約束~as time goes by~
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「ありがとうな、##NAME1##ちゃん。約束だ…##NAME1##ちゃんを、世界の誰よりも幸せにする」
小指を差し出す新八に、思わず笑いが込み上げてきた。
「ふふふ、新八ってば子供みたい」
「へん!なんてったって俺は、永遠の少年だからな」
軽口を叩き合う、いつもの私たちに戻る。
「あはは、それじゃあ私は永遠の美少女でいなくちゃね」
「おう、永遠の美男美女ってとこだな」
カラカラと笑う新八の小指に、そっと自分の指をからめた。
彼の眼差しが再び真剣なものに変わった途端、静寂が私たちを包む。
「新八、約束して……どれだけ時が過ぎても、ずっとそばにいてくれるって…」
つないだ小指に力がこめられたのと同時に、新八が大きくうなずく。
「ああ、合点承知だ!病める時も健やかなる時も、子供が生まれて年くって、縁側で二人で茶ぁ飲んで過ごすようになっても…絶対ぇ##NAME1##ちゃんを離すもんか」
「ふふふ、約束だよ?」
「ああ、指きりげんまん、嘘ついたら…っと…嘘はつかねえけどよ」
ニカッと笑いながら、結んだ手をぶんぶんと上下に振る新八。
「ちょっ…痛いってば」
「はは、悪ぃ悪ぃ」
パッと手をほどかれた、と思った途端、私は新八の腕の中にいた。
「まずは来年の祭りを成功させような…っと言いてえところだが、もしかしたら##NAME1##ちゃんは出らんねぇかもしれないな」
「え?なんで??」
「あ~…だからつまり…」
ちょっぴり照れた様子でガリガリと頭をかいた後に、再びお日様のような笑顔で新八は言った。
「だってよ、##NAME1##ちゃん、赤ん坊の世話でてんてこ舞いかもしれねえぜ?」
「……新八の中では、そういう計画になってるわけ?」
「なんつうかさ…左之の野郎がうらやましくなっちまったっつうかなんつうか…」
茂くんを挟んで原田さんと談笑している時なんかに、こちらを見ている新八の視線が、奥歯にものがはさまったような、複雑な雰囲気だったことを思い出した。
「そっか…ふふ、了解。なんだか、トントン拍子に話が進んじゃったけど…。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
ペコリと下げた私の頭をワシャワシャと撫でながら「こっちこそ、末永くよろしく頼むぜ」と新八は笑った。
それからほどなく、私たちはそれぞれの実家を出てアパートを借り、二人で暮らし始めた。
籍とか式とかよりも、まずは一緒に生活することが共通の望みだったから。
そして、初雪が舞う頃。
妊娠がわかったのを機に、私たちは晴れて正式な夫婦になった。
夏には、私もお母さんかあ…
確かに、新八の予想どおり、お祭りの頃には、てんてこまいかもしれない。
それから、新八がお父さん!
なんだか、大きい子供が二人って感じ?
