-
だが…私達には、最後の戦いが残っていた。
-
虚人東山軍という共通の敵が消えた結果、一時的に協力していた連合軍と鵜久森団が、再び対立する事になった。
-
鵜久森ミナト中尉は、自らが四国の支配者に成り上がる野望を目論み、石本ユミカ大佐の首級を狙って、伊予松山への進軍を開始した。
-
鵜久森中尉の野望を阻止するため、四国に駐留していた十三宮軍が、最後の最後の決戦に向かった…!
-
讃岐 高松城最終決戦
-
鵜久森 ミナト
「目指すは、石本ユミカの首級だけだ! キミ達のような弱者に、用は無いんだよ! 消え
失 せろ!」 -
十三宮 カナタ
「鵜久森先輩…あなたは何故、こんな虚しい闘争を続けるのですか?」
-
鵜久森 ミナト
「弱き者、石本ユミカは、かつて東山備中に純潔を売り飛ばし…忌まわしくも、奴の餓鬼を産み落とした…許せない! 東山の血は全て、淘汰されるべきだ!」
-
嶺咲 ウルスラ
「…東山の血を引く子供には、生きる権利も、この世に生まれる価値すら無いと、そう言いたいのですか!?」
-
十三宮 幸
(…優しい嶺咲先輩が、珍しくガチギレしている…)
-
鵜久森 ミナト
「ボクは、この世界に選ばれた、唯一最強の人間なんだ! 見せてあげるよ、ボクの力を…奥義『実像鏡面』
万華 開放!」 -
-
十三宮 カナタ
「う…鵜久森さんが、5人に増えた…!?」
-
十三宮 幸
「分身を操る超能力者…これが、鵜久森団の正体か!」
-
嶺咲 ウルスラ
「慌てずに、一体ずつ片付ければ問題ありません。今回は、私も前衛で戦います。出て来なさい、我が忠実なる
傀儡 達よ!」 -
-
嶺咲ウルスラは、自身をデフォルメした縫い
包 みを取り出し、それを鵜久森ミナトの分身に投げ飛ばすと、分身の一体が感電しながら消えた。 -
鵜久森 ミナト
「「…そういう事か、少しはできるみたいだね」」
-
鵜久森 ミナト
「「じゃあ、掛かって来なよ!」」
-
こうして私達は、鵜久森ミナトの分身を、一体ずつ撃破していった。
-
しかし、最後に残った本体には、なかなか攻撃が届かない…!
-
鵜久森 ミナト
「
障礙 の分際で、調子に乗るなよ! キミ達は、ボクの幸福追求権を侵害した! もう二度と、ボクの悪口を言うな! 破滅の瞬間まで、しばき倒してやるっ!」 -
その時、見慣れぬ水色のレーザー剣が、鵜久森ミナトの足元に突き刺され、周囲の地面が凍結した!
-
鵜久森 ミナト
「…!? 誰だ、何の真似だ!?」
-
松山 なつき
「…徳島での任務が終わって、伊予に帰ってリラックスしようと思ったら、アンタ達…さっきから元気そうに喧嘩しているわね。特に、そこの不良さん?」
-
-
十三宮 カナタ
「あなたは…?」
-
鵜久森 ミナト
「誰だ!? キミまで、ボクの夢を邪魔するんだね!?」
-
松山 なつき
「はぁ…アンタの意味不明な妄想になんか、興味ないよ。それよりも…アンタは自分が最強だとか、そんな事を言ってるんだっけ?」
-
鵜久森 ミナト
「ああ、そうだよ! ボクは今まで、誰にも負けた事が無い! だから誰も、ボクの苦しみを理解してくれない! ボクは、弱い奴らなんか…大っ嫌いだ!」
-
松山 なつき
「そういう寝言はさ、せめてアタシに勝ってから言ってみたら? そんなに自慢したいなら、アタシが教えてあげるよ…本当の強さってのをね!」
-
その女学生…松山なつき少尉の水色と、鵜久森ミナト中尉の黄色、二振りのレーザー剣が
鍔迫 り合い、火花を散らした…! -
中立国共同体「南海コモンウェルス」結成
-
石本 ユミカ
「…本日、私達は土佐の奪還を果たし、四国の統一を成し遂げました。莫大な犠牲の上に築かれた勝利を、決して無駄にしてはならないと考えます」
-
遂に四国統一の夢を成就させた、伊予軍政府の石本ユミカ大佐は、全世界に生中継する記者会見を開き、建国宣言を読み上げた。
-
鳥羽 魅兎
「…今日は、歴史に残る記念日ッスね~」
-
石本 ユミカ
「2666年、今日この時を以て、私達は…四国4県の同盟に基づく中立国共同体、南海コモンウェルスの結成を宣言致します! そして、その義勇軍の命名は…」
-
土佐 旧高知県庁跡地
-
仲間達と共に鵜久森ミナトを撃破し、全ての戦闘を終えて疲労困憊の十三宮カナタが、最後の務めを果たしに来た。
