【花月地院 陽成】九州伝承篇 龍宮の呼び声

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  • 十三宮 巫部 仁

    「…起立！ 礼！ 宜しくお願い致します^^」

  • 十三宮 瀨紲

    「琉球諸島での修学旅行、御苦労様でした。本日は事後学習として、皆さんのレポート課題を発表して頂こうと思います」

  • 十三宮 巫部 仁

    「はい！ 私達は沖縄島の儒艮（ジュゴン）と、世界の人魚に関する伝説を調べました！」

  • 十三宮 瀨紲

    「儒艮は海牛（かいぎゅう）類（哺乳綱（こう） 海牛目（もく））に属し、浅海に棲息する動物ですが、人魚との関わりが深い海獣の一つとも考えられていますね」

  • 十三宮 巫部 仁

    「そうなんです。人魚は、オリエント西アジアのフェニキア・バビロニアや、ヨーロッパのギリシャ神話、東アジアの中華・日本など、世界に広く居ります」

    「特に、フェニキアのダゴン（Dagon）様は、海の民ペリシテ人に信仰されていた神様で、古くは『旧約聖書 士師記』に登場し、現代の幻想文学でも知られています」

  • 十三宮 瀨紲

    「あー、あの『深き者共』ね…」

  • 十三宮 巫部 仁

    「また、ギリシャ神話のトリトン（Triton）様という御方も、半人半魚の神様です。海神ポセイドン（Poseidon）様の御子であり、海王星の第一衛星にも名付けられています」