*
その年の暮れ。
祭青年が公民館に集まっての忘年会の席で、皆さんが私たちの結婚を祝ってくれた。
アルコールを遠慮させてもらう私の分まで、新八がお祝いの盃を一手に受けている。
私は、原田さんの隣でウーロン茶を飲みながら、お寿司やオードブルをつまんでいた。
「新婚生活はどうだ?」
ビールから、早くも日本酒に切り替えた原田さんの問いに、私はちょっと考えてから答えた。
「……なんといいますか…新しい発見がいっぱいです」
「新しい発見、か。…いかにも新婚ぽいな」
彼は目を細めて微かな笑みを浮かべながら、私の次の言葉を待つように口をつぐむ。
「新八のことは、大体わかってるつもりでいたんですけど…知らなかったことも沢山だったんだなって、改めて思ってます」
「仲のいい友達が恋仲に変わって、それから夫婦になって家族になって…まあ、いろんな面が見えてくるよな」
「お互い様なんだろうなって思ってたんですけど、どうも新八を見てると、そうでもないような…妙に順応してるっていうのか……」
ふうむ、と首をかしげる私をちらっと見てから、原田さんはククッと笑いをもらした。
「なんせ新八のことだからなあ…何でもかんでも、『元々そうだった』ってふうに受け入れちまうんだろうな」
「あ」
私ははたと膝を打った。
「そういえば、おなかに赤ちゃんがいるって、わかってはいるんですけど、まだまだ実感がわかないんですよね、私。けど、新八ってば、もうすっかりパパ気取りで…」
眉を下げて笑った私に、原田さんは「あいつらしいな」とうなずいた。
当の新八を目で探せば、晴れやかな笑顔で一升瓶を抱えている。
「新八はきっと、いい父親になると思うぜ」
ほんのり頬を染めたほろ酔いの原田さんは、公民館備え付けの湯飲みに注いだお酒の水面を眺めながら、そう言った。
「まあ、なんか困ったことがあったら、うちのやつに何でも相談してやってくれ。ずいぶんはりきってたからな、『私がママ友第一号になる!』とか言って」
可笑しそうに笑う原田さんからは、奥様である、まささんへの愛情がにじみ出ている。
いつだって笑みを絶やさない、素敵な女性であり素敵なお母さんである、まささんの優しい眼差しを思い出しながら、私は言う。
「うちの親、第二の人生を楽しむんだって旅行ざんまいで、あんまり当てに出来ないんですよ。だから…まささんには、いろいろお世話になったりご迷惑おかけしちゃうことになるかと思います。どうぞ、よろしくお願いします」
深々と頭を下げれば、原田さんはポンと私の頭に手を置いた。
「こっちこそ、永倉夫妻にはいつも元気と癒しをもらってるからな。家族そろってよろしく頼む。……うちもそろそろ二人目がほしいしな」
穏やかに語る原田さんは、本当に幸せそうで…
原田さん、まささんと茂くん、そして未来の茂くんの弟妹さん、あたたかな家庭が目に浮かぶ。
新八と私も、そんな家庭を築いていけたらいいな…ううん、築いていくんだ。
「ぅおいっ!なあに二人で仲良く話してんだ!?」
「おう、新郎様の登場だ」
目の据わりかけてる新八が、原田さんと私の間に割り込むようにドッカリとあぐらをかいた。
「左之。まぁ飲んでくれよ」
「ああ、ありがたくいただくとするか」
既に微調整がきかなくなっているのか、新八の注ぐお酒は、原田さんの湯飲みから溢れ出す。
慌てて口を近付けてそれを啜ってから、原田さんはニヤリと笑った。
「おい新八。そんなに飲んで大丈夫なのか?…と言ってやりてえ所だが、おまえにも飲んでもらわなくちゃ駄目だよなあ?」
彼は新八から瓶を奪い取ると、それを宙にさ迷わせた。
「……と、あれ?おまえの湯飲みは?」
「んあ?ああ…俺はな、そのまんまでいいんだよ」
「そのまんま??……っ!?おいっ、新八!やめろっ!!」
原田さんの手から再び酒瓶を奪い返した新八は、一升瓶をラッパ飲みした…つもりが、酔いが回りすぎていたのか手元が狂い、顔面からお酒をかぶった。
「うわっ!馬鹿かっ!?おまえってやつぁ!!!」
「新八ってば!何やってんのよおおーーっ!?!」
…原田さん、皆さん、本当にごめんなさい~。
こんな人騒がせな私たち夫婦だが、原田さんの言葉のとおり、時が経つにつれ夫婦から家族に変わってきたように感じる。
大きくなってきたお腹の中の『新しい家族』に、朝に晩に話しかける新八。
心の底から嬉しそうな彼に、こちらまで笑顔になりながら、毎日私は幸せを噛みしめている。
*
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