宴は続く。
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シンとした廊下に放り出された、男子高校生(年齢的にそうでない者も混じっているが)六名。
「あーあ、追い出されちゃった」
沖田がやや残念そうにつぶやけば、天霧が続ける。
「やはり、仕事の邪魔をしてしまったのは申し訳なかったですね」
「いや~……必死で仕事してるやつの横で遊びたおすっていう優越感が、たまんねえんだよな」
そう言って笑う不知火には、土方に対する気遣いなど、微塵も感じられない。
「しっかし、冬休みの学校に遊びに来れるのも、今日が今年最後だし……もうちょい遊びてえよな」
平助の言葉に一同うんうんとうなずき、沖田が口を開く。
「このまま解散ってのもなんだから、続きをしたいけど……廊下は寒いんだよね」
沖田がちらりと風間を見やると、さすが生徒会長殿、わかっているとばかりに大きくうなずく。
「ふっ、仕方がない。犬どもの宴のためとは本意ではないが、我が生徒会室を開放してやろう」
「ちょ……なんだよ、その言い方」
気色ばむ平助を、沖田が「まあまあ」となだめながら、こそりと耳打ちをする。
「生徒会室なら、エアコンつきで快適なんじゃない?ちっちゃいことに目くじらたてるより、使えるものは使った方が得策だと思うけど?」
「けどさ……」
「それとも、なに?平助は、こんな底冷えする廊下で一人寂しく宴会したいわけ?」
「わ……わーったよ!」
「というわけで、会長さん、お願いしまーす♪」
揉み手をする沖田は、どこぞの商人を気取っているかのようだ。
「ふ……一般生徒との交流も、会長として大切な役割。では、行くぞ」
男たちは、ゾロゾロと生徒会室を目指して進んでいった。
買い置きの菓子をつまみながら、人生ゲームやらウノ、果ては麻雀まで、国語科教官室での騒ぎを上回る盛り上がり様。
「天霧、酒だ。酒を持ってこい!」
「しかし、ここにいる面々は未成年ですから、さすがに酒はまずいのではないかと……」
「俺は未成年ではないが?」
「ですが、校内で未成年に酒を供したとあっては、大問題になりかねません」
風間はフンと鼻を鳴らす。
「誰がこいつらに供すると言った?元より、未成年に飲ませる酒など持ち合わせてはいない」
どんちゃん騒ぎの中で、風間と天霧の会話に耳を傾けていた斎藤が、目をキランと光らせてゆらりと立ち上がった。
「風間……法的に許される年齢に達しているとはいえ、校内での飲酒喫煙の類いを黙って見過ごす訳にはいかぬ」
「ほお……面白い」
風間が立ち上がり、斎藤と対峙する。
「一介の風紀委員の身でありながら、生徒会長であるこの俺に指図をする気か?」
二人の周りを、不穏な空気が流れる。
それを、一気に切り裂いたのは……
「はいはい、二人とも、そこまでそこまで~」
「総司!今俺は、風紀委員として大事な話を…」
斎藤の注意が沖田にそれたところで、天霧がヌッと風間の目の前に立ち、炭酸の弾けるグラスを差し出す。
「風間、仮にも校内です。シャンパンの代わりに、ジンジャーエールで我慢してください」
「む……年忘れの宴席に酒がないなど「生徒会室使用禁止の憂き目にあってもいいんですか?」」
にじり寄る天霧に「さあ!」とグラスを突きつけられ、風間はフッと息を吐いた。
「仕方ない、今日のところはそれで我慢してやろう」
*
皆それぞれ、思い思いに食べて騒いで……
「ねえねえ、一君?」
「なんだ?総司」
部屋の隅でちびちびとジンジャーエールを啜る斎藤の隣に、沖田が寄り添う。
「風紀委員だからって、宴会の時にそんな恐い顔してなくたっていいんじゃない?」
