-
-
一ノ瀬 蒼空
桜橋蘭香氏が開発した"
母の 刻印 "。 -
一ノ瀬 蒼空
それは、東山備中の子供が将来、人格暴走プログラムにより、凶暴化する事を防ぐ「遺伝子書き換え技術」である。
-
一ノ瀬 蒼空
倫理的観点での風当たりが強かったが、石本ユミカ准将の娘である石本のぞみが臨床試験を受け、極めて良好な結果が出た事もあり、実用化に至った。
-
一ノ瀬 蒼空
母の刻印が実用化され、1週間後、司令官室の扉を叩く音がした。
-
桜橋 蘭香
「石本司令、失礼します」
-
石本 ユミカ
「蘭香さんですか、どうぞ」
-
母の刻印の開発者である蘭香と共に部屋に入って来たのは妊婦と、その御両親である40代後半の夫婦だ。
-
その妊婦のお腹の大きさからして、妊娠8~9か月だろうか、しかし妊婦にしては表情にあどけなさが残る。
-
ユミカは、失礼を承知し問うた。
-
石本 ユミカ
「失礼しますが…娘さんはお幾つですか?」
-
四国住民
「えっと…娘は17歳です」
-
何と、その妊婦はサイドワインダーに所属する隊員と同じ年代だったのだ。
-
この少女が、東山備中に穢された結果、その子供を身籠ったと推測するのは容易だった。
-
石本 ユミカ
「蘭香さん、この方々にお茶とお菓子をお出ししたら私達だけにして頂けますか?」
-
桜橋 蘭香
「はい」
-
ユミカがそう言うと、蘭香はお茶とお菓子を出し、部屋を後にした。
-
石本 ユミカ
「
新宮 茶と薄墨 羊羮 です、心が落ち着きますよ」 -
四国住民
「ありがとう御座います…」
-
石本 ユミカ
「お
訊 きしますが…あなた達はどこからここへ来たのですか?」 -
ユミカが質問すると、少女の口から驚きの言葉が出た。
-
四国住民
「讃岐の高松からです…」
-
石本 ユミカ
「何と…わざわざ松山まで…でも何故、高松基地に向かわなかったのですか?」
-
四国住民
「高松基地には東山の子供に施す母の刻印のシステムがまだ整っていなくて…」
-
石本 ユミカ
「我々も整備を進めているのですが…申し訳ありません…」
-
その後、ご家族は「
川田 」と名乗った。 -
川田さんは、高等教育学校の部活動の帰りに東山備中に出遭ってしまった。
-
彼女が通う高教学校の通学路は、海沿いを通る場所があり、そこで東山備中と出喰わし、被害に遭ったという。
-
その後、彼女は東山の子供を妊娠してしまった。
-
この時、妊娠7か月…四国では妊娠中絶が禁止されており、身籠ってしまった以上、東山の子を産むしか無かった。
-
事態を重く見た彼女の両親は、サイドワインダー讃岐高松基地へ連絡を取り、そこへ向かった。
-
しかし…。
-
サイドワインダー讃岐高松基地
-
塔樹 無敎
「すいません…高松基地には母の刻印に関するシステムがまだ整っていませんので…」
-
四国住民
「そんな…」
-
四国住民
「じゃあどうすれば!?」
-
塔樹 無敎
「それでしたら、伊予松山基地が母の刻印に関するシステムが整っています。そちらへ向かわれては
如何 かと…松山から高松の往復の交通費は我々の方で負担致しますし、伊予松山基地へもその旨の連絡を致します」 -
四国住民
「「ありがとう御座います…」」
-
こうして川田さん一家は川田さんのお腹の子供と共に、讃岐高松から伊予松山へとやって来たのだという。
-
全てを話すと、川田さんの御両親はユミカに深々と頭を下げた。
-
四国住民
「お願いです! どうか東山軍の連中を懲らしめて下さい!!」
-
四国住民
「あの子は私達の掛け替えの無い宝物なんです! 泣き寝入りなんかしたくありません!」
-
石本 ユミカ
「ふ、二人とも頭を上げて下さい…娘さんの前です…」
-
四国住民
「あの畜生は娘の心に消えない傷を付けたんだ! 目に入れても痛くないくらいの宝物に!!」