    「そして、琉球王国の儒艮は、波浪を操り、津波を予知する海の精霊、龍宮の人魚であり、その肉体は人間に長寿を授ける…と謡（うた）われていますね」

  • 十三宮 瀨紲

    「さすが（我が最愛の）仁（めぐみ）さん、意欲的に調べてありますね」

  • 十三宮 巫部 仁

    「私もいつか、人魚さんと話してみたいなって思いました。そのためにも、海の自然環境を保全する事が大切です。以上です、ありがとう御座いました^^」

  • 十三宮 瀨紲

    「では次に、西日本からオンライン参加の学生さん達に、中継を繋ぎます。カメラ配信のチャンネルを、瀬戸内海に切り替えて…あれ、映らない？」

  • 橘樹 聖寿刀

    「ナビリアストラ！ 非常事態だ！」

  • 十三宮 瀨紲

    「何があったの？ 早く説明して」

  • 橘樹 聖寿刀

    「きゅ…九州が、日本列島から消えた…！」

  • 十三宮 瀨紲

    「どういう意味？ 最近、九州沿岸の船舶が、原因不明の海難事故に遭っている、という情報は入っているけれど…」

  • 橘樹 聖寿刀

    「人工衛星のレーダーに、九州が映らない！ 通信も全て、圏外になっている！ 島自体が海に水没でもしない限り、こんな事にはならないはずだ！」

  • 十三宮 巫部 仁

    「そんな…西海（さいかい）道には、私達の大切な仲間が、何人も居るのに…！」

  • 花月地院 陽成

    「…エルンスト！ どこに居るんだ!?」

  • 一ノ瀬 蒼空

    「物凄い高潮…周囲が見えない！」

  • 鷺原 イズミ

    「かげっちゃん！ もう時間がありません！ 早く撤退しましょう！」

  • 花月地院 陽成

    「一体、何が起きているんだ!?」

  • 瀬笈 緋夏麗

    「恐らくは、巨大な津波が九州に直撃したのでしょう…ですが、事前に津波警報が全く無いなんて…」

  • 花月地院 陽成

    「琴浦さん、あなたは水に詳しいのだろう？ 何か、分からないのか!?」

  • 琴浦 雫

    「この津波…普通の地震や火山じゃないし、台風でもなさそうね。大きな隕石が海中に落ちたか、水上ジャンヌが本気で暴発したか、あるいは…」

  • 鷺原 イズミ

    「…駄目です！ 大宰府にも、四国にも無線が通じません！ とにかく高い所、できれば九州山地のほうに避難しましょう！ 総員、退却です！」

  • 一ノ瀬 蒼空

    「急がないと、このままじゃ私達…！」

  • 花月地院 陽成

    「…ん？ 今、向こうにエルンストが居たような…！」

  • 瀬笈 緋夏麗

    「何をしているんですか!? 戻っちゃ駄目だって防災訓練で習ったでしょう！ このままじゃ、あなたまで逃げ遅れて…って、なんですかあの波は!?」

  • 琴浦 雫

    「あんな大きな津波、物理学的にあり得ないはず…こうなったら、あの空間それ自体を斬撃するしかない！ お願い、間に合って…！」

  • 鷺原 イズミ

    「斜め上から、大きな水塊が降って来る…！ かげっちゃん！ 避けてっ！」

  • 花月地院 陽成

    「…う、ぐっ…ここは、どこだ…？」

  • 花月地院 陽成

    　私、花月地院陽成はとても不思議な体験をした。

  • 花月地院 陽成

    ざぱーんっと、海水が波を立てた。

  • 花月地院 陽成

    実際に濡れた感触もあるし、いつも着ている法師の格好だ。

  • 花月地院 陽成

    「過去に飛んだのか。。。？」

  • 　取り敢えず濡れたままで居ると風邪を引くと思い、近くの洞窟に入った。

  • 呪符は濡れていなかったので、落ちていた木々を集めて火を起こした。

  • 花月地院 陽成

    「にしても。。。ここどこだ。。。？」

  • 　幽閉されていた期間が長かった為、地理に疎い陽成であった。

  • 　暫（しばら）く、焚き火を点けたまま服を乾かしていると何かが近くに寄って来た。

  • 身の危険を感じ、呪符を取り出した。

  • 花月地院 陽成

    「貴様！ 何者だ!!」

  • 人魚 海星

    「ご、ごめんなさいっ」

  • 　と、ひょこっと顔を出したのは人魚であった。

  • 花月地院 陽成

    「に、人魚。。。？」

  • 　実物を見るのは初めてだが、こんなに美しい者なのかと感心していたら、

  • 人魚 海星

    「ねぇ、その赤いの何？」

  • 　と聞かれた。

  • 花月地院 陽成

    「それは火だよ。触ると手が痛いから触っちゃダメだよ」

  • 　人魚はちゃんと忠告を聴き、火を眺めながら問い掛けた。

  • 人魚 海星

    「ねぇ、あなたも、人魚の鱗を取る人なの？」

  • 花月地院 陽成

    「鱗を取る？ いや、私はただの学生だ」

  • 人魚 海星

    「がくせい。。。。？」

  • 花月地院 陽成

    「物事を学ぶ所に行っているんだ！」

  • 人魚 海星

    「わぁぁ！ 凄い所だね!! いいなぁ!!」

  • 　人魚は、顔を輝かせながら陽成を見た。

  • 花月地院 陽成

    「ねぇ、なんで私のこと鱗を取る人だと思ったの？」

  • 人魚 海星

    「あ、それはね。。。」

  • 　人魚が話すにはここの集落の人間は、人魚の鱗を加工してそれは幸せを運ぶ物として売っているらしい。

  • だが、利益欲しさに乱暴に剥いだり、乱獲をしている人が現れているらしい。