「俺は、風紀委員の仕事に誇りを持っている」
「ふーん……なら、実際まだお酒を飲んでもいない会長さんより、もっと先に取り締まらなくちゃいけない人がいるんじゃないの?」
「なんだと?」
小さく首を傾げ、懸命に思案する斎藤。
だがやがて、降参だとばかりに目を伏せてため息をついた。
「すまないが……俺にはわからん。総司、おまえが言っているのは、一体誰のことだ?」
「すっごくわかりやすいと思うんだけど……土方さんだよ」
「なっ!?何を言っている!?土方先生を取り締まる必要など、ある訳がないだろう!」
「もう~、一君こそ何を言ってんのさ?さっきみんなで国語科教官室に行った時に、捕まえちゃうべきだったと思うけど?」
「咎のない人間を捕えるのは、風紀委員の仕事ではない」
「“咎のない人間”?……一君『気付かなかった』とか言わないよね」
「は?」
「“淫行”」
「!!?」
「誰がどう見たって、そういう雰囲気だったでしょ?」
「……あの二人が交際していることは、薄々気づいてはいたが……だがしかし……」
「確かに、一君にとって土方先生は憧れかもしれないけどさ、あの人もただの男だって、いいかげん認めなよ」
沖田が目を細めて斎藤を見やる。
が、斎藤は、どうしても納得がいかないらしい。
「よしんばそうだとしても、土方先生が、教官室でそのような破廉恥な行為をするとは思えないが」
「一君ってば、土方先生のこと買いかぶりすぎなんじゃないの?ああいう人こそ、実はムッツリなんだからね。なんならいっそのこと、あの部屋に隠しカメラでも置いといたら?」
「総司……それは、風紀委員ではなく、警察に取り締まられるべき立派な犯罪だと思うが」
「あはは、細かいことを気にし過ぎるのは、一君の悪い癖だよ?」
笑う沖田と、むむ……と唸る斎藤。
そんな二人の間を割るように、平助が飛び込んできた。
「おまえら、なあに二人だけでコソコソやってんだよ!?」
「平助、やけに嬉しそうじゃない」「コソコソなどしてはおらんが」
「ああ!二人ともこっち来いよ!今さっき届いた料理やら菓子やらが、すっげえ美味いんだって!!」
「へぇ……じゃあ、僕たちもご相伴に与らなくちゃね、一君」
「ああ、なんと言っても年忘れの宴だからな」
「ほら、早く早く!」
平助に促されテーブルにつくと、いつの間に用意されたのか、所狭しと料理が並べられている。
「すげえだろ!さすが生徒会長だよな!」
風間に噛みつかんばかりだった先ほどとはうってかわり、輝くような笑顔でケ○タのチキンを頬張る平助。
「単純な平助がうらやましいよ、ま、せっかくだから僕も頂くけどね」
「ああ、ありがたくいただくとしよう」
早速料理に手を伸ばす沖田と、いただきますと手を合わせる斎藤。
平助が、風間に満面の笑みを向ける。
「会長、おまえってほんとはいいやつだったんだな」
「今さら何を当たり前のことを言っている!?……まあ、全ては、我が嫁を確実に手に入れるための布石に過ぎんがな」
「わりぃ……やっぱ、前言撤回していいか?」
「風間っっ!!」
「なんだ、天霧?騒々しいな」
ひっきりなしに部屋を訪れる宅配業者にバタバタと対応しながら、天霧が悲痛な叫び声を上げる。
「ピザが追加で二十枚、さくら寿司の握り特上が十人前、なっ!?ラーメン、餃子に炒飯、野菜炒め…一体どうするつもりで…………あれ?風間っ!!」
当の風間はといえば、ソファに立ち上がり「来年こそは我が嫁を手に入れ、この学園を卒業するのだ!」と宣言し、「おいおい、まさかジンジャーエールで酔ったのかぁ?」と不知火に呆れられている。
