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※このエピソードには、やや生々しい津波災害などの描写が含まれています。
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十三宮 幸
旧日本国家の壊滅後、瀬戸内海に出没している犯罪組織「虚人東山軍」と、彼らと戦い続ける四国の義勇軍「サイドワインダー」。
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十三宮 幸
これは、本篇の3年前に起きた戦争と、そこに参陣した少女達の軌跡を中心に、サイドワインダー結成の歴史に迫る物語である…。
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松山 なつき
「アタシは…」
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鵜久森 ミナト
「この世界を…!」
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十三宮 カナタ
「…変える!」
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2649年(光復元年)6月に日本列島を襲った、太平洋巨大津波。
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分裂した小惑星の破片が、隕石雨として地表に降り注ぐ中、太平洋などの海にも隕石が落下し、大きな津波を引き起こした。
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この巨大津波により、高知平野の集落は完全に壊滅し、徳島平野も半壊。
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当時、四国を独裁的に支配していた山田主席は、逃げ惑う住民達を見捨て、私物化した財産を持ち去り、真っ先に逃亡してしまった。
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この日「高知県」は消滅し、県民の大半が亡くなり、辛うじて逃げ延びた人々にも、苦難の歳月が待ち受けていた…。
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こんな「怖い話」がある。
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ある時、虚人東山軍の一味が土佐地方(旧高知県域)を襲撃した…のだが、何日経っても、誰も帰って来なかった。
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後日、全員の遺体が発見された。
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不毛の土佐に攻め込んだものの、そこには襲う人間も、奪う食糧も無く、飢えに追い詰められた彼らは、仲間割れの果てに、全員が餓死したのであった。
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こんな『死国』に人々が安住できるはずも無く、未来ある子供達を優先的に、本州や九州へと避難させる作戦が進められていた。
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その土佐で戦い、決死に生き残っていた住民達の中に、鷺原家の姿があった。
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須崎グラティア優和
「…もう、これ以上は乗れません! お子様を優先して下さい!」
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「ママぁ! パパぁ! どうして、一緒に来てくれないの!?」
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須崎グラティア優和
「東山の増援軍が接近中ですって!? もう時間がありません! 出航します!」
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「離して! ママ・パパと離れたくないよ~!」
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須崎グラティア優和
「このまま土佐に踏み留まっても、皆が死んでしまうだけです! 子供達だけでも、疎開させるしかありません! さあ、脱出します!」
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敵襲の警報が鳴り響く中、轟音と共に急発進し、手を伸ばした先の土佐湾が、見る見る遠くなって行く。
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それと共に、幼き少女の僅かな記憶も、置き忘れたように薄れてゆく。
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少女の心に残ったのは、土佐に踏み留まった両親の面影と、「土佐を離れ、海の彼方に別れても、強く健やかに、幸せに生きて」という、最後の言葉だけであった…。
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十三宮 伊豆守 聖
「…この子の、お名前は?」
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須崎グラティア優和
「それが…言葉を覚えるには幼過ぎる上に、眼前で両親を襲われたショックで、記憶が錯乱しており、とても会話できるような状態では…」
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「…トサ…カナタ…うぅ…」
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十三宮 伊豆守 聖
「分かりました。ならば本日より、あなたの御名は…」
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十三宮 カナタ
「…お母さん…お父さん…どうして…」
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嶺咲 ウルスラ
「…カナタ様、十三宮カナタ様! 大丈夫ですか?」
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十三宮 カナタ
「…あ、ウルスラ先輩…」
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嶺咲 ウルスラ
「また、あの日の夢を…?」
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十三宮 カナタ
「…はい、そうみたいです…」
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嶺咲 ウルスラ
「睡眠不足は、若い乙女の敵ですよ。睡眠薬と、必要ならば精神安定剤を処方させます。カウンセラーにも、話しておきますね」
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十三宮 瀨紲
「そうですね、用意しておきましょう」
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十三宮 カナタ
「…ありがとう、御座います…」
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嶺咲 ウルスラ
「先輩はね、カナタ様のような、可哀想な弱き者を救済できる大人になるため、この教会で修行しているのです。だから、なんでも相談して下さいね…!」
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十三宮 カナタ
「…ウルスラ先輩、本当にありがとう…」
