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A cat has nine lives.
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成幸
猫は九つの命を持っている、という意味だ。
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成幸
要は、猫はしぶとく長生きという意味らしい。
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成幸
それはともかく、俺は
猫 を飼う事になった。 -
成幸
エコービルの占い師に、急に勧められて。
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成幸
何か運命的な出会いがある、とか言われて。
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成幸
さて、晴れて明日から大学生だ。
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成幸
色々あって、地元の大学の理工学部に入学した。
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成幸
もっと上のランクの大学も目指せると言われたが、ここにした。
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成幸
俺にはここが丁度いい、地元の
吉祥寺 (東京 武蔵野市)も居心地がいいので。
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成幸
さて明日は入学式だ、今日はもう寝よう。
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入学式の帰り道ある女の子とすれ違った、着物姿だったが何故か妙に淋しそうだった。
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何故か、凄く印象に残っている。
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また、会えるといいな。
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それはそうと、友人の
幹雄 と一緒に軽音サークルに誘われた。 -
高校の時のバンドの先輩も居たので、一緒に入る事にした。
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さて、大学を一回りしてみようかな、ここは図書館か。
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あれ…あの子が居る。
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成幸
「あ、あの…すみません…」
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りこ
「あっ! すみません。今忙しいので!!」
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成幸
「あっ、そうでしたか、すみません」
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話できなかったな…。
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残念。
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校舎内
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成幸
「へー造形学部の入試作品の展示会か、サークルの時間までちょっと時間あるから寄ってみようかな」
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成幸
「ん! この絵凄く綺麗だな、特に赤の色使いが凄く綺麗だ」
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しのぶ
「それ、ずっと見てるけど私が描いたのよ」
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成幸
「あ、っそうだったんですか、綺麗な物でつい
見惚 れてしまって」 -
しのぶ
「ありがと、私しのぶって言うの、作品の下にも書いてあるけど。ところで君、学部はー?」
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成幸
「俺は工学部だけど…」
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しのぶ
「そっかー、じゃああんまり会う機会ないかもだけど宜しくねー、またねー」
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彼女は、早足で去ってしまった。
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あの、しのぶって子も綺麗だったな。
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サークル部室
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りん
「成幸さんって言うんだ宜しくね?」
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成幸
「確かお姉さん、バンドのボーカルだったよね。ライブ見に行った事あるよ」
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りん
「良く知ってるねー、私はピアノとヴァイオリンできるけどあんまりロックとか分かんないんだー。教えてね!」
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成幸
「ロックなら幹雄に
訊 いてくれよ」
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りん
「えー、成幸くん教えてよ」
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元気そうな女の子だな、それにしても大学生には見えないぐらい幼いな、胸は大きいけど。
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橘ラインハルト立花
「ところで成幸くん、それ使ってるギター見た事ないメーカーだけど、どこで買ったの?」
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成幸
「自分で作った」
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橘ラインハルト立花
「へ? 作った?」
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成幸
「うん、アンプもギターも自分で作ってみたんだ、工作は得意だからね」
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橘ラインハルト立花
「得意ってレベルじゃないだろ…」
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幹雄
「それより吉祥寺行こうぜー。またエコービル探索しようぜ」
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こいつは、幹雄。
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俺の、高校からの友人。
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勉強できない癖に俺と一緒の大学に入ろうとして、何とか社会学部に補欠入学した奴だ。
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まあ、調子のいい奴だよ。
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エコービル、吉祥寺の駅前にあるビルだ。
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駅前にあるのに怪しい店が多く、空きも多いせいで幽霊ビルとか呼ばれているらしい。
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色々、都市伝説もある。
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まあ、ただ入り口が解りにくいだけだ。
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猫を飼うように占った占い師も、猫を買ったペットショップも、ギターとアンプを作った時にもリサイクルショップとは名ばかりのガラクタ屋と秋葉原でパーツを集めて作った。
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立ち入り禁止のとこも多く、幹雄が探索したがっている。
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困った者だ。
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講義室 授業後
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隣に座っていた子、どこかで見た事あるな…。
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あっ!