-
かつて土佐高知の行政府があり、今は瓦礫と化した県庁舎の廃墟。
-
津波の泥土に折れて埋まっていた国旗ポールを立て直し、そこに新しい旗を掲揚する。
-
十三宮 カナタ
「さ…サイドワインダー土佐高知基地の建設を、い…今この場所に、宣言します…! わ…私達は、四国の義勇軍『サイドワインダー』です…!」
-
十三宮 幸
「…これは、歴史的な瞬間だ…カナタさん、撮影するよ!」
-
十三宮 カナタ
-
瀬戸内海の平和を象徴するオリーブ、四国の天空を駆ける戦闘機に
準 えたペガスス、純潔などの花言葉を持つ百合。 -
南海コモンウェルスの義勇軍として、四国・瀬戸内海を守護する「サイドワインダー」の軍旗であり、その結成と、土佐高知基地の建設が宣言された瞬間である。
-
軍旗を掲げる十三宮カナタの姿は、全世界中に「リョーマの国、自由を取り戻す」というタイトルで報道され、絶大なる「いいね!」を集めた。
-
切望した両親との再会は、遂に叶わなかったが…それでも、今の自分にできる最善を尽くし、その名を歴史に刻んだ十三宮カナタ。
-
十三宮 幸
「これで…やっと、全ての任務が終わった…カナタさん、お疲れ様…」
-
十三宮 カナタ
「はぁ…ん、ありがとう…今日は、本当に…長くて、
辛 い…そんな、一日だったね…」 -
四国住民
「か…カナタ、ちゃん…?」
-
(…!)
-
十三宮 幸
「ん? 今、誰かの声が…?」
-
それは十三宮カナタにとって、決して忘れられない声だった。
-
十三宮 カナタ
「…! 幸分隊長さん、一生のお願い! この瓦礫を退かすの、手伝って!」
-
十三宮 幸
「分かった! 中に誰か、閉じ込められているかも知れないからね!」
-
そうして瓦礫の下を探すと、そこには…かつて旧時代に、アメリカとの戦争に備えた
防空壕 が掘られていた。 -
古くて壊れかけてはいるが、数人が避難できるスペースだけは残っていた。
-
そして…中に居た生存者二人の顔を視認した十三宮カナタは、滝のような涙を流しながら、満面の笑みで叫んだ…!
-
十三宮 カナタ
「…お母さん! お父さん! ただいま! 私を、産んでくれて! 育ててくれて! 待っててくれて! 生きててくれて! ありがとう…!」
-
かくして十三宮カナタは、実の両親である鷺原夫妻との再会を遂に果たした。
-
今回の大活躍で、一人前の戦士として認められたカナタは、若き中等学生でありながら元服(成人式)を迎える事を許され、両親から「鷺原イズミ」という新しい実名を与えられた。
-
十三宮カナタ改め鷺原イズミは、父母と共に四国で暮らし、仲間達を護るため、サイドワインダー基地の将兵を養成する士官学園に転校した。
-
浦戸 湾 高知港 -
十三宮 カナタ
「聖お姉ちゃん・勇お姉ちゃん・ウルスラ先輩・めぐちゃん先輩、それに天満ちゃん・念々佳ちゃん、そして幸分隊長さん…お世話になりました!」
-
十三宮 伊豆守 聖
「何か御座いましたら、いつでも連絡して下さいね。カナタちゃん…いえ、イズミちゃん。あなたは、これからもずっと…私の可愛い妹なのですから^^」
-
十三宮 巫部 仁
「お手紙、たくさん書いて送るよ! お休みの日に、またいっぱい遊ぼうね! イズミちゃん、大好き! むぎゅ~っ^^」
-
禅定門 念々佳
「めぐ先輩、そこは私のポジションですよ! イズミちゃん、いつでも電話してくれて構わないし、暇なら戦闘機で直行するからね(笑)」
-
十三宮 幸
「いつか自分も、そのサイドワインダーってのに入隊しようかな…?」
-
傷病者の救護を終え、鷺原イズミの旅立ちを見届けた十三宮軍らは、四国からの撤退を開始した。
-
かくして四国の命運は、鷺原イズミらサイドワインダーを始めとする、現地住民の手に託される事となった…。
-
そして、それから3年後…2669(光復二十一)年。
-
タウ型が死の直前に予言したように、東山備中の変種が次々と発生し、虚人東山軍との戦争は終わるどころか、むしろ激化している。
-
鵜久森 ミナト
「…ボク達の任務は、伊予・安芸を結ぶ西瀬戸連絡橋の多々羅大橋を、虚人東山軍から防衛する事だよ! では、ハンター中隊の編成を確認するよ!」
-
南海コモンウェルス及びサイドワインダーの中枢である、伊予松山基地。
