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出逢い
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悔しいか……?
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ならば力を欲せ、この石と共に力を宿せ……
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水上 ジャンヌ 溟
霞んだ目では何も見えない……でもずっと私を呼んでいる。
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水上 ジャンヌ 溟
そうあいつさえ……あの力に勝てる、あの石が欲しい……!
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はっと目が覚めた。
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いつも居る水溜まりに仰向けになっていた。
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あの時、望んだ力を宿した時の夢。
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本当に夢だったのか、分からない。
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でも確かに
ポセイドン の加護は水上ジャンヌ溟に宿っている。 -
頭に着けている髪飾りを撫でながら水に浸り、また思考し始めた。
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あの女に勝つために……あずさを守るために……
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あの女とは業火の鬼狩りとして戦い続けた、戦闘狂
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碓井槐である。
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生まれた時代は溟が先であったが、
類稀 なるセンスと信仰心によって人神様として崇められていた。 -
だから力は上であるはずだった。
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あの日までは……
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(平安時代)
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水上 ジャンヌ 溟
「あははッ、さあ供物を納めなさい。私がこの地を守ってあげているのよ。雑魚如きが歯向かうじゃないわよ!」
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水上 ジャンヌ 溟
この頃の私は識属性であり、私に勝てる者など存在しないと過信していました。
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むしゃくしゃする日は村の住人に八つ当たりし、鬱憤を晴らし、食料も住処も最高の物しかない生活をしていた。
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無論、村の反感は買ったが全て力で
捩 じ伏せた。 -
今日も歯向かって来た男を足で蹴散らした。
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成幸
「神とやら…! 必ず、お前は……!」
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水上 ジャンヌ 溟
「私は神なのよ? お前が決める事じゃない。私が強い、私が一番、それ以外は絶対許さない……そうお前のように足で転がしてあげるわ……」
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その男は、めげずに私に挑み続けた。
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そして、あの女、碓井槐が現れた。
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碓井 丹波守 槐
「うみたん、槐と遊ぼ?」
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水上 ジャンヌ 溟
「は? なんなの? 気安く話し掛けないで」
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碓井 丹波守 槐
「遊ばないの? あ、それとも、槐に負けちゃうから遊べないの?」
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水上 ジャンヌ 溟
「は? 私が負ける? ちんちくりんのお前に勝てる所など無いわ」
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碓井 丹波守 槐
「じゃあ、槐とあそんでくれる……よね?」
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水上 ジャンヌ 溟
「遊ばずとも力の格差を見せてあげるわよ!」
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碓井 丹波守 槐
「じゃあいくよ!」
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碓井槐は話し声とは全く違う雰囲気を
纏 い攻めて来た。 -
だが、そんな事は全く重要ではなかった。
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その頃の碓井槐は全盛期であり、日本列島で碓井槐に悪だと認定されると火を包まれ壊滅させられていた。
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碓井槐は生粋の戦闘狂だった。
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長年生きて来てここまで押されるのは……初めて負けると感じた。
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水上 ジャンヌ 溟
「は……あっ……ま……けた……?」
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碓井 丹波守 槐
「あらま、もう終わっちゃった。でもうみたんとの遊び楽しかったよ! またね」
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あれが遊びだと言うのか?
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識属性を以てもなお、負けたというの?
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負けた悔しさを初めて感じた。
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悔しさで涙が溢れて止まらない……
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火に包まれた住処で立ち尽くしていた。
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あぁ……この、この炎が嫌い……こんな私を見ないで……
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業火の魔女、
ジャンヌ ダルク のように炎に焼かれた。 -
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この炎で私は新たに水上ジャンヌ溟となり生まれ変わった。
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そこからは命
辛々 生き延びたが、碓井槐に怯えて生活をしていた。 -
だが碓井槐は一度たりとも姿を現さなかった。
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負けた喪失感と最高の暮らしが無くなってしまった頃には、私は一人になってしまった。
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南アルプス赤石山脈の近くに身を隠して、どれほどの月日が経ったのだろう。
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あの炎を思い出して、うなされていた。
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水上 ジャンヌ 溟
「やだ……! やめて! やめて!!」
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涙か汗か水か分からない水分で視界が霞んで見えない。
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見えない……
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手に何かを置かれた。
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何かが語りかける。
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水上 ジャンヌ 溟
碓井槐に負けて、この様か?
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水上 ジャンヌ 溟
悔しいだろう?
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水上 ジャンヌ 溟
悔しいか……?
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水上 ジャンヌ 溟
ならば力を欲せ、この石と共に力を宿せ……
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手には石が置いてあるらしい。
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聴いていれば、この石に私の欲である、碓井槐に負けたくないという意志を込めると力をくれるという。
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一人になった間にずっと、溜めていたこの意志を……
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これを手に入れれば、私は一番に戻れる。
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私より強い者は存在しない世界が、もう一度生まれる?
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精一杯、意志を込めて願い続けた。
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目を開くと、ポセイドンの加護を受け、使者となった。
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識属性はそのままであるらしいが、私の記憶を読み取って火属性に対抗するため水属性を高めたらしい。
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渡された杖と髪飾りを持って、力を実感した。
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でも力を手に入れた私は過信しなかった。
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ただずっと山の水に浸り、篭っていた。
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2655(光復七)年頃
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小さな赤髪の子供が私を見付けた。
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5歳ぐらいだろうか?
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ある程度の言葉は理解できるらしい。
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何度も近寄るなと言って追い返したのだが、懲りずに毎日私の所に姿を見せた。
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碓井槐との思い出がよぎり、裏切るのかと思っていたら、少女は。
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嶺咲 ウルスラ
「絶対裏切らないよ女神様。だからずっとずっと一緒に居て?」
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その目に吸い込まれた。
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長い間、人に触れずにいた心に取り憑かれた。
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私の一番……この子は私のモノ……!
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少女、嶺咲あずさとの出会いだった。
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私は、あずさに依存しだした。
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私の力全て、あの子に捧げる。
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だから、あの石を上げた。
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全部、ぜんぶ、ぜんブぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ!!!!
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あずさを邪魔するものは消し去ってしまう。
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愛しい私の子よ。
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その瞳で全てを奪ってしまって。
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私の初めて全てを捧げた。
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私の駒となれ。
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