【善法寺伊作前提】忍び怪談
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「今日からお友達だよ?」
そう行った伊作の顔は本当に楽しそうで、本当に性格が悪いと思った。
それは保健室の外側で死んだ当初の姿になりスタンバってる保健委員会の面々にも言えることだが…
保健委員会に入る奴は腹黒じゃなきゃ入れないなんて決まりがあるのではなかろうか?
そして…
「「「わぁぁぁ~っ!!」」」
乱太郎を筆頭に数馬と伏木蔵が保健室の襖を開けて飛び込んだ。
わぁ…って…んな情けない脅かしかたで誰が驚くんだ…「いやぁあぁぁぁあ゛ぁ!!」 驚いちゃったよ…
「左近…お前は良いのか?」
先程の脅かしに混じらなかった唯一の保健委員はここに居る二年い組の川西左近だけだ。
俺の問い掛けに左近は可愛げ無く答える。
「僕をは組やろ組の馬鹿と一緒にしないで下さい」
んっ…とに…どうして い組はこんなにも可愛げがないんだろうな?
うちのちび共と大違いだ。
「怖がられて嫌われるのが嫌なんだろ??」
「…っ!…しっ知りません!!」
顔を赤く染めてそっぽを向くその仕草。
可愛げは無い…
無いがこう言う所がマニアに受ける。
そんな話を余所に、渚が泣きながら保健室を飛び出して来た。
俺のほうに飛び込んで来たが、ぶつかる事は無く、彼女は俺の身体をすり抜けた。
「ひっ…いやっ…いやぁあぁ!!」
生きた人間からしたら、あんまり気持ちの良いものではないのだろう。
一瞬止まり身もだえるとそのまま走りさってしまった。
一方彼女が出ていた保健室の中では…
「あの叫び声…すっごいキュートとスリルー!!」
「うん、泣き顔が可愛いから困るんだよねぇ~」
「怯えた顔に興奮しちゃいますね!」
始めに伏木蔵、それに頷く数馬、恍惚とする乱太郎…本当に…どんな10歳児だ!!
どんな12歳児だよおい!!
そんな小さな腹黒保健委員達に顔を引き攣らせて居ると、隣で左近が騒ぎ出した。
「…っあ、いけない!渚さんの鞄!!」
どうやら鞄を持たせ忘れたらしい。
左近が保健室に入ると同時に伊作が俺の名前を呼んだ。
「留さん!そこに居るんでしょ??
追い掛けて道案内してあげて!
あと……はい、それ!彼女の鞄!!」
左近が革製のカバンを手にこちらに駆け寄ってくるが、めんどくさいと伊作に悪態を返す俺。
「は?自分で行けばいいだろうよ??」
「はぁ…今怖がらせた張本人が行って逃げられないと思う?」
だったら最初から脅かさなきゃ良いのに…
「わぁーたよ!行けばいいだろ!
行けば!!」
俺は左近が持ってきた鞄を引ったくると渚を追い掛ける。
「さよなら…渚ちゃん」
そう呟いた伊作の声が聞こえた気がした。
渚を追い掛けて学園の外に出ると、彼女はまだ森の中をフラフラさ迷っていた。
俺は後から彼女の手をとり制止させたが、それに驚いた渚は、まぁー喚くこと喚くこと。
「まてまて!落ち着け!!
俺だ!俺!!」
「……っ!?…っ…留三郎くん??」
「ああ、ほれ…お前の鞄だ」
宥めて鞄を渡してやると少し落ち着いたようだが、直ぐに鞄を盾にするようにして後ずさった。
「留くんも…ゆ…幽霊…?」
まぁ、さっき身体をすり抜けた相手が生き物なわけないよな…
「ああ、死んでるよ。
残念ながら……な?
死んでるが、忘れ物を届けたり道案内するぐらいなら出来る」
ふっと笑ってやれば彼女はへたり混んで泣き出した。
あ~あ…めんどくせぇ。
あんな見送りかたするからこうなるんだ。
俺はガシガシと頭を掻きながらうずくまると渚の頭をなでた。
「んなに怖がるなよ?
