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十三宮 幸
残暑の厳しさを感じる、初秋の週末。
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十三宮 幸
今日は、横浜の笹木詩絵楽、
常陸 の土御門綺音と遊ぶ約束をした日である。 -
十三宮 幸
私達は、集合場所である市内の駅に向かった。
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駅
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十三宮 幸
「…お待たせ~!」
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笹木 詩絵楽
「このあたしを待たせるなんて、いい度胸ね。さあ、早く行くわよ!」
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土御門 綺音
「宜しくにゃ~」
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十三宮 幸
「今日はまず、どこに行くんだっけ?」
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笹木 詩絵楽
「あぁ…その前に幸君、あんたにこれ上げるわよ」
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そう言って笹木さんは、カフェラテやら冷凍ラーメンやら、どこで入手したのか分からない土産物を私に差し出した。
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十三宮 幸
「え、私にくれるの?」
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笹木 詩絵楽
「べ…別に、あんたのためじゃないのよ。こんなラーメン、あたしは要らないけど、あんたなら適当に処理してくれそうだから…ね?」
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土御門 綺音
「人を不用品回収業者のように扱っちゃ駄目にゃ…」
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十三宮 幸
「ま…まあ、ありがとう(苦笑)」
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このように笹木さんは、逢うたびに色々な物品を私に押し付け…いや、プレゼントしてくれる。
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要らないから私に押し付けているのか、それとも本当に好意があってのプレゼントなのか、今の私には理解できない。
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笹木 詩絵楽
「な…何よ? いいから黙って受け取りなさいよ! それで、最初はどこ行きたい? まだ、御飯って気分じゃないんだけど」
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土御門 綺音
「それにゃら、まずはゲームセンターで遊びたいにゃ! 久々にスロット打ちたいにゃ!」
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笹木 詩絵楽
「そうね。じゃあ、まずはそうしましょ」
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ゲームセンター
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そういうわけで私達は、駅前のゲームセンターに入店し、夕食までの時間を潰す事にした。
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笹木さんは、景品の縫いぐるみに瞳を輝かせ、綺音ちゃんは、スロットよりもレースゲームに勤しんでいた。
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十三宮 幸
「笹木さん、そのグッズ取れそう?」
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笹木 詩絵楽
「今日の無料サービス券は使い切っちゃったし、今んとこは諦めとこうかしら。それとも、あんたが払ってくれんの?」
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十三宮 幸
「あと何回で取れそう?」
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土御門 綺音
「あ~、これは駄目にゃ…こういう筐体は、あと3000円ぐらい賭けにゃいと取れない仕様にゃ…」
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笹木 詩絵楽
「あ、そう。で、あんた払ってくれんの?」
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十三宮 幸
「えぇ…この後の食費も要るんだし、今日は一旦、その縫いぐるみは諦めてくれませんか…?」
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笹木 詩絵楽
「ま…ま~あ、あんたがそこまで頭を下げるなら、今回だけは特別に我慢してあげてもいいけど~?」
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十三宮 幸
「はいはい、それはどうも(笑)じゃあ、そろそろレストランに行こうか」
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仲見世商店街
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そして、駅前のゲームセンターを出た私達は、賑やかな仲見世商店街を通り抜けて、国道の交差点を渡った。
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目的地は、笹木さんが行きたがっていたレストラン…なのだが、笹木さんは地図が苦手らしいので、私と綺音ちゃんでルートを確認しつつ進む事に。
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しばらく国道に沿って歩くと、目当ての店が見えてきた。
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十三宮 幸
「…あ、あの看板の店だね」
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笹木 詩絵楽
「え~? 良く見えないわ~…あっ! 見えたわ。あれね」
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土御門 綺音
「どうして、この店が良いにゃ?」
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笹木 詩絵楽
「今、丁度あたしが推してるアイドルとコラボしててね、対象商品を注文すると、コラボグッズが貰えるのよ」
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十三宮 幸
「ああ、そんな事を言っていたね」
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笹木 詩絵楽
「でも~、あたしみたいな清楚で魅惑的な乙女が独りで外出なんて危ないから、あんた達を一緒に連れてってあげようと思ったのよ。感謝しなさい♪」
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土御門 綺音
「早速、入ってみるにゃ~」
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レストラン
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餌を見付けた猫のように階段を駆け上がる綺音ちゃんに続き、私達はレストランに入店した。