-
四国住民
「あの畜生に穢されても娘は『お腹の子供は絶対に産むんだ!』って言った! 私達の娘に東山の子の母親という十字架を背負わせやがってえぇぇ!!」
-
川田さんの御両親の表情は、まさに"鬼が宿る"という言葉通りだった…。
-
四国住民
「お父さん…お母さん…ありがとう…私の為にここまでしてくれて…私、この子を産むって決めた以上覚悟はしているから!」
-
四国住民
「「…っ!」」
-
石本 ユミカ
「…分かりました、あなた達の涙と怒り…私達に預からせて下さい」
-
四国住民
「ありがとう御座います…」
-
四国住民
「娘と生まれて来る孫と一緒に生きて行きたいんです…」
-
この慟哭を見過ごす事などできはしない…サイドワインダーの司令官としても、一人の子を持つ母親としても…。
-
高松での任務では、高松基地司令の協力が必要不可欠となる。
-
母の刻印の処置を行う為、川田さんを蘭香に預け、基地の宿泊施設に川田さんの両親を向かわせた後、ユミカはサイドワインダー讃岐高松基地へ連絡を取った。
-
石本 ユミカ
「久し振りね"シスター リズ"」
-
大城エリザベス椿姫
「お久し振りですユミカさん。あなたとこうして言葉を交わすのは何年振りでしょうか…♪」
-
彼女の名は大城エリザベス椿姫、サイドワインダー讃岐高松基地の司令官を務める准将である。
-
ユミカは彼女に事情を説明し、高松での任務の助力を求めた。
-
大城エリザベス椿姫
「その件についてですが、既にこちらでもそれらに関する情報は入っています。犯人は虚人東山軍で間違いありません…彼女の証言を基にした情報によると『1人の通常型と4人の身長3メートル台の"ギガント"と呼ばれる東山備中が被害者に襲い掛かった』と…」
-
石本 ユミカ
「ありがとう、情報提供感謝するわ」
-
我欲の為に、多勢で被害者を穢し身籠らせるとは…。
-
石本 ユミカ
「どうあろうと被害者の未来と尊厳を踏み
躙 った罪に変わりは無い…私達が被害者一家の怒りと涙をぶつける!」 -
自分達が行った蛮行の報い…その身を以て後悔するがいい!
-
そして、ユミカと蒼空は高松へ向かった。
-
一ノ瀬 蒼空
「司令、シスター リズ…大城准将とはどのような方なのですか?」
-
石本 ユミカ
「えぇ…もしも虚人東山軍側から彼女を見るなら…一切の感情を持ち合わせない冷酷無比の魔女よ」
-
一ノ瀬 蒼空
「そ、そうなんですか…」
-
讃岐県 高松市
-
サイドワインダー讃岐高松基地
-
大城エリザベス椿姫
「良くいらっしゃいましたね『四国の聖母マリア』様…♪」
-
石本 ユミカ
「シスター リズ、今回はお世話になります」
-
一ノ瀬 蒼空
「…(この方が…サイドワインダー讃岐高松基地の司令官…大城エリザベス椿姫准将…何だかユミカさんに似て優しい人…)」
-
彼女こそサイドワインダー讃岐高松基地の司令官、大城エリザベス椿姫である。
-
彼女は
生粋 のプロテスタント教徒であるが、ユミカ同様に山鳩児童院の院長も兼任し、そこの子供達や虚人東山軍に虐げられた者達に対し、献身的に尽くす事から「シスター リズ」と呼ばれ尊敬されている。 -
桜橋 遊理
「シスターさんっ! テストで80点取ったよ!」
-
大城エリザベス椿姫
「じゃあ今度100点取ったらみんなでピクニックに行きましょうか♪」
-
桜橋 遊理
「わーい!!」
-
しかしそんな彼女にも、もう一つの顔がある…。
-
大城エリザベス椿姫
「さぁ、地獄でその罪を懺悔なさい」
-
東山 備中
「ひ…ひぃぃ…だずげでぇ…」
-
彼女は、高松基地の「ミネルバ中隊」の初期メンバーにして「ダイバー
零 」と呼ばれた。 -
虚人東山軍からは、東山備中の返り血で真っ赤に染まる事から「ブラッディー リズ(直訳:
