Sweet Home
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親しい皆に祝福された心あたたまる結婚式、そしてハネムーン。
まるで夢の中にいるかのような日々があっという間に過ぎ、原田と景子が日常の生活に戻ってから一週間ほどが経った。
新居であるマンションの周りは、二人にとって未知の土地。
探索も兼ねて、徒歩で近くのスーパーマーケットに出かけた帰り道、西に傾き始めた太陽を見上げながら、景子が足を止めた。
「どうかしたか?」
原田が、不思議そうに振り返る。
空から原田に視線を移した景子は、感慨深げに微笑んだ。
「今までは、いつかどこかのタイミングで、さよならしなくちゃいけなかったですけど……これからはずっと、同じ場所にいられるんですよね」
微笑みを返しながら、原田は大きくうなずく。
「ああ、そうだな。今度はいつ会えるか?なんて約束、もうする必要ねえ。俺が帰る場所が、景子……おまえの帰る場所でもあるんだからな」
「はいっ!」
辺りの風景や、吹く風の心地よさを楽しみながら、二人は、ゆっくりと家路をたどった。
真新しい家具や家電に囲まれ、食卓に向かい合う。
ほんの少し頬を赤く染めた、ほろ酔いの原田が、急にしんみりとした口調になった。
「景子……ありがとうな」
「え?」
突然の言葉に、景子が首をかしげる。
原田は、「酔っ払ってる訳じゃないからな」と言いながら続ける。
「心から惚れた女と所帯を持てて……こんな幸せを俺にくれたおまえには、いくら感謝しても足りねえくらいだ」
「そんな……お礼を言わなきゃいけないのは私の方です」
箸を置き両手を膝の上で握りしめると、景子は、まっすぐ原田を見つめた。
「私こそ……私だって、こんなにも幸せです。原田さんのおかげです」
テーブル越しに、景子の頭を撫でた原田は、交わった視線を、やわらかな、しかし強さをはらんだ眼差しに変える。
「結婚式で誓ったとおりだ。俺は、この魂が存在する限り……たとえ命が終わっちまっても、また生まれ変わっても、ずっと……景子、おまえだけを愛してる」
「原田さん……」
「左之助、だろ」
「あ、はい!左之助さん……です」
テーブルの上に下ろされた原田の右手を、景子は両手で包む。
「私だって、この体がなくなっても、何度生まれ変わっても……絶対にあなたの隣にいます」
はにかみながらも、真剣な瞳で言葉を紡ぐ景子をいとおしそうに見つめていた原田が、のんびりとした口調で言う。
「ん~……なんだか、結婚式の続きみてぇになっちまったな」
「ふふ、本当ですね」
景子は、チャペルでの誓いの言葉を思い出したのか、照れくさそうに俯く。
「んじゃ……俺たちを巡り合わせてくれた運命に感謝して、乾杯といくか」
「左之助さん、もうけっこう飲んだんじゃありませんか?」
ご機嫌な原田に、景子が釘をさす。
「堅ぇこと言うなって。ほれ、景子もどうだ?」
原田が、日本酒の瓶を、景子の前に差し出した。
「あの……私、お酒はやめたんです」
「は?」
付き合っていた頃には、よく二人で飲みに出かけたものだ。
景子は決して弱い方ではなく、むしろ、飲み会となれば喜んで参加するほど、酒――ことに日本酒が好きだった。
「やめたって、そりゃまたなんで……!!もしかして――」
禁酒の理由に思い当たり、身を乗り出す原田に、景子は、慌てて首を左右に振ってみせた。
「違います、さすがにまだです。でも……いつ子供を授かってもいいように、アルコールは控えようって決めたんです」
「そうか……そうだな。晴れて夫婦になったんだ。いつ、家族が増えたって不思議はねぇよな」
俺が二人分乾杯しとくぜ…そう言いながら、原田は注いだ酒を一気に飲み干すと、大きく息を吐き、ガラスのぐい飲みをトン、と置いた。
「よし。俺も、しばらく酒は我慢する」
「え、そんなこと……お仕事の後の晩酌は、あった方がいいんじゃありませんか?」
「ん~まあ、それもそうだが……」
原田の酒好きを知る景子としては、自分に付き合わせて、一日の締めくくりの晩酌を我慢させるのは忍びない。
「お気遣いありがとうございます、私なら大丈夫です。左之助さんが、美味しくお酒を飲んで、疲れを癒してくださる方が、私としては嬉しいんです」
「景子……」
まじまじと自分を見つめる夫に、景子はニッコリと微笑んだ。
「ひとつワガママを言わせてください。外で飲むより、我が家で……私のそばにいてくださいね」
たまには、外でのお付き合いも大切ですけどね……
そう続ける景子に、原田が微笑みを返す。
「ああ。そうと決まったら、早く赤ん坊を授かるように、今晩から頑張らないとな」
「左之助さん!?」
食卓が、朗らかな笑い声に包まれる。
新しい命が誕生して、この部屋がさらに賑かになるのも、きっと、そう遠い未来ではないだろう。
