どんな君も
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穏やかに晴れた、日曜の朝。
珍しく朝寝を決め込んでいた山崎は、自身に注がれる視線を感じて目を覚ました。
「西川君……あ、いや、由希子。どうかしたのか?」
床に膝立ちになり、ベッドに両肘をついて夫の寝顔を覗き込んでいた由希子は、突然かけられた声に吃驚した。
「わわっ……ごめんなさい、すごく熟睡なさってるから、たまには寝顔を見ていたいなあ、なんて……あわわわ」
床にペタリと座り込んだ由希子は、『口が滑った!』とばかりにつぐんだ唇を両手で覆う。
小動物のようにキョトキョトと視線をさ迷わせる彼女の微笑ましさに、山崎はクスリと笑いをこぼした。
ゆっくり体を起こしながら、彼は慈しむような眼差しを、新妻である由希子に向ける。
「由希子……結婚しても、君はちっとも変わらないな」
山崎の言葉の意味を尋ねようとしたのか、口を半分開きかけた由希子だったが、すぐにしょんぼりとうつむいた。
「ごめんなさい……私ったら、妻として全然進歩してないですよね」
眉を下げて力なく笑う彼女の両肩を、にわかに真剣な表情に変わった山崎がつかんだ。
「いや、違う!そうじゃない……そういう意味ではなくてっ」
「烝さん……?」
ベッドから半身を乗り出すように、愛しい妻を見つめ頬を紅潮させる夫は、伝えるべき言葉を、懸命に頭の中でまとめているのに違いない。
彼のそんな生真面目さを、出会った頃には“恐い人”だと感じていたっけ――
ふと思い出した山崎の第一印象に、由希子の口元がゆるむ。
それを見られまいとするように、彼女は山崎の肩に額をつけた。
その背中に腕を回し抱き寄せると、山崎は由希子の髪に唇を寄せた。
「変わる必要はない。君はいつも……今までも、これから先もずっと、俺が心奪われた由希子のままでいるのだろうな、と……そう思ったんだ」
山崎の胸に手を当ててほんの少し体を離し、顔を上げた由希子は、ふんわりと微笑んだ。
「ありがとうございます……烝さんもきっと、変わらないと思います。父親になっても、おじいちゃんになっても、あなたはずっと、大好きで大切な旦那様です……わっ!」
再び由希子をグイと引き寄せ、彼女の頭を抱え込むように自らの胸に押し当てた山崎は、呟くように言葉をもらした。
「俺は……君にとって、良い夫になれているのだろうか?」
「ふふ、その答はきっと、私が烝さんにとって良い妻になれているかどうか……という質問と、同じだと思います」
由希子は両腕を山崎の背中に回すと、パジャマ越しに体温を感じとるように、彼の胸に顔をうずめ直した。
「由希子」
「はい、何でしょうか……きゃっ!?」
由希子をギュッと抱きしめた山崎は、そのままベッドに倒れ込んだ。
優しく背中をさすっていた手は、やがて由希子が着ているニットの中に入り素肌に触れる。
その手の温かさを心地よいと感じながら、由希子はちょっぴり戸惑う。
「あ、あの……朝ご飯が、冷めてしまいますよ」
「……そうだな、しかし今は……」
向かい合う格好で横たわったまま、山崎は、由希子の頬に手を添えて瞳を合わせた。
「君の作ってくれた朝飯も大切だが、それよりも今は、由希子……君を食べたい気分だ」
由希子は、一瞬驚いた顔を見せてから、クスッと笑った。
「なんだか意外な台詞です。烝さんらしくないといいますか……」
「惚れた相手の前では、俺もただの男……といった所か」
自嘲気味に苦笑いを浮かべた山崎は、ほんの少し目を伏せて続けた。
「“俺らしくない”俺には、幻滅するか?」
「そんなこと!」
首を左右に振ってから、由希子は山崎の頬をそっと撫でた。
「私だって、朝ご飯よりも、烝さんとこうして触れ合っていたいです。……こんなふうに思う私は、私らしくないでしょうか?」
「いや……君らしいとか、そうでない、とかは関係ない。どんな君もすべて、俺の愛する由希子に決まっている」
「…………」
「………………」
ふと訪れた静寂に、二人顔を見合わると同時に吹き出した。
「西川く……いや、由希子。……すまない、名字で呼ぶ癖がなかなか抜けないな……っっ!」
バツが悪そうに目をそらす山崎の頬に、由希子は触れるだけのキスをすると、はにかむような笑顔をみせた。
「山崎さん……烝さん、大好きです」
「ああ。俺も、由希子のことを愛している」
二人の身につけていた衣類が、ベッドの下に放り出され重なっていく。
電気ポットの湯沸かし音だけが聞こえるキッチンでは、用意された朝ご飯が美味しそうな匂いを漂わせていた。