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嶺咲 ウルスラ
「カナタ様を棄てた御両親など、もう生きてはいないでしょう。辛い過去など、忘れなさい。
天主 の神様と私達を信じ、未来への現在を…今を生きるのです!」 -
十三宮 カナタ
「…はい、頑張ります…」
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あの日、土佐湾から太平洋に「放流」され、黒潮海流に乗って東海道へと漂着した少女は、現地の教会孤児院に保護された後、その僅かな記憶から「十三宮カナタ」と名付けられ、この日に至っている。
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比較的、平穏な生活を送ってはいるが、記憶の彼方に眠る両親の面影を、どうしても忘れる事ができない…。
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十三宮 巫部 仁
「カナタちゃん、大丈夫?」
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十三宮 カナタ
「…あ、めぐちゃん先輩…」
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十三宮 巫部 仁
「一人で眠るのが寂しい夜は、めぐちゃん達も一緒に寝てあげるよ! 明日は、念々佳ちゃん達も遊びに来るよ! カナタちゃんは、一人じゃないんだよ^^」
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十三宮 幸
「
仁 さんの言う通り、困った時は助け合うよ!」 -
十三宮 カナタ
「…あなたも、皆ありがとう…」
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そんな十三宮カナタの人生に、大きな転機が訪れようとしていた…。
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時は、2665(光復十七)年。
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無政府状態の四国を防衛し、壮絶な全滅を遂げた義勇軍「旧ハンター中隊」の、唯一の生き残りである石本ユミカ中佐(大学三年生)が、旧愛媛県域を制圧し、松山市を臨時首都とする軍事政権、伊予軍政府を樹立していた。
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そして翌年、2666(光復十八)年。
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軍備を固めた石本大佐(大学四年生)は、分裂・内乱状態の四国を統一するため、最終段階の作戦に着手した。
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伊予軍政府は、北四国(伊予・讃岐)をほぼ平定しているが、南四国(土佐・阿波)には、未だ虚人東山軍の占領地域がある。
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特に、土佐で繁殖している「東山備中
T 型」は、女性を襲わなくても無性生殖できる変種であり、人間への感染力は低いが、脳容積が大きくて悪知恵が働き、社会に対する重症化リスクは甚大である。 -
伊予 松山城址(じょうし)
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石本 ユミカ
「…この部屋、大昔は天守閣だったそうよ。今は見ての通り、事故物件みたいな廃墟だけれども」
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大城エリザベス椿姫
「城だったと分かるだけ、まだ良いではありませんか。讃岐高松などは、もっと酷い情況ですよ」
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石本大佐は、税を私物化していた山田主席とは異なり、自らの権力を誇示せず、住民の福祉を優先しようと心掛けていた。
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伊予軍政府の臨時基地である松山城跡地も、総司令官の「城」とは思えぬほど質素で、荒廃したままである。
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倹約して浮いた予算を、将兵と軍需品の確保に充当していた。
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石本 ユミカ
「…さて、既に話した通り、高知の虚人東山軍を南北から挟撃し、土佐を奪還するわ。特に北部戦線は、シスターリズの協力が必要不可欠よ」
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大城エリザベス椿姫
「はい、最善を尽くします…ただ、私達のダイバー中隊も再建途上ですので、人員が…やはり、例の鵜久森ギャングを動かさざるを得ないのでしょうか…?」
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石本 ユミカ
「あぁ…鵜久森団、ね…」
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鵜久森団、正式名称「高松十字会」とは、虚人東山軍に対抗して、北四国の中等学生らが結成した、武装不良集団である。
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「弱肉強食」「毒を以て毒を制す」という価値観に基づき、虚人東山軍への報復テロ行為を繰り返している。
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しかし…敵の死体を切り刻んで晒し者にしたり、手柄のために味方を見捨てたり、第三者を巻き込む無差別攻撃など、あまりにも猟奇的な「正義」を執行しているため、住民からの支持を得られていない。
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その団長と目されているのが、鵜久森ミナトという血気盛んな女学生(中等学校二年生)である。
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石本 ユミカ
「鵜久森団の子達が、東山軍の奴らを殺してやりたいって思う気持ちは、痛いほど分かるけれど…」
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鵜久森団の中には、東山備中の「血」を憎み、彼(彼女?)に襲われた女性や、その間に生まれた子供を敵視する者も居た。
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そのため伊予松山を統治する石本大佐は、鵜久森団の活動を規制したが、彼女らは讃岐高松に逃れ、暴力的な活動を続けている。
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大城エリザベス椿姫
「敵の敵は味方、とも言います。鵜久森ギャングと虚人東山軍、両者を潰し合わせ、共倒れになって頂くのが、良いのかも知れませんね…」
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石本 ユミカ
「そうね…これは戦争、利用できる者は利用するわ。でも、いつか…」
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大城エリザベス椿姫
「鵜久森ギャングの者達にも、回心の機会を与えねばなりませんね…
エイメン 」 -
若い女子学生だらけの鵜久森団が暴れ回れば、欲望の塊である虚人東山軍を陽動できる。
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その隙に、土佐高知へと進撃できれば…!
