泣きたいくらいに
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観光スポットとしてはもちろん、デートにも人気のイルミネーションガーデン。
今にも小雪がちらついてきそうな極寒の晩、私は原田先生と手を繋いでそこを歩いていた。
「寒さが厳しいし、夜の外出になっちまうが…」と原田先生から打診された時、私は二つ返事でこの話に飛びついた。
だって、やっと想いがかなったとはいえ、先生と生徒という立場上、人目につく場所への外出はさすがにはばかられて、お出かけデートもままならない日々。
そこに降ってわいたようなお誘い……!
万が一誰かに見られても、夜なら私たちだってばれにくいだろうし、車でなければ行けないロケーションならば、薄桜学園の生徒に遭遇する確率は、格段に低い。
そんな訳で、久しぶりのデートらしいデートに、私はウキウキと胸を躍らせていた……
頬を刺す風さえ、演出効果のひとつに思えてしまうほどの幻想的な世界。
色とりどりのイルミネーションが、音楽に合わせて点滅したり鮮やかに色を変えたり、その度に人々の歓声があがり、ため息がもれる。
原田先生と私も、周りの家族連れや恋人たちのように、華やかな光と音楽のファンタジーを存分に楽しんでいた。
「千鶴、段差があるから気を付けろよ」
「はい……きゃあっ」
返事をしたまさにその時、私の右足は、小さな段差にヒールをとられた。
「っつ……」
右側を歩いていた原田先生の方に倒れ込み、支えてもらって事なきを得たものの、この痛み方からすると、どうやら足を挫いてしまったらしい。
「大丈夫か!?どれ、見せてみろ」
原田先生が屈み込むと、支えを失ってバランスを崩した私はよろけてしまい、慌てた先生が立ち上がって私の肩を抱く。
「こりゃ、これ以上歩くのは無理だな」
うーん、と考えこむ仕草をする原田先生に、私はうなだれた。
「これじゃ、ずいぶん歩きづらかっただろ?」
今日私は、いつもは履かない、ヒールが高めの靴を履いてきていた。
「原田先生の隣にいても恥ずかしくないように……ちょっとでも大人っぽく見える靴を履きたかったんです」
そう言って俯く私の顔を覗きこみながら、原田先生は、頭をポンと軽くなでる。
「背伸びする必要なんざ、ねぇんだぜ?千鶴は千鶴。俺にとって、そのままのおまえが誰より大切なんだからな」
「……ごめんなさい」
「なぁに謝ってんだよ?俺のためにって洒落てきてくれたのに、こんな痛い思いさせちまって……謝るなら俺の方だろ?」
「そ……そんなことありません!」
「だったら、水臭えことはお互い言いっこなしだ」
「はい!」
「……けど、嬉しいぜ。そうやって、家にいても俺を思ってくれてたってことだろ?」
そう言いながら原田先生は、私に背を向けてしゃがみこんだ。
「ほら、行くぞ」
いつだって遠くから見つめるだけだった背中が、今目の前にある。
いつも探していたのは原田先生の背中だけれど、今私に向けられているのは、左之助さんの大きい背中。
同じ背中なのに、こんなにも距離が縮まったことに、改めて気付く。
泣きたくなってしまうくらいに、彼のことがいとおしい。
原田先生におぶさり、遠慮がちにしがみつく。
「ちゃんとつかまってろよ?」
先生の言葉に小さくうなずき、彼の首に回した腕にほんの少し力を入れる。
「原……ううん、左之助さん?」
「ん?どうした?」
「左之助さん……好きです、大好きです」
「俺もだ……愛してるぜ、千鶴」
背中越しの言葉に、胸の中が熱い想いでいっぱいになる。
「ちゃんとイルミネーション見えてるか?」
「はい、とっても綺麗です」
涙でにじんでいることは、先生には内緒。
「密着してくれるのは俺としちゃあ嬉しいんだがな、せっかくだから、よく見とけよ?」
「はい、もちろんです!」
大好きな人の背中で、彼の体温を感じながら見るイルミネーション。
冬が巡ってくる度、きっと私は、今日のことを思い出すんだろうな……
そう思いながら、心の奥のアルバムに、目に映る景色をしっかりと焼き付けた。
*
今にも小雪がちらついてきそうな極寒の晩、私は原田先生と手を繋いでそこを歩いていた。
「寒さが厳しいし、夜の外出になっちまうが…」と原田先生から打診された時、私は二つ返事でこの話に飛びついた。
だって、やっと想いがかなったとはいえ、先生と生徒という立場上、人目につく場所への外出はさすがにはばかられて、お出かけデートもままならない日々。
そこに降ってわいたようなお誘い……!
