは、変わってしまったらしい。
ちょっと前の僕なら――
猟奇的な事件が起こる度、たまたまめくった週刊誌の記事を目にしたりテレビで訳知り顔のコメンテーターが力んでしゃべってるのを聞いても、はっきり言って理解不能だった。
壊してしまったら、手に入れられないのと同じじゃないの?
何のためにそんなことする訳?……って、ね。
けど、今なら少し共感できる。
僕がこれほどまでに想っても、それはただ空回りしてるだけなんじゃないかって思い知る瞬間
僕の望む二人の世界から、君が出ていってしまうんじゃないかって気付いた刹那
手に入らないのなら……
望みが叶わないのなら……
いっそ苦悩の元を消し去ってしまえれば、どんなに楽か。
…………でも、とことんまで追い詰められた僕のそんな感情を、君の笑顔が容易く吹き飛ばしてしまうんだ。
我ながら、単純だとは思うけど。
深く深く闇に沈んで、君の垂らした蜘蛛の糸にすがりついて水面に顔を出し、安堵の息をつく。
何度も何度もそれを繰り返し……
そしてまた、堂々巡りが始まる。
いつだってそのさえずりで、ささくれがちな心をとかしてくれる、可愛い僕の小鳥。
僕のことだけを見て、考えて、愛してほしい。
そのためなら、翼をもぎ取って僕という檻に閉じ込めることだっていとわない。
だって、そうでもしなくちゃ……
世界は広くて、君はいつか他の誰かの元に飛び立ってしまうかもしれないんだから。
だから、僕が……
この手で、千鶴ちゃんを永遠に僕だけのものにする。
君を想うあまりの、切なさ
いとおしさが募るあまりの、やるせなさ
もうこれ以上、悩んだり苦しんだり、したくないんだ。
無防備な首に、そっと両手をかける。
触れた手が冷たかったのか、千鶴ちゃんはちょっぴり顔をしかめてうめき声をもらしながら、でも相変わらず眠ったままで寝返りをうつ。
「嘘だよ」
小さくつぶやいて、首から離した手で千鶴ちゃんの髪を撫でた。
僕は、千鶴ちゃんの幻影がほしいんじゃない。
温かく血の通った、生身の彼女がほしいんだ。
僕の思い通りに言葉を返し行動する、妄想の中のお人形さんがほしい訳じゃない。
時々予想外のことをしでかしたり、たまにイラッとくるくらいどんくさいことをしたり、まるで母親か姉貴みたいに僕のことを叱ったり……
そんな、本物の千鶴ちゃんに、傍にいてほしいんだ、きっと、多分……
同じことばかりが、繰り返し繰り返し頭の中を廻る。
僕が生きている限り、形は変わっても、僕を脅かし続けるどす黒い『なにか』
そうして笑顔の仮面をつけたまま、僕は永遠に逡巡し、帰り道を見失った子供のようにさ迷い続けるのだろう。
千鶴ちゃん……君の隣で。
*
窓の外は雨。
薄暗い部屋の中で、僕は束の間の思考に耽る。
絶え間なく降り注ぎ地面を濡らす水の音は、なんとなく陰鬱な感じがする。
でもさ、僕はけっこう好きなんだ。
世の中のしがらみとか、うんざりするような現実を、すべて覆い隠してくれそうな……そんな気がするから。
ベッドから上体を起こして傍らの温度に目をやれば、なんの不安もなさそうにスヤスヤ眠ってる千鶴ちゃん。
どんな夢を見てるのかな。
君のことなら、すべて知っていたいと思う。
でも、『そんなこと無理に決まってるでしょ』って頭の中のさめた自分が皮肉めいた笑いを浮かべる度に、僕は絶望の淵に突き落とされるんだ。
僕は……
以前の僕とは、変わってしまったらしい。
ちょっと前の僕なら――
猟奇的な事件が起こる度、たまたまめくった週刊誌の記事を目にしたりテレビで訳知り顔のコメンテーターが力んでしゃべってるのを聞いても、はっきり言って理解不能だった。
壊してしまったら、手に入れられないのと同じじゃないの?
何のためにそんなことする訳?……って、ね。
けど、今なら少し共感できる。
僕がこれほどまでに想っても、それはただ空回りしてるだけなんじゃないかって思い知る瞬間
僕の望む二人の世界から、君が出ていってしまうんじゃないかって気付いた刹那
手に入らないのなら……
望みが叶わないのなら……
いっそ苦悩の元を消し去ってしまえれば、どんなに楽か。
…………でも、とことんまで追い詰められた僕のそんな感情を、君の笑顔が容易く吹き飛ばしてしまうんだ。
我ながら、単純だとは思うけど。
深く深く闇に沈んで、君の垂らした蜘蛛の糸にすがりついて水面に顔を出し、安堵の息をつく。
何度も何度もそれを繰り返し……
そしてまた、堂々巡りが始まる。
いつだってそのさえずりで、ささくれがちな心をとかしてくれる、可愛い僕の小鳥。
僕のことだけを見て、考えて、愛してほしい。
そのためなら、翼をもぎ取って僕という檻に閉じ込めることだっていとわない。
だって、そうでもしなくちゃ……
世界は広くて、君はいつか他の誰かの元に飛び立ってしまうかもしれないんだから。
だから、僕が……
この手で、千鶴ちゃんを永遠に僕だけのものにする。
君を想うあまりの、切なさ
いとおしさが募るあまりの、やるせなさ
もうこれ以上、悩んだり苦しんだり、したくないんだ。
無防備な首に、そっと両手をかける。
触れた手が冷たかったのか、千鶴ちゃんはちょっぴり顔をしかめてうめき声をもらしながら、でも相変わらず眠ったままで寝返りをうつ。
「嘘だよ」
小さくつぶやいて、首から離した手で千鶴ちゃんの髪を撫でた。
僕は、千鶴ちゃんの幻影がほしいんじゃない。
温かく血の通った、生身の彼女がほしいんだ。
僕の思い通りに言葉を返し行動する、妄想の中のお人形さんがほしい訳じゃない。
時々予想外のことをしでかしたり、たまにイラッとくるくらいどんくさいことをしたり、まるで母親か姉貴みたいに僕のことを叱ったり……
そんな、本物の千鶴ちゃんに、傍にいてほしいんだ、きっと、多分……
同じことばかりが、繰り返し繰り返し頭の中を廻る。
僕が生きている限り、形は変わっても、僕を脅かし続けるどす黒い『なにか』
そうして笑顔の仮面をつけたまま、僕は永遠に逡巡し、帰り道を見失った子供のようにさ迷い続けるのだろう。
千鶴ちゃん……君の隣で。
*
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