Happy Halloween!

十月も終わり。
金木犀の香りが、あちこちから漂ってくる。


「はい、これ。約束のかぼちゃプリン。かぼちゃとか、コウモリとか、ゴーストの形のクッキーも作ったよ」

「え、ほんとに持って来てくれたのか?」

「約束したからね」

魁童にオレンジ色の紙袋を差し出しながら、はるかが得意気に笑う。

「ふふ~ん、こないだの試作品より、バージョンアップしてるんだからっ!」

「……せっかくだからさ、ちょっと上がってけよ。一緒に食わねえか?」

魁童の言葉に、はるかは残念そうに答える。

「お邪魔したいのはやまやまなんだけどね……今から管理人さんのおつかいで、ハロウィンのお菓子を届けに行くんだ」

「ふうん……遠くまで行くのか?」

「そんなに遠くじゃないけど……巨乳な美人さんのおうちだよ」

「……俺様が付き添ってってやろうか?」
「けっこうですっ」

はるかは、目を輝かせた魁童の申し出を、即座に却下する。

「ちぇっ、つまんねぇの……ははあ~、さてはお前、俺様とその美人を会わせたくないんだろ?」

一瞬の沈黙のあと、肯定も否定もせずに小さくため息をついたはるかは、言葉を続けた。

「それもちょっとはあるけど……魁童には、訪ねて来てくれるお客様に、お菓子をプレゼントする役割をお願いしたいんだ」

「ハロウィンを実践するって訳か」

なんかワクワクするな、と身を乗り出す魁童。

「んで……ここに来てくれた人に、菓子を渡せばいいのか?」

はるかが、腰に手をあてた姿勢で頷く。

「かぼちゃプリンか、クッキーどちらか……あ、でもきっと、そんなに大勢は来ないだろうから、両方あげても大丈夫だと思う」

彼女の説明に「そっか……」と頷きながら、魁童は「クッキーもうまそうだな」と、先ほど渡された紙袋を覗き込んだ。

そんな魁童に満足そうな笑みを向けながら、はるかが言う。

「うちの隣の空き地に、テーブル出して、プリンとクッキー置いてあるからさ……あ、プリンはクーラーボックスの中ね。私が帰って来るまで、魁童、お願いね」

「おう、わかった」

「そうそう。一応ハロウィンなんで、お菓子渡す時に、お客様に『Trick or treat.』って言ってもらってね!」

「よっしゃ!!んじゃ、張り切っていくぞ~!」



はるかは、お届けものを大事そうに抱えて出発。

魁童は、プレゼントのお菓子を配るために、空き地にスタンバイ。

さあ、楽しいハロウィンの始まりですよ!!

 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪


魁童・はるか
 「「Happy Halloween!!」」

魁童「これを読んでくれてるってことは、『Trick or treat !』……ちゃんと言ってくれたってことだよなっ♪」

はるか「管理人に変わりまして、厚く御礼申し上げます~」

魁童「えっと……この菓子、なんて言って渡せばいいんだ?」

はるか「『Here you are.』とかでいいらしいよ」

魁童「そっか、んじゃ、『Here you are!』
この世界に遊びに来てくれて、ありがとうな!」

はるか「私の感謝と愛を、たっっぷり詰めこんだプリンとクッキー、どうぞ召し上がってくださいね~」

魁童「おい……感謝はわかるけど、『愛』は、俺以外のやつに配らなくてもいいだろ?」

はるか「え?だめ?」

魁童「お前の愛は、全部俺様によこせばいいんだ!」

はるか「まあったく……魁童ってば、照れ屋さんのくせに、欲張りさんなんだから」

魁童「……」

はるか「ん?……あれ、魁童?」

魁童「…………」

はるか「あー!!ちょっと魁童っ!?一人で、どんだけ食べてるのーーっ!?」

魁童「仕方ねえだろ、食い始めたら止まらなくなっちまったんだよ」

言い訳しながら、なおもクッキーを頬張る魁童。

「もう~」と呆れた顔を作りながらも、嬉しそうに彼を見つめる、はるか。


  ♪ ♪ ♪


『キリスト教の万聖節の前夜祭』

『古代ケルト民族の秋の収穫を祝い悪霊を追い払う祭』

このふたつが起源とされる『ハロウィン』。

皆様どうぞ、素敵な一日をお過ごしくださいね!

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