この鞄を渡してくれたのは左近だし、お前をからかって寂しそうに笑ってたのは乱太郎、伏木蔵、数馬。
そして道案内を俺に頼んだのは伊作だ」
「……?どう言う事ですか??」
「ははっ…趣味の悪い見送りを受けたって事だ!」
伊作達があんな事をしたのは原因がある。
時々いるんだよ。
ここに来て、俺達に情が移ってそのまま残ってしまう奴が。
あいつらは渚にそんなふうになって欲しく無かったんだろう。
お前は優しいからな。
そう話してやると渚はむくれながら言った。
「だったら…こんな事しなくたって、言ってくれれば良かったのに…
それにまた遊びに来るよ!」
しかし、渚にはもうそれが出来ない。
「それは無理だ…
お前はもう時期俺達が見えなくなる。
どう言う訳か、あの忍術学園や俺達は子供にしか見えないんだ。
まぁ個人差はあるけど…
お前は…」
言いかけて言葉を濁せば、直ぐに察して言葉の続きを足してきた。
「……私は…もう…会えないんだね?
だから最後にここに呼んでくれたんだね??」
うつむいて何かもの思いに深けている渚。
しばらくして顔を上げて俺に尋ねた。
「ここに来るのは二度目じゃない・・・そうでしょ?」
彼女の中で、子供の頃の夢物語だと時が埋もれさせた記憶がつながり始めているのだろう。
伊作がまだ幼い彼女を助けたその日から、彼女が自分の街に帰っちまうまで・・・
そしてその次の年も、その次の年も・・・
コイツ夏になると俺達のところにやって来た。
しかし時が経つにつれ、彼女が大人になるにつれ、俺達を思い出さなくなり、そして俺達に会いに来なくなった。
いつの間にか彼女に執着していた伊作は、このまま忘れられて別れるのが我慢できなかったんだろう。
腹黒いけど不器用だよな、アイツ・・・いや、あいつらも・・・
湿っぽい空気のまま人の通る道に着くと、渚は俺の方に振り返った。
しかし、驚いてキョロキョロ俺を探し始めた。
「留くん…?留くん??
ねぇ何処??…………っ!?」
ああ、見えなくなっちまったのか。
本当にギリギリだ…森の途中でこんな事になってたら俺が伊作にどんな目にあわされるか…
そう血の気なんて無いはずの顔を青くしていると、渚は俺のほうを向いて思いっきり叫んだ。
「留く~ん!ありがとぉー!!
みんなにも伝えて!ありがとうって!!
伊作に伝えて!!
小さい頃助けてくれてありがとうって…私…わた…し…もう忘れないからぁぁぁ!!」
わかったもんじゃねぇなぁ…
こんだけ笑顔で手を振ってる最後の顔を俺がみたんじゃ…本当にアイツらに何されるか、わかったもんじゃねぇや。
未だに見えないはずの俺に泣き笑いながら手を振っている渚。
「んーなに叫ばなくたって聞こえてるっつの・・・」
見えないとはわかりつつ、俺は彼女に背中を向けて手をヒラヒラと振り返した。
【おけま】
数年後…一人の幼女が母親らしき女性の手を引き森の中を歩いている。
「ママ!こっち!!
こっちに新しいお友達がいるんだよ?」
幼女は母親に連れられて、母親の祖母にあたる人の実家に遊びに来て居たのだった。
そして新しい友達に紹介すると行って母を連れ出したのだが…
「伊作お兄ちゃん!ママ連れてきたよ!!」
幼女が古風な名前を呼ぶが、母親には森の木々しか見えない。
しかし母親は対して気にした様子もなく微笑んだ。
幼女は何かを聞くと母に言った。
「伊作がね?
ママ綺麗になったって!」
「あら?嬉しいわ。
こんなおばさんに綺麗だなんて」
母親はまるで少女の様に頬を染めるといたずらっぽく言いました。
「あの時は良くも脅かしてくれたわね~
私が死んだらみんなまとめてひっ叩いてやるんだから!」
母親の言葉に幼女がケラケラ笑う。
どうやら見えない相手は焦っているらしい。
その反応に満足したのか、母親はしゃがみ込み幼女の顔を覗くと…
「い~い?5時の鐘が鳴ったらちゃんと帰って来るのよ??
じゃないと伊作お兄ちゃんにビンタね?」
「は~い!!……あはははっ!」
元気良く返事をして幼女が何かにかけて行く。
それを見て母親は微笑み、来た道を戻り始めたが数本歩いて、はたと幼女の方に振り向く。
「ねぇ?知ってた?
私の初恋は小さい頃助けてくれた天狗さんなのよ??」
母親の言葉に幼女が何かを見上げて言った。
「どうしたの?
伊作お兄ちゃんお顔が真っ赤!」
どうっと風が吹いて母親は今度こそ振り返らずに歩きだした。
そして更に数十年後老いた母親の元に忍びの少年が現れたのはまた別の話し…
END