血塗 れリズ)」とも呼ばれている…。 -
石本 ユミカ
「それで、4人のギガントを連れた例の東山が現れる場所と時間帯は掴めているの?」
-
大城エリザベス椿姫
「えぇ…時間帯は夕方から夜にかけて、海沿いの道に出没する事が多い事から…下校中の児童生徒を狙っています…」
-
石本 ユミカ
「なるほど…力の差を用いて蛮行に及ぶとは…」
-
一ノ瀬 蒼空
「まさか、東山備中にも巨大化した者も居たなんて…」
-
そして、4人のギガントを連れた東山備中の目撃情報が一番多い海沿いの道を張り込んでいると…目撃情報の通り、例の東山備中が上陸して来た。
-
東山 備中
「ヒャハァァ! JK発見っ!!」
-
禅定門 念々佳
「で、出たぁ!?」
-
そして下校途中の高等学生に襲い掛かった、しかし…。
-
石本 ユミカ
「やはり睨んだ通りね、ここに上陸して来るのは読めていたわ」
-
大城エリザベス椿姫
「さぁ、あなた達の罪を数えましょうか…」
-
東山 備中
「な、何故松山と高松の司令官…いや、ハンター零とダイバー零がここに居る!?」
-
東山が驚くのは、無理も無い。
-
ユミカと椿姫は当時の訓練学校の同期であり、無政府下の四国を戦い生き抜いた「戦友」なのだ。
-
しかし、東山備中は苛立ちを隠す事無く大声でギガントを呼んだ。
-
東山 備中
「えぇい! 仕方ない! ギガント達ぃ! コイツらを叩きのめせぇ!!」
-
蒼空が高等学生を逃がして間も無く現れたのは、3メートルはあろうかという
躯体 を持つ明らかに知能が足りなさそうな東山備中達だった。 -
東山 備中(量産型)
「りーだー? まただれかけすのかぁ?」
-
東山 備中
「そこの二人を始末しろ! できなきゃお仕置きだぞ!」
-
大城エリザベス椿姫
「"また"と来ましたか…どうやらあの畜生達が消した人間は相当な数に上るようですね…」
-
石本 ユミカ
「ねぇ、この巨大ビッチ達はそんなに強いのかしら?」
-
東山 備中
「何を言うかと…ギガント達の強さは異常だ! まともにやり合えば誰も勝てないのは一目瞭然ってのも分からんのか!?」
-
大城エリザベス椿姫
「いつもなら軽くあしらう程度に相手するのですが…」
-
石本 ユミカ
「あいにく私達は今、虫の居所が悪いの…東山、その言葉は取り消せないわよ」
-
一ノ瀬 蒼空
「!?(速いっ!?)」
-
東山 備中(量産型)
「なんだぁ? あたしとけんかしてかてると…ひぎゃ!?」
-
石本 ユミカ
「品性のない言動をしないで…」
-
大城エリザベス椿姫
「品性の欠片も無いギガント達の相手をする気は微塵も御座いませんので…」
-
東山 備中(量産型)
「ぎゃぴぃ?!」
-
東山 備中(量産型)
「ほげぁ!?」
-
東山 備中
「ぎ、ギガント達が全滅…!?」
-
石本 ユミカ
「体格とパワーが自慢のギガント達だけど、そんな物は全く意味を成さないわ」
-
大城エリザベス椿姫
「人体にはどうあれど鍛える事ができない急所があり、そこを突けば誰であろうと簡単にあなた達を倒せます…」
-
ユミカと椿姫は、ギガント達を殲滅…そして、主犯格の東山備中を追い詰めた。
-
東山 備中
「お前達…イカれてる…! なんでこんなに強過ぎるのさ!?」
-
石本 ユミカ
「畜生に答えるつもりは無いわ…」
-
大城エリザベス椿姫
「さぁ懺悔の時です…あなたの悪行を全て認め…」
-
石本 ユミカ
「「この世に別れを告げなさい」」
-
東山 備中
「いやだぁぁぁ!! だずげでぇぇぇ!!!」
-
その後、ビッチはユミカと椿姫の手で「懺悔」し、この世に別れを告げた。
-
そして川田さんは蘭香から母の刻印の処置を受け、3週間後に元気な女の子を出産した。
タップで続きを読む