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昔『恋の天使舞い降りて』ってドラマでヒロインやってた女の子だ。
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成幸
「あっ…あの?」
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ゆうか
「あっ私の事知ってるのね」
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成幸
「出てたドラマ好きでした、特にクリスマスのシーンが」
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ゆうか
「そうなの、でももう昔の話よ、それよりさー、今の授業聴いてなかったからノート見せて」
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意外と、役とイメージ違うな…。
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あと、強引だな…。
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あら、周りが騒がしい。
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やっぱり、皆に気付かれてるみたいだな。
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本人は、嫌そうだけど。
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サークル新人歓迎会
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橘ラインハルト立花
「さーてみんな集まったので盛大にやりましょう!!」
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はー、このハイテンションな乗りは苦手だな…。
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どうしよう…。
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あれ、もう一人黙って飲んでる人居るな…。
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成幸
「あの…。部室では見掛けなかったですけど…」
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ひなこ
「あっ私ですか!! 私は昔このサークルに居て、今は保育士やってます」
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成幸
「あっそうだったんですか…。いやお一人だった者で…」
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ひなこ
「私も友達に無理矢理連れて来られたんですけど、どうも男の人は苦手で…。あっ違います! 別にあなたの事嫌いな訳じゃないです!!」
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どうも話が、上手く噛み合わないな…。
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成幸
「取り敢えず宜しくです」
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ひなこ
「あっ…。はい…」
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数日後
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幹雄
「おっしゃーやって来たぞー、可愛いレイヤー居るかなー」
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という訳で、幹雄とコスプレイベントにやって来た。
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アニメには興味あるがコスプレにはあんまり興味なかったが、強引に誘われて付いて来てしまった。
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今日は、コスプレ写真集の即売会もあるらしい。
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幹雄は早速、カメラ抱えてどっか行ってしまった。
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あ、『モンハン』のコスプレか、いっつもプレイしてるし見て行くか。
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ん!
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この写真集、いつも使ってる装備だな。
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のあ
「あら、お兄さん興味あるなら買ってってよ」
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成幸
「いや、いつも俺が使ってる装備でしたけど良く衣装作りましたね」
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のあ
「でしょ~。ま、取り敢えず買ってって」
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成幸
「はあ…」
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買う事になってしまった。
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のあ
「あら、めいちゃん戻って来たの? 見て回るんじゃなかったの?」
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めい
「いやー、なんか暑いし疲れちゃって。あれこの人は?」
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のあ
「そいや名前訊いてなかったね、私はのあ。この子はコスプレ仲間のめいちゃんよ」
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めい
「カメラ持ってるみたいだし良かったら写真どーぞ。ところで随分変わったカメラ使ってるね」
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成幸
「ああ、これは父親が使ってた昔の一眼レフなんだ、まだフィルムだしオートフォーカスも補正機能とかも一切無いけど、壊れてたの自分で直したんだ」
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めい
「へー、すごーい」
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のあ
「お兄さんもしかして工作とか写真とか得意? 良かったら色々手伝ってよ。写真集に連絡先載ってるからもし良かったら連絡して」
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成幸
「はあ…」
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なんだか良く分からない事になったぞ。
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学校実験室
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さて、入学後初の実験だな。
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電気回路設計か、まあいつも家でやってる容量でやればいいか。
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実験にはパートナーが居るのか。
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あっ!
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あの人か。
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みずほ
「宜しくお願い致します…」
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工学部に女性なんて、珍しいな。
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それにしても、帽子を
目深 に被ってあんまり顔見せたくないのかな? -
成幸
「こちらこそ宜しくです」
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成幸
「えっと、半田
鏝 使えますか?」
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みずほ
「いや、初めてです」
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そうか、困ったな。
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実験には随分、時間が掛かってしまったな。
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みずほ
「色々ありがとう御座います」
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成幸
「いえいえ慣れてますから」
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しかしこの子顔見せようとしないな、なんでだろ。
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数日後 吉祥寺繁華街
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家に、美容室の30%オフの葉書が来てたな。
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髪も伸びてきたしそろそろ切ろうかな、幹雄みたいに長髪にする気も無いし。
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ゆき
「いらっしゃいませ~。お客さん初めてですか~」
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成幸
「はい、そうです」
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ゆき
「今日はカットですか?」
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成幸
「はい」
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ゆき
「シャンプーもどないですか~、気持ちいいですよ~」
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成幸
「じゃあお願いします、お姉さん関西出身ですか?」
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ゆき
「そないです、東京長いんやけど未だに抜けへんねなー」
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ゆき
「それじゃ切りますねー」
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あれ、この人どっかで見た事あるな?
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あ!
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思い出した、ライブハウスでベース弾いてた人だ!
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成幸
「お姉さん、あそこのライブハウスでベース弾いてましたよね!!」
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ゆき
「あら! 見た事あったんかいな! またライブやるから来て下さいね~」
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数十分後
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ゆき
「ありがとう御座いました~、ほな、また来て下さいね~」
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成幸
「ありがとう御座いました」
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ゆき
「ライブもまたやるから宜しく頼むでー」
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