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石本 ユミカ
「そこで重要になるのが南部戦線、土佐湾から高知平野への上陸! これには海軍艦艇など、多大な兵力が必要ね」
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大城エリザベス椿姫
「こればかりは、四国だけでは足りません。日本中・世界中から義勇兵を集めると共に、軍需産業にも支援を求めましょう」
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土佐高知では、虚人東山軍に誘拐された住民らが、人質として強制労働させられている…との情報もある。
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国内外あらゆる勢力に助けを求め、速やかに準備を整え、一刻も早く作戦を決行・完遂せねばならない!
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石本 ユミカ
「恐らく、少なくない犠牲が出るわ…死傷者を一人でも減らすため、救護活動を担ってくれる人達も大切ね」
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大城エリザベス椿姫
「そういう事ならば、私達のネットワークにお任せ下さい。人道に関しては、熱心な教会が多数、御座います。早速ですが、信頼できる所に連絡しますね…」
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そう言って、讃岐高松の大城エリザベス大佐は、胸元の十字架を握りながら微笑んだ。
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十三宮 伊豆守 聖
「…はい、畏まりました。では、土佐に教会騎士団を派遣致します。大城様にも、どうか天主の御加護がありますよう…エイメン」
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遂に、この時が来てしまった…と、その司祭は思った。
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司祭は、自分の妹として今日まで育てた十三宮カナタに、全てを話した。
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「十三宮カナタ」は仮の幼名で、真の実名は、土佐に残った御両親と再会した時に、名付けられる約束だったという事。
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その土佐を奪還するための上陸作戦が、間も無く始まろうとしている事。
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そして、カナタの両親は…死亡している可能性が高いものの、土佐の地で生存している可能性も、僅かながらゼロではない…という事。
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全てを知らされた十三宮カナタは、予想通りの反応を示した。
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十三宮 カナタ
「…
聖 お姉ちゃん、私…土佐に帰りたい。お母さん・お父さんに、逢いに行きたい!」 -
十三宮 幸
「カナタさんの気持ちは分かるけど、今の土佐に向かうのは危ないよ! 連合軍が高知を制圧した後のほうが、安全なのでは…」
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十三宮 カナタ
「それじゃ、間に合わないかも知れない! 私は、この手で両親を助けたい! お姉ちゃん、お願い! 私に、土佐奪還の先陣を切らせて下さい…!」
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十三宮 巫部 仁
「カナタちゃん…」
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十三宮 伊豆守 聖
「…止めても無駄でしょうから、止めません…が、これは大規模な戦いであり、命懸けの任務になります。私達が全身全霊を以て、カナタちゃんを護ります!」
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禅定門 念々佳
「私も一緒に行くよ、カナタちゃん!」
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十三宮 カナタ
「念々佳ちゃんも、来てくれるの!?」
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禅定門 念々佳
「昔からの親友なんだから、当然よ!」
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十三宮 伊豆守 聖
「
勇 とウルスラ様も、此度 は宜しくお願い申し上げます」 -
十三宮 勇
「実戦経験を積めるなんて、私としても好都合よ。やってやるわ!」
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嶺咲 ウルスラ
「はい、お任せ下さい…!」
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十三宮 伊豆守 聖
「そして…あなたは分隊長として、常にカナタちゃんと行動を共にして下さい」
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十三宮 幸
「分かったよ、姉さん!」
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土佐 高知城址
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17年前の巨大津波で壊滅し、復興せぬまま放置されていた高知城下町。
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その地下に、虚人東山軍のアジトが張り巡らされていた。
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山田 ランスロ 玉子
「うぅ…
何故 、こんな所に某 が監禁されねばならぬのだ…ママぁ、助けて~!」 -
夢宮 魅咲
「…私達、このまま死ぬのかな…」
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廊下から、足音が近付いて来た。
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「お二方、お静かに。御膳を持って参りました」
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山田 ランスロ 玉子
「お前は、東山軍のサキュバス…さては某に、あんな事やこんな事をするのだろう! エロ漫画みたいに!」
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「はい、その方向で前向きに検討しております…が、もう少し揉み応えが欲しいですね~」
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山田 ランスロ 玉子
「否定しないのかよ! しかも一言、余計だぞ!」
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夢宮 魅咲
「…もう、死なせて…」
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黒沢俄勝は、周囲に自分以外の一味が居ないのを確認してから、静かに口を開いた。
