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十三宮 巫部 仁
「…何度生まれ変わっても、私は忘れない。私が…私達が信じた、あなた様の御名を…!」
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平安時代末期 治承・寿永の乱
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十三宮 幸
平安時代、12世紀の末期。
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十三宮 幸
鎌倉を中心とする東国の源氏と、西国の平家の軍勢が、瀬戸内海を舞台に、最後の決戦を繰り広げていた。
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十三宮 幸
多くの武士団が戦乱に動員され、一人また一人と、その命が失われて逝く。
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十三宮 幸
そして今、一つの時代が終焉を迎える中で、天下に名を残した歴戦の老将が、その時代と共に、この世に別れを告げようとしていた…。
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十三宮 巫部 仁
「…丹波様っ、丹波守様! お体は大丈夫ですか…?」
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??
「…もう、我が命は長くない…今はただ、お迎えを待つだけじゃ…」
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十三宮 巫部 仁
「そんな…!」
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??
「…
巫 よ、良く聴け…この戦は間も無く、平安の世と共に終わる…されど将来、この瀬戸内の海に、かの備中の国(岡山)に、大いなる悪魔が現れるだろう…」 -
十三宮 巫部 仁
「丹波様、逝かないで下さい! どうか生きて、私達をお導き下さい…!」
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??
「…我が死なば、この亡骸を即身仏(ミイラ)として本尊に祀り、
社 を建立せよ…例え肉体が動かずとも、我は神霊となりて御主らを加護せん…」 -
十三宮 巫部 仁
「分かりました! 丹波様を御神体として、大切にお祀り申し上げます。お亡くなりになられた後も、私達を見守り続けて下さるのですね…!」
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??
「…案ずるでない、我は
久遠 の時空世界を生ける神ぞ…我は天地の終焉まで、常に御主らと共におる…そして千年後、必ずや御主らの前に再臨せん…!」 -
(パタッ)
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十三宮 巫部 仁
「た…丹波様ぁ!(泣)」
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多くの人々を救い、生前から「
現人神 」として崇拝された軍神、碓井丹波大菩薩は、安らかに目を閉じた…。 -
十三宮 巫部 仁
「合掌…南無碓井大菩薩…礼拝」
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軍神の臨終を見届けた巫女は、その遺言に基づき、丹波菩薩を祀る社寺を建立し、そこに御遺体を安置して、後世の人々に託した。
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軍神様が永遠の御存在として、私達を見守り続けて下さると信じ、そして、いつかこの世界に復活して下さる日を待ち望んで…。
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瀬戸内海では、凄絶な合戦が続いていた。
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人々は、
殺生 の罪と死の罰を恐れずに戦うべく神仏を求め、それに応えるように、新しい宗教が広まりつつあった。 -
特に、先程の丹波菩薩を崇拝する「碓井教」のほか、関西の「花月地宗」や、古代からの「水上教」などが流行していた。
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しかし水上教は、教祖が碓井教との決闘に敗れ、残った信者達も相次いで戦死し、教団は崩壊しつつあった。
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十三宮 寿能城代 顯
「…このまま戦い続けても、敵方に捕らえられ、
辱 めを受けるだけだ。私には、思い人も子も居ない。私が死んでも、誰も泣きはしない。ならば…!」 -
瀬戸内海での決戦に敗れ、追い詰められた水上教徒に残された選択肢。
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それは神の御名を唱え、来世の救済を願いながら、自ら命を断つ事であった…。
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十三宮 寿能城代 顯
「見るべき運命は、全て見届けた! 最早、悔いは無い! この上は私達の、母なる大海原へと還るだけだ! さらば、美しき世界よ! 南無水上大明神!」
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そう言って、水上教の信者だった武士達は、次々と瀬戸内海への入水自決を遂げた…。
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十三宮 寿能城代 顯
(…生まれ変わったら、495歳の吸血鬼みたいな美少女と結ばれたい人生だったな…)
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この日、水上教の信者は全滅し、彼らが信仰していた女神の名前と共に、歴史から姿を消した。
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忘れ去られた女神は、瀬戸内の
海彼 から、その瞬間を見届けていた…。 -
水上 ジャンヌ 溟
「…ああ、本当に…私の時代は、終わってしまったのですね…」
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一方、碓井教を支持した東国の武士達は、やがて鎌倉幕府を
開闢 し、ここに平安時代は終わった。 -
また、第三勢力の花月地宗は、この瀬戸内海での決戦において、勝者と敗者の双方に恩(仏具と武器)を売り付け、密かに儲けていたらしい。
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そして、それから数十年、更に数百年の歳月が過ぎ…。
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須崎グラティア優和
「…ここで、新しいニュースが入りました。関西の寺院の住職である
花月地院 貫首 が今日、遺体で発見されました」 -
須崎グラティア優和
「畿内
刑部 省によると、死因は感電死と見られています」 -
須崎グラティア優和
「花月地院は、平安時代からの由緒ある密教寺院として有名で、近年は、孤児院の経営にも取り組んでいる事で知られていました」
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須崎グラティア優和
「他殺の痕跡が見られない事から、刑部省は事故または自殺の可能性が高いと見て、捜査を進めています」
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須崎グラティア優和
「CMの後は、新番組『鳥羽USAZON通販ショッピング』をお送り致します。チャンネルは、そのままで!」
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十三宮 伊豆守 聖
「か…花月地院様が?」
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この寺院の名前は、聞いた事がある。
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前に十三宮教会が、海賊に襲われた戦災孤児の救出作戦に出撃し、十三宮カナタ達を保護した頃、同じような活動をしていたのが花月地院だった。
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