  • 花月地院 陽成

    「それはただの暴力じゃないか。。。」

  • 人魚 海星

    「でもわたし達もね、漁船襲ったりとか網破いたりとかして人を困らせているの」

  • 花月地院 陽成

    「やられたらやり返すは違うんじゃないか。。。」

    「こうやって話ができるんだ！ 話し合えばきっと。。」

  • 　と、服の袖をぎゅっと掴んだ。

  • 人魚 海星

    「あなたって優しい人なんだね」

    「人なのにこんなに話し易い人初めて」

  • 花月地院 陽成

    「私達友達になろう！」

  • 人魚 海星

    「ともだち。。。？」

  • 花月地院 陽成

    「私は花月地院陽成！ 陽成って呼んでくれ！」

  • 人魚 海星

    「なまえ？ そんなの無い。。。。」

  • 花月地院 陽成

    「じゃあ考えてあげる。。。。んと。。。。えーーっと。。。」

    「海星（かいせい）！ あなたの名前は海星だよ！」

  • 人魚 海星

    「かいせい。。！ いい名前をありがとう。。。。」

  • 花月地院 陽成

    「海星、人間って悪い人かも知れないけど、ちゃんと向き合えばお互い悪い事はしないんじゃないか。。。？」

  • 人魚 海星

    「陽成。。でもね、もうやってしまった事は変わらないんだよ。。。。」

  • 花月地院 陽成

    「変わるよ。。。！ 私が変えてみせる！」

    「集落に案内してくれ。海星は危なくない範囲で大丈夫だ」

  • 人魚 海星

    「わ、わかった。。。」

  • 　長い時間話していたのだろう、波は緩やかになっており晴れていた。

  • 沖沿いを歩いて行くと、集落を見付けた。

  • 人魚 海星

    「陽成、わたし来られるのここまで。。。じゃあ待ってるね。。。」

  • 花月地院 陽成

    「分かった！ 海星待っていてくれ！」

  • 　砂浜まで歩いて行き、集落の少女に話し掛けた。

  • めい

    「ど、どなたですか。。。！」

  • 花月地院 陽成

    「花月地院陽成だ！ 鱗を売っている所を知りたい教えてくれ。。！」

  • めい

    「か、花月地院様。。?!」

  • ひなこ

    「こんな所まで御足労頂きありがとう御座います。加工場と販売店はこちらです」

  • 花月地院 陽成

    （いつどの時代でも花月地院は残り続けてるんだな。。。。いやな者だな。。）

  • 　少女の道案内に従い付いて行った先に、繁盛しているお店があった。

  • ゆうか

    「ほらー。人魚の鱗だよお。買った買った～！」

  • しのぶ

    「これを頂戴」

  • のあ

    「へい、お待ち」

  • 　当たり前のように鱗を加工してネックレスや、ブレスレットにしていた。

  • 花月地院 陽成

    「ほう、これが幸せを運ぶ物か」

  • しのぶ

    「ええ、そちら大変売れていて品薄なんです」

  • 花月地院 陽成

    「ああ、そうか」

  • ひなこ

    「か、花月地院様、一つお願いがあります。聴いて頂けないでしょうか？」

  • 花月地院 陽成

    「なんだ、話してみろ」

  • のあ

    「その幸せを運ぶ鱗が最近取れなくなっており、このままでは集落が持ちません。。。」

  • みずき

    「人魚は漁船や海産物をめちゃくちゃにして困っているんです!!」

  • のあ

    「お助け下さい。。！」

  • 花月地院 陽成

    「なら話し合えばいいではないか」

  • みずき

    「そんな！ 人間を襲う人魚ですよ！」

  • のあ

    「話す事などありません!!!」

  • 花月地院 陽成

    「なら、無理だな、せいぜい頑張れ」

  • ゆうか

    「花月地院様。。。。！ なんとか。。。」

  • いおり

    「おおおーい!! 大物が取れだぞ!!! 人魚だ！ 鱗剥げ!!」

  • と、海星を捕まえた者が走って来た。

  • 花月地院 陽成

    「海星！」

  • 人魚 海星

    「陽成！ 助けて。。。。」

  • 花月地院 陽成

    「やめろ！ その人魚は私の所有物だ。丁重に扱え」

  • ゆうか

    「何を仰（おっしゃ）います！ 人間を襲うのですよ！ 丁重になど扱っておられますか！」

  • 花月地院 陽成

    「黙れ。。やめろと言ったらやめろ。。この私を誰だと思っている！」

  • 人魚 海星

    「陽成。。。」

  • 　捕まえられる時に乱暴に扱われたのであろう、ところどころ怪我をしていた。

  • 花月地院 陽成

    「済まない。。。痛かっただろう。。。」

  • 　私は、海星の怪我を呪符で癒した。

  • 　それを見ていた、道案内の少女が問う。

  • ひなこ

    「なぜ。。花月地院様は人魚を助けたのですか？」

  • 花月地院 陽成

    「それは海星と私は友達だからだ」

  • ひなこ

    「友達？」

  • 花月地院 陽成

    「そう友達とは助け合う者だ、だから私は海星を助けた」

  • ひなこ

    「相手は人魚ですよ？」

  • 花月地院 陽成

    「人魚だからなんだ、友達は友達だ！」

    「何故あなた方は話し合える者と話し合わない！」

    「乱暴にしなくても鱗は取れるだろ!!」

  • ゆうか