*
珍しく朝寝を決め込んでいた山崎は、自身に注がれる視線を感じて目を覚ました。
「西川君……あ、いや、由希子。どうかしたのか?」
床に膝立ちになり、ベッドに両肘をついて夫の寝顔を覗き込んでいた由希子は、突然かけられた声に吃驚した。
「わわっ……ごめんなさい、すごく熟睡なさってるから、たまには寝顔を見ていたいなあ、なんて……あわわわ」
床にペタリと座り込んだ由希子は、『口が滑った!』とばかりにつぐんだ唇を両手で覆う。
小動物のようにキョトキョトと視線をさ迷わせる彼女の微笑ましさに、山崎はクスリと笑いをこぼした。
ゆっくり体を起こしながら、彼は慈しむような眼差しを、新妻である由希子に向ける。
「由希子……結婚しても、君はちっとも変わらないな」
山崎の言葉の意味を尋ねようとしたのか、口を半分開きかけた由希子だったが、すぐにしょんぼりとうつむいた。
「ごめんなさい……私ったら、妻として全然進歩してないですよね」
眉を下げて力なく笑う彼女の両肩を、にわかに真剣な表情に変わった山崎がつかんだ。
「いや、違う!そうじゃない……そういう意味ではなくてっ」
「烝さん……?」
ベッドから半身を乗り出すように、愛しい妻を見つめ頬を紅潮させる夫は、伝えるべき言葉を、懸命に頭の中でまとめているのに違いない。
彼のそんな生真面目さを、出会った頃には“恐い人”だと感じていたっけ――
ふと思い出した山崎の第一印象に、由希子の口元がゆるむ。
それを見られまいとするように、彼女は山崎の肩に額をつけた。
その背中に腕を回し抱き寄せると、山崎は由希子の髪に唇を寄せた。
「変わる必要はない。君はいつも……今までも、これから先もずっと、俺が心奪われた由希子のままでいるのだろうな、と……そう思ったんだ」
山崎の胸に手を当ててほんの少し体を離し、顔を上げた由希子は、ふんわりと微笑んだ。
「ありがとうございます……烝さんもきっと、変わらないと思います。父親になっても、おじいちゃんになっても、あなたはずっと、大好きで大切な旦那様です……わっ!」
再び由希子をグイと引き寄せ、彼女の頭を抱え込むように自らの胸に押し当てた山崎は、呟くように言葉をもらした。
「俺は……君にとって、良い夫になれているのだろうか?」
「ふふ、その答はきっと、私が烝さんにとって良い妻になれているかどうか……という質問と、同じだと思います」
由希子は両腕を山崎の背中に回すと、パジャマ越しに体温を感じとるように、彼の胸に顔をうずめ直した。
「由希子」
「はい、何でしょうか……きゃっ!?」
由希子をギュッと抱きしめた山崎は、そのままベッドに倒れ込んだ。
優しく背中をさすっていた手は、やがて由希子が着ているニットの中に入り素肌に触れる。
その手の温かさを心地よいと感じながら、由希子はちょっぴり戸惑う。
「あ、あの……朝ご飯が、冷めてしまいますよ」
「……そうだな、しかし今は……」
向かい合う格好で横たわったまま、山崎は、由希子の頬に手を添えて瞳を合わせた。
「君の作ってくれた朝飯も大切だが、それよりも今は、由希子……君を食べたい気分だ」
由希子は、一瞬驚いた顔を見せてから、クスッと笑った。
「なんだか意外な台詞です。烝さんらしくないといいますか……」
「惚れた相手の前では、俺もただの男……といった所か」
自嘲気味に苦笑いを浮かべた山崎は、ほんの少し目を伏せて続けた。
「“俺らしくない”俺には、幻滅するか?」
「そんなこと!」
首を左右に振ってから、由希子は山崎の頬をそっと撫でた。
「私だって、朝ご飯よりも、烝さんとこうして触れ合っていたいです。……こんなふうに思う私は、私らしくないでしょうか?」
「いや……君らしいとか、そうでない、とかは関係ない。どんな君もすべて、俺の愛する由希子に決まっている」
「…………」
「………………」
ふと訪れた静寂に、二人顔を見合わると同時に吹き出した。
「西川く……いや、由希子。……すまない、名字で呼ぶ癖がなかなか抜けないな……っっ!」
バツが悪そうに目をそらす山崎の頬に、由希子は触れるだけのキスをすると、はにかむような笑顔をみせた。
「山崎さん……烝さん、大好きです」
「ああ。俺も、由希子のことを愛している」
二人の身につけていた衣類が、ベッドの下に放り出され重なっていく。
電気ポットの湯沸かし音だけが聞こえるキッチンでは、用意された朝ご飯が美味しそうな匂いを漂わせていた。
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