男ばかりの宴会は、こんな調子で、いつまでも賑やかに続きましたとさ。
*
「あーあ、追い出されちゃった」
沖田がやや残念そうにつぶやけば、天霧が続ける。
「やはり、仕事の邪魔をしてしまったのは申し訳なかったですね」
「いや~……必死で仕事してるやつの横で遊びたおすっていう優越感が、たまんねえんだよな」
そう言って笑う不知火には、土方に対する気遣いなど、微塵も感じられない。
「しっかし、冬休みの学校に遊びに来れるのも、今日が今年最後だし……もうちょい遊びてえよな」
平助の言葉に一同うんうんとうなずき、沖田が口を開く。
「このまま解散ってのもなんだから、続きをしたいけど……廊下は寒いんだよね」
沖田がちらりと風間を見やると、さすが生徒会長殿、わかっているとばかりに大きくうなずく。
「ふっ、仕方がない。犬どもの宴のためとは本意ではないが、我が生徒会室を開放してやろう」
「ちょ……なんだよ、その言い方」
気色ばむ平助を、沖田が「まあまあ」となだめながら、こそりと耳打ちをする。
「生徒会室なら、エアコンつきで快適なんじゃない?ちっちゃいことに目くじらたてるより、使えるものは使った方が得策だと思うけど?」
「けどさ……」
「それとも、なに?平助は、こんな底冷えする廊下で一人寂しく宴会したいわけ?」
「わ……わーったよ!」
「というわけで、会長さん、お願いしまーす♪」
揉み手をする沖田は、どこぞの商人を気取っているかのようだ。
「ふ……一般生徒との交流も、会長として大切な役割。では、行くぞ」
男たちは、ゾロゾロと生徒会室を目指して進んでいった。
買い置きの菓子をつまみながら、人生ゲームやらウノ、果ては麻雀まで、国語科教官室での騒ぎを上回る盛り上がり様。
「天霧、酒だ。酒を持ってこい!」
「しかし、ここにいる面々は未成年ですから、さすがに酒はまずいのではないかと……」
「俺は未成年ではないが?」
「ですが、校内で未成年に酒を供したとあっては、大問題になりかねません」
風間はフンと鼻を鳴らす。
「誰がこいつらに供すると言った?元より、未成年に飲ませる酒など持ち合わせてはいない」
どんちゃん騒ぎの中で、風間と天霧の会話に耳を傾けていた斎藤が、目をキランと光らせてゆらりと立ち上がった。
「風間……法的に許される年齢に達しているとはいえ、校内での飲酒喫煙の類いを黙って見過ごす訳にはいかぬ」
「ほお……面白い」
風間が立ち上がり、斎藤と対峙する。
「一介の風紀委員の身でありながら、生徒会長であるこの俺に指図をする気か?」
二人の周りを、不穏な空気が流れる。
それを、一気に切り裂いたのは……
「はいはい、二人とも、そこまでそこまで~」
「総司!今俺は、風紀委員として大事な話を…」
斎藤の注意が沖田にそれたところで、天霧がヌッと風間の目の前に立ち、炭酸の弾けるグラスを差し出す。
「風間、仮にも校内です。シャンパンの代わりに、ジンジャーエールで我慢してください」
「む……年忘れの宴席に酒がないなど「生徒会室使用禁止の憂き目にあってもいいんですか?」」
にじり寄る天霧に「さあ!」とグラスを突きつけられ、風間はフッと息を吐いた。
「仕方ない、今日のところはそれで我慢してやろう」
*
皆それぞれ、思い思いに食べて騒いで……
「ねえねえ、一君?」
「なんだ?総司」
部屋の隅でちびちびとジンジャーエールを啜る斎藤の隣に、沖田が寄り添う。
「風紀委員だからって、宴会の時にそんな恐い顔してなくたっていいんじゃない?」
「俺は、風紀委員の仕事に誇りを持っている」
「ふーん……なら、実際まだお酒を飲んでもいない会長さんより、もっと先に取り締まらなくちゃいけない人がいるんじゃないの?」