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そして、メニューから注文を選ぶ。
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十三宮 幸
「…なるほど。対象商品を注文すると、この人達のクリアファイルがランダムで貰えるみたいだね」
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笹木 詩絵楽
「そうよ。あたしは…そうね、この『iCANDY欲張りプレート』にするわ。数量限定みたいだし、これが一番お得よ!」
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土御門 綺音
「じゃあ私は、ビーフシチューハンバーグにするにゃ!」
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十三宮 幸
「ドリンクバーのセット、追加料金でスープも飲み放題だって」
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このような会話をしながら、各々が食べたい物を注文した。
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すると、注文した料理と共に、コラボコンテンツのクリアファイルが運ばれて来た。
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その絵柄は、一枚ずつ異なっている。
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クリアファイルに印刷されているキャラクター達を、飲食ついでに見てみた。
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十三宮 幸
「…こういう感じなのか。この衣装と舞台は、何をモチーフにしているのだろう?」
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笹木 詩絵楽
「ああ、こっちは名古屋城の、そっちは小牧山のイベントじゃないかしら? 多分その時に撮った写真を、クリアファイルのデザインに使ってるのよ」
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土御門 綺音
「このハンバーグ、美味しいにゃ~!」
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笹木 詩絵楽
「…このカレー、思ったよりも辛いわね…ねぇ、あんたさぁ。これ、あたしだけじゃ食べ切れないから、あんたが残り食べてくれない?」
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十三宮 幸
「ああ、別に構わないよ」
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笹木 詩絵楽
「か…勘違いしないでよね!? べ…別に、間接キスとかじゃないんだから! あたしが優しいから、あんたに残飯処理させてあげてるだけなんだからね!?」
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十三宮 幸
「はいはい、そうですね(笑)」
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対象メニューを一つ注文するごとに、例のクリアファイルを貰えるのだが、絵柄の種類は複数あり、まだ私達は全種をコンプリートできていない。
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笹木 詩絵楽
「…コーヒーゼリーとかプリンとか、デザートにもコラボグッズが付くのね。折角だからコンプしたいし、これも追加で注文しよっと♪」
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十三宮 幸
「笹木さん、そんなに注文して…お金は大丈夫?」
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笹木 詩絵楽
「足りなくなったら、あんたが出すんでしょ?」
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十三宮 幸
「…あ?」
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笹木 詩絵楽
「あんた、知ってる? 愛ってのは口先の言葉だけじゃなくて、お金という形で示すものなの。ま、あんたみたいな恋愛弱者は知らないよね?」
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十三宮 幸
「反論するのも馬鹿らしいので言いませんが、もし本当に足りなくなったら、まあその時は一応相談してよ」
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笹木 詩絵楽
「ふふっ…大切な人が困っていたら、迷わず現金を乗せた手を差し伸べてくれる…そんなあんたが、大好きよ♡」
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皆様、御覧下さい。
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こういうのを「口先だけの愛」と言います。
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土御門 綺音
「…美味しかったにゃ~。折角だから、ドリンクバーで紅茶を淹れるにゃ! アニャタ達も、一緒に飲むにゃ~」
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この後も私達は、隣街のアニメショップに寄ったりしながら、皆で楽しい時間を過ごした。
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そして、楽しい時間ほど早く過ぎてしまう問題を、神様はどうにかして解決すべきだと、私は強く思った。
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笹木さんも綺音ちゃんも、私の大切な仲間である。
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笹木 詩絵楽
「な~にジロジロ見てんのよ? もしかして、あたしに見惚れちゃったの~?」
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十三宮 幸
「ああ、ごめん。こんな時間が、ずっと続けばいいなと思って…」
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笹木 詩絵楽
「あら、奇遇ね。あたしも、同じような事を考えていたわ。まあ別に、あんたなんかと両想いでも全然嬉しくないんだけどね?」
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そう微笑む笹木さんの背に広がる、この街の青空は、いつもより少しだけ、明るく感じられた。
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笹木 詩絵楽
「さあ、行きましょう。あんた達と回りたい場所、ほかにもいっぱいあるの。だって、あたしは…ねぇ、あたしをこんな気持ちにさせた責任、取ってよね♪」
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十三宮 寿能城代 顯
この小説を原作とするストーリーを、名古屋芸術大学の声優ユニット「iCANDY」の方々に演じて頂きました。
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十三宮 寿能城代 顯
また、その動画用にオリジナルイラストも描いて下さいました。
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十三宮 寿能城代 顯
皆様の御厚意に、深く感謝致します。
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十三宮 寿能城代 顯
ありがとう御座いました!
スライダーの会
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