    「だがしかし。。。」

  • 花月地院 陽成

    「それでは集落は成り立たんと言いたいのか？ 確かに人魚も人魚でやり過ぎな所はある」

    「やったらやり返すを繰り返すからお互いを貶めてしまうのだろう?!」

    「なぜ分からない!!」

  • 　海星、集落の者達は黙り込んでしまった。

  • 花月地院 陽成

    「特産物を売りたいなら、人魚が嫌な思いをしないよう譲り合えばいいじゃないか。。！」

  • 人魚 海星

    「確かに。。人魚は脱皮をするからその鱗なら痛くないし加工し易いと思う。。」

  • しのぶ

    「人魚の嘘なんじゃないか!?」

  • 花月地院 陽成

    「何故そういう事を言う！ 話を聴け！」

  • 人魚 海星

    「えっと。。。脱皮した鱗なら大きさも全部揃うし。。脱皮中は鮫（サメ）とかに襲われ易いから、その時助けてくれたら嬉しいかも。。。」

  • ゆうか

    「そうしたら今よりかは鱗が取れるのか？」

  • 人魚 海星

    「取れます。。」

  • みずき

    「本当にそうできるのか。。。？」

  • 人魚 海星

    「陽成が言ったでしょ、今脱皮の時期だからわたしがしてみせる」

  • 花月地院 陽成

    「海辺まで行って見ていよう。それなら文句ないな？」

  • のあ

    「わ、分かりましたよ。。。」

  • 　浅瀬に行くと海星の肌に皹（ひび）が入った、冷や冷やしながら見ていたが綺麗に尾鰭（おびれ）まで剥けると売り物と同じく光り輝く鱗が付いていた。

  • 人魚 海星

    「これを暫く乾かして、切り取れば大丈夫だよ」

  • ゆうか

    「なんとこれは。。。！」

  • しのぶ

    「珍しい！ ピンクの鱗ではないか!!」

  • ゆうか

    「しかも縁（ふち）が緑掛かってもいる！」

  • 花月地院 陽成

    「なんだそれはいい物なのか？」

  • のあ

    「ええ！ 大変いい物です!!」

  • 人魚 海星

    「陽成の目とお揃い。。。」

  • いおり

    「ピンクの鱗は少なくて、それに縁に緑はもっと数少ない鱗の一種なんです!!」

  • 花月地院 陽成

    「そうなのか。。。なら良かったな。。。」

  • しのぶ

    「でも、匿（かくま）うってどうやるんですか。。。？」

  • 花月地院 陽成

    「浅瀬に網を貼ればいいだろう、そうすれば浅瀬で取れる食料は確保できるだろ」

  • ひなこ

    「さすが！ 花月地院様です！」

  • 花月地院 陽成

    「人魚の海星にも感謝しろ！」

  • しのぶ

    「そうと決まればすぐに網を張りに行くぞ!!」

  • 　そうやって海星が体を張ってくれたお蔭で、集落の存続や人魚の乱獲はすぐに減っていった。

  • 暫く海星の調子を見た後、私は人魚に人間ともやって行ける方法を見付けたからお互い助け合って生きて行こうと提案した。

  • 中には私を襲おうとした人魚も居たが、海星が止めてくれた。

  • 海星は、この群れの中の長だったようだ。

  • お互い憎まずに済んだら、こんなに幸せなのかと海を見ていた。

  • すると、浅瀬まで来ていた。

  • 花月地院 陽成

    「どうした？ 海星」

  • 人魚 海星

    「いや、幸せな時間をありがとう」

    「こんなに憎まずに済むのがいいのか分かったよ！」

    「でもね、陽成はまだ居なくちゃいけない所があるんだよ」

  • 花月地院 陽成

    「それってどういう。。。」

  • 人魚 海星

    「もうお別れだよ。。。」

  • 花月地院 陽成

    「待って。。お別れなんて。。！」

  • 人魚 海星

    「もう決まっている事なんだよ。早く帰らなきゃ」

  • 花月地院 陽成

    「それじゃあ、海星たちは！」

  • 人魚 海星

    「わたし達はもう平気」

  • 花月地院 陽成

    「待ってよ。。！」

  • 人魚 海星

    「はい、これ上げる」

  • 花月地院 陽成

    「これって海星の鱗。。！」

  • 人魚 海星

    「陽成がこれからも幸せで居ますように！ またね！」

  • 花月地院 陽成

    「まって!! まってよ!!」

  • 　と叫びながら、気が遠くなっていった。

  • 花月地院 陽成

    「んぅ。。。。ん？」

  • 　もう外は夕暮れだ。

  • どれだけ寝ていたんだろう。

  • 神田エルンスト遊火

    「花月地院さん。。起きて」

  • 花月地院 陽成

    「エルンストか。。。」

  • 神田エルンスト遊火

    「その手に持っている物は？」

  • 花月地院 陽成

    「手？」

  • 　手を開くと、ピンクの鱗に縁が緑になっているネックレスがそこにあった。

  • 神田エルンスト遊火

    「ふふ、なんか花月地院さんの眼の色みたいだね」

  • 花月地院 陽成

    「なんだよそれ。。」

  • 　でもなんの夢を見たか覚えてないけどこのネックレスは大事にしなきゃと思い、大事な小物入れにしまった。

  • 人魚 海星

    「幸せにね」

  • 　誰かが、どこかで幸せを願っているのであった。

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