「なんだと?」
小さく首を傾げ、懸命に思案する斎藤。
だがやがて、降参だとばかりに目を伏せてため息をついた。
「すまないが……俺にはわからん。総司、おまえが言っているのは、一体誰のことだ?」
「すっごくわかりやすいと思うんだけど……土方さんだよ」
「なっ!?何を言っている!?土方先生を取り締まる必要など、ある訳がないだろう!」
「もう~、一君こそ何を言ってんのさ?さっきみんなで国語科教官室に行った時に、捕まえちゃうべきだったと思うけど?」
「咎のない人間を捕えるのは、風紀委員の仕事ではない」
「“咎のない人間”?……一君『気付かなかった』とか言わないよね」
「は?」
「“淫行”」
「!!?」
「誰がどう見たって、そういう雰囲気だったでしょ?」
「……あの二人が交際していることは、薄々気づいてはいたが……だがしかし……」
「確かに、一君にとって土方先生は憧れかもしれないけどさ、あの人もただの男だって、いいかげん認めなよ」
沖田が目を細めて斎藤を見やる。
が、斎藤は、どうしても納得がいかないらしい。
「よしんばそうだとしても、土方先生が、教官室でそのような破廉恥な行為をするとは思えないが」
「一君ってば、土方先生のこと買いかぶりすぎなんじゃないの?ああいう人こそ、実はムッツリなんだからね。なんならいっそのこと、あの部屋に隠しカメラでも置いといたら?」
「総司……それは、風紀委員ではなく、警察に取り締まられるべき立派な犯罪だと思うが」
「あはは、細かいことを気にし過ぎるのは、一君の悪い癖だよ?」
笑う沖田と、むむ……と唸る斎藤。
そんな二人の間を割るように、平助が飛び込んできた。
「おまえら、なあに二人だけでコソコソやってんだよ!?」
「平助、やけに嬉しそうじゃない」「コソコソなどしてはおらんが」
「ああ!二人ともこっち来いよ!今さっき届いた料理やら菓子やらが、すっげえ美味いんだって!!」
「へぇ……じゃあ、僕たちもご相伴に与らなくちゃね、一君」
「ああ、なんと言っても年忘れの宴だからな」
「ほら、早く早く!」
平助に促されテーブルにつくと、いつの間に用意されたのか、所狭しと料理が並べられている。
「すげえだろ!さすが生徒会長だよな!」
風間に噛みつかんばかりだった先ほどとはうってかわり、輝くような笑顔でケ○タのチキンを頬張る平助。
「単純な平助がうらやましいよ、ま、せっかくだから僕も頂くけどね」
「ああ、ありがたくいただくとしよう」
早速料理に手を伸ばす沖田と、いただきますと手を合わせる斎藤。
平助が、風間に満面の笑みを向ける。
「会長、おまえってほんとはいいやつだったんだな」
「今さら何を当たり前のことを言っている!?……まあ、全ては、我が嫁を確実に手に入れるための布石に過ぎんがな」
「わりぃ……やっぱ、前言撤回していいか?」
「風間っっ!!」
「なんだ、天霧?騒々しいな」
ひっきりなしに部屋を訪れる宅配業者にバタバタと対応しながら、天霧が悲痛な叫び声を上げる。
「ピザが追加で二十枚、さくら寿司の握り特上が十人前、なっ!?ラーメン、餃子に炒飯、野菜炒め…一体どうするつもりで…………あれ?風間っ!!」
当の風間はといえば、ソファに立ち上がり「来年こそは我が嫁を手に入れ、この学園を卒業するのだ!」と宣言し、「おいおい、まさかジンジャーエールで酔ったのかぁ?」と不知火に呆れられている。
男ばかりの宴会は、こんな調子で、いつまでも賑やかに続きましたとさ。
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