-
立派な中隊長に成長した鵜久森ミナト大尉(高等教育学校2年生)と、鷺原イズミ訓練生(1年生)らの姿が、そこにあった。
-
鵜久森 ミナト
「空戦隊の編成だけど…今回の任務から、イズミちゃんにはハンターⅣとして、実戦に参加してもらうよ。ハンターⅤの新任士官ちゃん共々、頑張ってね!」
-
鷺原 イズミ
「はい、最善を尽くし頑張らせて頂きます!」
-
一ノ瀬 蒼空
「イズミちゃん、改めて宜しく!」
-
鵜久森 ミナト
「思えば3年前は、キミ達と敵対した事もあったのか…懐かしいね。あの頃のボクは未熟で、物凄く迷惑を掛けたと思う…情けないよ、ごめんね…」
-
一ノ瀬 蒼空
「あー、そんな事もありましたねー(棒)」
-
鵜久森 ミナト
「あの時…キミ達がボクを止めてくれたから、ボクは変わる事ができたんだよ。イズミちゃんにも、なつき達にも、もちろんキミにも…感謝しているよ!」
-
鷺原 イズミ
「いえいえ、これからも宜しくお願い致します」
-
鵜久森 ミナト
「さて…新生ハンター中隊、できれば6機編成にしたいんだけど、誰かハンターⅥを務めてくれる人、居る?(人員不足だから)居ないよねー?」
-
一ノ瀬 蒼空
「いや、それが…」
-
鷺原 イズミ
「何人も居ます、あたし達の後ろに…」
-
鵜久森 ミナト
「え…あれ、キミ達いつの間に…?」
-
禅定門 念々佳
「イズミちゃん、正式入隊おめでとう! 無二の親友として、私もハンターⅥに加入します!」
-
美保関 少弐 天満
「百合の間に挟まるのは罪ですが、胸の谷間に挟むのは正義です! その事を証明するために、あたしがハンターⅥを務めます! おねがぁ~い♪」
-
黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「ん…え、私ですか? いや、さすがに不味いですよ(苦笑)私、表向きは虚人東山軍に属する、悪い女幹部なので…まあ、裏方程度でしたら…」
-
﨔木 長門守 夜慧
「誰でも良くね? あ、なつきが軟派した未玖ねーちゃん、早期警戒機の訓練、もう終わったのか? 必要なら、俺も
アドバンスホークアイ 乗ってやるぞ!」 -
鷺原 イズミ
「…あたし達のために、再び伊予まで来てくれるなんて…皆、本当にありがとう!」
-
教会堂から西南西の空に、約6機の機影が見えた。
-
十三宮 伊豆守 聖
「…あら、綺麗な飛行機雲…イズミちゃん達、元気にしているでしょうか?」
-
嶺咲 ウルスラ
「あの子達は皆、強く優しい騎士へと成長されました…きっと、大丈夫ですよ! 今年から短大生なので、実習などで四国に行きたいですね…」
-
十三宮 巫部 仁
「イズミちゃん達の、天空への航路に…どうか幸せがありますように^^」
-
一ノ瀬 蒼空
「…ハンターⅤからハンターⅠに、間も無く
今治 市大三島 に到達。また、併せて虚人東山軍の接近を確認! 中隊長、交戦許可を!」 -
鵜久森 ミナト
「…3年前の記憶を胸に、改めて問う! ボク達は誰だ!? キミの名前は?」
-
鷺原 イズミ
「あたしは…サイドワインダー伊予松山基地ハンター中隊4番機、鷺原イズミ! ハンターⅣ、いざ交戦します!」
-
飛行機雲を臨む南の大地には、未来都市として復活した高知城下町が広がっている。
-
再建された天守閣の展望台からは、何歳になっても元気そうな夫婦が、雲のカナタを駆け抜ける機影に向けて、大きく手を振っていた。
-
鷺原 イズミ
「…そして、あたしは…この世界で一番、幸せな4番機です!」
-
完
-
山田 ランスロ 玉子
「…おい、団長! 基地を偵察していたら、この『鵜久森団語録ノート』を拾ったのだが、強そうだから読んでも良いか!?」
-
鵜久森 ミナト
「あー! そ…それは絶対に読んじゃ駄目! ボクの黒歴史だから…!」
-
松山 なつき
「あの頃のミナトは…んー、若気の至りだとしても許されなかったね(苦笑)」
-
山田 ランスロ 玉子
「えっと、何々…団長、この『死への
誘 い漂う罪なる香水』って、何すか?」 -
鵜久森 ミナト
「だ…だから読むなって言ってるだろうがぁっ!」
-
人は、時と共に変わる生き物である。
-
-
制作 スライダーの会
-
松山 いつき
「あ…あれ、私の出番は…?」
タップで続きを読む