私たちの計画

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「すみません……ちょっと休ませてください…」


昼休み、ほうほうの体で保健室にたどり着いた私は、山南先生の返事を聞く前に、ベッドに突進した。


「おや、また例の腹痛ですか?」


先生が立ち上がるのを視界の隅にとらえながら、私はベッドに倒れ込んだ。



「上着くらい脱いだらいかがですか?薬は飲んだのですか?」

「お薬……切らしちゃったんです」


ベッドのそばに歩み寄ってきた山南先生は、枕に突っ伏した私の上体から、器用に制服のブレザーを脱がせてくれた。


「まったく……薬を持ってきますから、体を起こしてください。そんな姿勢では飲めないでしょう?」


私がゆっくりと体を起こす間に、先生は、薬品棚から薬を取り出すと、笑顔を浮かべながら戻ってきた。


「さあ、どうぞ」

「…………なんですか?それ?どう見ても、いつもの痛み止めには見えないのですが……」

「ああ、すみません。私としたことが……」


毒々しい深紅の液体が入った小瓶を差し出した先生は、警戒心を剥き出しにする私に、慌ててそれを引っ込めた。


絶対わざとだ。
私を何の実験台にしたいのやら……。


まあ、そんなことはどうでもいい。
とにかく今は、この苦痛さえ和らげば……



今度こそ本物の鎮痛薬を飲み下し、私は大きく息をついた。


「ありがとうございました、あとは、横になってやり過ごします」

「毎月大変なことですね。こればかりは、代わってあげるという訳にもいきませんし」


ふっと息を吐いて真面目な顔を見せる先生に続いて、私もため息をつく。


「ほんとです……どうして女ばっかりこんな目に…って、嫌にもなりますよ」



妙齢の女性なら、毎月訪れる月のもの。

これに伴う痛みには個人差があるそうで、私は特に重い方なのだ。
ひどい時には寝込んでしまうほど。

だから……憂鬱。



先生は、眉間にしわを寄せている私をいたわるように、頭をそっと撫でた。


「つらいかもしれませんが、立派に子供を産める、成熟した女性である証なのですから、誇りに思っていいんですよ」

「子供、ですか……」


私は、ため息まじりにつぶやいていた。


「そんな先のこと、まだまだ考えられません。目の前のテストやら課題やらで、いっぱいいっぱいです」



山南先生は、ベッド脇の丸椅子に腰かけると、ほんの少し下を向いてしまった眼鏡を、人差し指で押し上げながら言った。


「それほど遠い未来の話ではないと思いますよ?」

「そ……そうでしょうか?」


回らない頭で考えてみれば、確かに、そんな気もしてくる。


「なんでしたら、産まれる子の父親として、私が立候補しましょうか?」

「そうですか………………って、え?えぇっ!!?!」


さらっとさりげなく、何てことをおっしゃるのでしょうね、このお方は!!


「な、なな、何を……」


言葉が続かず、口をパクパクさせることしか出来ない私に、山南先生は、爆弾級の微笑みを向ける。


「もちろん無理強いはしません、君が嫌でなければ、の話です」

「い……いや……」


こんな雑談の中で、なんだか、人生の重要事項について語っている気がするのは、私だけだろうか?


切なげな先生の瞳が、私を射抜く。


「私が嫌なら嫌と、はっきり言ってくれていいですよ」

「いや……じゃ、ありません……」

「ふふ……だと思いました」

「!!?!!」


わかっていて、あんな表情を見せるなんて…山南先生は、見かけによらず、いや、見かけどおりの策士だ。



まっすぐに先生の顔を見ることができず、私は一気に布団の中にもぐりこんだ。


先生の立ち上がる気配が伝わってくる。


「それでは、午後の授業は気にせずゆっくり休んで下さい。原田先生には、私から伝えておきます」

「……お願いします」

「それから……」


思い出したように付け足された言葉は、いかにも保健の先生らしいものだった。


「女性が体を……特に下半身を冷やしてはいけませんよ?いつも思っていましたが、スカート丈が短すぎます」
(山南、心の声:他の男の目に触れる露出は、極力抑えなさい!)


「はい……気を付けます」


薬が効いてきたのか、痛みが弱まり睡魔に襲われた私は、そのまま眠りに落ちた。




夕暮れ時、目を覚ました私は、幸せな気分だった。

耳をすますと、先生が書き物をしているらしい音が聞こえる。

夢の中で、山南先生と、いつか授かるであろう子供との三人で手をつないで歩いていたことは……まだしばらく、先生には内緒にしておこう。

*
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