*
まるで夢の中にいるかのような日々があっという間に過ぎ、原田と景子が日常の生活に戻ってから一週間ほどが経った。
新居であるマンションの周りは、二人にとって未知の土地。
探索も兼ねて、徒歩で近くのスーパーマーケットに出かけた帰り道、西に傾き始めた太陽を見上げながら、景子が足を止めた。
「どうかしたか?」
原田が、不思議そうに振り返る。
空から原田に視線を移した景子は、感慨深げに微笑んだ。
「今までは、いつかどこかのタイミングで、さよならしなくちゃいけなかったですけど……これからはずっと、同じ場所にいられるんですよね」
微笑みを返しながら、原田は大きくうなずく。
「ああ、そうだな。今度はいつ会えるか?なんて約束、もうする必要ねえ。俺が帰る場所が、景子……おまえの帰る場所でもあるんだからな」
「はいっ!」
辺りの風景や、吹く風の心地よさを楽しみながら、二人は、ゆっくりと家路をたどった。
真新しい家具や家電に囲まれ、食卓に向かい合う。
ほんの少し頬を赤く染めた、ほろ酔いの原田が、急にしんみりとした口調になった。
「景子……ありがとうな」
「え?」
突然の言葉に、景子が首をかしげる。
原田は、「酔っ払ってる訳じゃないからな」と言いながら続ける。
「心から惚れた女と所帯を持てて……こんな幸せを俺にくれたおまえには、いくら感謝しても足りねえくらいだ」
「そんな……お礼を言わなきゃいけないのは私の方です」
箸を置き両手を膝の上で握りしめると、景子は、まっすぐ原田を見つめた。
「私こそ……私だって、こんなにも幸せです。原田さんのおかげです」
テーブル越しに、景子の頭を撫でた原田は、交わった視線を、やわらかな、しかし強さをはらんだ眼差しに変える。
「結婚式で誓ったとおりだ。俺は、この魂が存在する限り……たとえ命が終わっちまっても、また生まれ変わっても、ずっと……景子、おまえだけを愛してる」
「原田さん……」
「左之助、だろ」
「あ、はい!左之助さん……です」
テーブルの上に下ろされた原田の右手を、景子は両手で包む。
「私だって、この体がなくなっても、何度生まれ変わっても……絶対にあなたの隣にいます」
はにかみながらも、真剣な瞳で言葉を紡ぐ景子をいとおしそうに見つめていた原田が、のんびりとした口調で言う。
「ん~……なんだか、結婚式の続きみてぇになっちまったな」
「ふふ、本当ですね」
景子は、チャペルでの誓いの言葉を思い出したのか、照れくさそうに俯く。
「んじゃ……俺たちを巡り合わせてくれた運命に感謝して、乾杯といくか」
「左之助さん、もうけっこう飲んだんじゃありませんか?」
ご機嫌な原田に、景子が釘をさす。
「堅ぇこと言うなって。ほれ、景子もどうだ?」
原田が、日本酒の瓶を、景子の前に差し出した。
「あの……私、お酒はやめたんです」
「は?」
付き合っていた頃には、よく二人で飲みに出かけたものだ。
景子は決して弱い方ではなく、むしろ、飲み会となれば喜んで参加するほど、酒――ことに日本酒が好きだった。
「やめたって、そりゃまたなんで……!!もしかして――」
禁酒の理由に思い当たり、身を乗り出す原田に、景子は、慌てて首を左右に振ってみせた。
「違います、さすがにまだです。でも……いつ子供を授かってもいいように、アルコールは控えようって決めたんです」
「そうか……そうだな。晴れて夫婦になったんだ。いつ、家族が増えたって不思議はねぇよな」
俺が二人分乾杯しとくぜ…そう言いながら、原田は注いだ酒を一気に飲み干すと、大きく息を吐き、ガラスのぐい飲みをトン、と置いた。
「よし。俺も、しばらく酒は我慢する」
「え、そんなこと……お仕事の後の晩酌は、あった方がいいんじゃありませんか?」
「ん~まあ、それもそうだが……」
原田の酒好きを知る景子としては、自分に付き合わせて、一日の締めくくりの晩酌を我慢させるのは忍びない。
「お気遣いありがとうございます、私なら大丈夫です。左之助さんが、美味しくお酒を飲んで、疲れを癒してくださる方が、私としては嬉しいんです」
「景子……」
まじまじと自分を見つめる夫に、景子はニッコリと微笑んだ。
「ひとつワガママを言わせてください。外で飲むより、我が家で……私のそばにいてくださいね」
たまには、外でのお付き合いも大切ですけどね……
そう続ける景子に、原田が微笑みを返す。
「ああ。そうと決まったら、早く赤ん坊を授かるように、今晩から頑張らないとな」
「左之助さん!?」
食卓が、朗らかな笑い声に包まれる。
新しい命が誕生して、この部屋がさらに賑かになるのも、きっと、そう遠い未来ではないだろう。
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