万が一誰かに見られても、夜なら私たちだってばれにくいだろうし、車でなければ行けないロケーションならば、薄桜学園の生徒に遭遇する確率は、格段に低い。
そんな訳で、久しぶりのデートらしいデートに、私はウキウキと胸を躍らせていた……
頬を刺す風さえ、演出効果のひとつに思えてしまうほどの幻想的な世界。
色とりどりのイルミネーションが、音楽に合わせて点滅したり鮮やかに色を変えたり、その度に人々の歓声があがり、ため息がもれる。
原田先生と私も、周りの家族連れや恋人たちのように、華やかな光と音楽のファンタジーを存分に楽しんでいた。
「千鶴、段差があるから気を付けろよ」
「はい……きゃあっ」
返事をしたまさにその時、私の右足は、小さな段差にヒールをとられた。
「っつ……」
右側を歩いていた原田先生の方に倒れ込み、支えてもらって事なきを得たものの、この痛み方からすると、どうやら足を挫いてしまったらしい。
「大丈夫か!?どれ、見せてみろ」
原田先生が屈み込むと、支えを失ってバランスを崩した私はよろけてしまい、慌てた先生が立ち上がって私の肩を抱く。
「こりゃ、これ以上歩くのは無理だな」
うーん、と考えこむ仕草をする原田先生に、私はうなだれた。
「これじゃ、ずいぶん歩きづらかっただろ?」
今日私は、いつもは履かない、ヒールが高めの靴を履いてきていた。
「原田先生の隣にいても恥ずかしくないように……ちょっとでも大人っぽく見える靴を履きたかったんです」
そう言って俯く私の顔を覗きこみながら、原田先生は、頭をポンと軽くなでる。
「背伸びする必要なんざ、ねぇんだぜ?千鶴は千鶴。俺にとって、そのままのおまえが誰より大切なんだからな」
「……ごめんなさい」
「なぁに謝ってんだよ?俺のためにって洒落てきてくれたのに、こんな痛い思いさせちまって……謝るなら俺の方だろ?」
「そ……そんなことありません!」
「だったら、水臭えことはお互い言いっこなしだ」
「はい!」
「……けど、嬉しいぜ。そうやって、家にいても俺を思ってくれてたってことだろ?」
そう言いながら原田先生は、私に背を向けてしゃがみこんだ。
「ほら、行くぞ」
いつだって遠くから見つめるだけだった背中が、今目の前にある。
いつも探していたのは原田先生の背中だけれど、今私に向けられているのは、左之助さんの大きい背中。
同じ背中なのに、こんなにも距離が縮まったことに、改めて気付く。
泣きたくなってしまうくらいに、彼のことがいとおしい。
原田先生におぶさり、遠慮がちにしがみつく。
「ちゃんとつかまってろよ?」
先生の言葉に小さくうなずき、彼の首に回した腕にほんの少し力を入れる。
「原……ううん、左之助さん?」
「ん?どうした?」
「左之助さん……好きです、大好きです」
「俺もだ……愛してるぜ、千鶴」
背中越しの言葉に、胸の中が熱い想いでいっぱいになる。
「ちゃんとイルミネーション見えてるか?」
「はい、とっても綺麗です」
涙でにじんでいることは、先生には内緒。
「密着してくれるのは俺としちゃあ嬉しいんだがな、せっかくだから、よく見とけよ?」
「はい、もちろんです!」
大好きな人の背中で、彼の体温を感じながら見るイルミネーション。
冬が巡ってくる度、きっと私は、今日のことを思い出すんだろうな……
そう思いながら、心の奥のアルバムに、目に映る景色をしっかりと焼き付けた。
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