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「…間も無く、反東山連合軍が土佐に総攻撃を仕掛けます。この場所も、混乱状態に陥るでしょう。その隙に、お逃げ下さい…」
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そう言って食膳を置き、囚人達の凍えた体を(自慢の爆乳で)癒した俄勝は、立ち上がって着衣を整え、廊下の奥へと戻って行った。
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「…さて、次は鷺原様の牢に配膳ですね」
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東山 備中
「俄勝、御苦労だなぁ!」
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「あら備中様、お疲れ様です(合掌)」
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東山 備中
「そんな淫乱な格好の癖して、礼儀だけはお上品なんて、抜け目ねぇ女だなぁ」
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「んふふっ…お褒めの御言葉、ありがとう御座います。ところで備中様、近頃は女遊びが御無沙汰のようですが…宜しければ今宵、
私 を抱きませんか?」 -
驚くべき事に、その「東山備中」は、サキュバスである黒沢俄勝に誘惑されても、全く動じていない様子だった。
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東山 備中
「わりぃな俄勝、俺はもう女に興味ねぇんだわ」
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「おや、備中様らしくないですね…?」
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東山 備中
「おいおい…この俺を、あんな頭わりぃ『オリジナル』と一緒にしねぇでくれ。俺達は『タウ型』だ。衝動的な情欲じゃなくて、冷静に知能で勝負するんだ!」
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
(…東山備中タウ型は、
女人 と交わらぬ無性生殖で一味を殖やす。色欲が衰えた分、頭脳が強化されている…) -
東山 備中
「俺達が直接、女共を犯したりするよりも、奴らを遊郭で奴隷労働させてよ、そこの客から金を巻き上げたほうが、遥かに効率的な商売だと思わねぇか?」
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
(うわぁ…これは、元の備中様より
質 が悪いかも…) -
黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「なるほど…では、囚人への配膳、並びに食後の回収が残っておりますので、そろそろ失礼致します…」
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東山 備中
「待て、俄勝」
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黒沢 俄勝大姉 蓬艾
「は…はい、なんでしょう…?」
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東山 備中
「貴様が、敵に内通している事は分かっている。余計な真似をすれば、人質の命は無いと思え」
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山陽道 周防県 長門郡 宇部市
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﨔木 長門守 夜慧
「…うわぁっ! また負けたよ…未玖ねーちゃん、お前は本当に強いな!?」
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中本 未玖
「え、そうかな…?」
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﨔木 長門守 夜慧
「次は何しよっか? 人狼ゲームなら、負けないぞ!」
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中本 未玖
「ごめん…そろそろ安芸(広島)に帰らないと、彼に怒られちゃう…」
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﨔木 長門守 夜慧
「あ、お前(また)新しい恋人でも出来たのかよ?」
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中本 未玖
「そう…今後こそは、私を殴ったりしない人だから…(フラグ)」
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﨔木 長門守 夜慧
「俺は別に、気が合えば誰でも良いんだけどさ、たまに思うんだけど、いっそ女同士のほうが楽なんじゃね?」
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中本 未玖
「それはそれで、きっと本人達にしか分からない悩みがあると思うよ」
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﨔木 長門守 夜慧
「帰り道は国鉄? それとも宇部空港?」
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中本 未玖
「私、飛行機に乗るの好きだから、宇部空港かな。工学を専攻したのも、機械に関心あるからだし」
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﨔木 長門守 夜慧
「お前、何歳だっけ?」
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中本 未玖
「大学四年、確か…四国の偉い人と同い年だったはず。来年には、就職かな?」
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﨔木 長門守 夜慧
「未玖ねーちゃんも俺みたいに、戦闘機の免許を取らないのか? てかさ、そんなに飛ぶのが大好きなら、空軍にでも入れば良くね?」
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中本 未玖
「私に軍人なんて、向いてないと思うけど…私は、どちらかと言えば、強さを求めるよりも、弱い子達を守る人になりたいな」
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﨔木 長門守 夜慧
「じゃあさ、弱い奴らを守るために、強くなれば良くね?」
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中本 未玖
「ふふっ…まだ一年生なのに、最近の中等学生って鋭いね」
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3年後には、﨔木夜慧と共に早期警戒機などで活躍している中本未玖も、当時は就活生の一人に過ぎなかった。
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﨔木 長門守 夜慧
「…ん? あれ、知らない奴からメールが届いた…なんだこれ、アメリカ軍が…とか書かれているけど、何か事件でもあったのか?」
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北太平洋 航空母艦マーシャル
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