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執事
お嬢様
なにを読んでいらっしゃるのですか? -
お嬢様
恋愛風水の本。
わたしが気になる相手と食事するときは、辛いものを食べるとよいって書いてある。 -
執事
またそんな。根拠のないお話を鵜呑みになさっては……
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お嬢様
わかってる。
遊びで読んでるだけ。
でも一度試してみたいから、
辛い料理作って。
お酒も飲みたいな。
おつまみセットにしてくれる?
川島も付き合ってね。
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執事
かしこまりました。
お酒に合う辛いおつまみですね。
……今きづいたのですが。
それはつまりわたしのことが、気になる相手ということでよろしいのでしょうか? -
お嬢様
すきに解釈したら?
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執事
ええ、そういたします。
お嬢様は風水に頼りたくなるほど、オレのことがすきでたまらない、と。
ふっ、ふふふ……。 -
お嬢様
なにブツブツ言ってるの。
こわいよ川島。
ピアノの練習をしてくるから、できたら呼んでね! -
執事
・・・
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執事
お嬢様、支度が整いました。
カクテキ、麻婆豆腐、チョリソーなど一品もので揃えました。
大衆居酒屋のようになってしまいましたが、いかがでしょうか。 -
お嬢様
うん、ありがとう。
たまにはこういうのもいいよ。
川島も食べよ? -
執事
はい、いただきますね。
……!?
お嬢様、どうされましたか。
目に涙が。
さっそく風水の効果でしょうか! -
お嬢様
うっ、うう~。
辛いぃ……! -
執事
それは、辛い料理をお出ししましたから。
お嬢様、大丈夫ですか?
あぁダメです、お水はいけません。ますます辛さが増してしまいます。
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お嬢様
だって……舌がヒリヒリする~。
なんでこんなに辛くしたの。 -
執事
一般的な辛さにしたつもりなのですが……申し訳ございません、お嬢様。
舌を見せていただけますか? -
お嬢様
ん……。
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執事
少々、
腫れてしまったようですね。
お可哀想に……。 -
お嬢様
ちょっと、なにっ。
なんで急にキスするの! -
執事
お嬢様、大丈夫ですよ。
すぐにヒリヒリしなくなりますからね。
そう、
ジッとしていてください。 -
執事
んっ……、可愛い舌です……。
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お嬢様
はぁっ、ん、ん……。
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執事
……ね、もう治ったでしょう?
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お嬢様
うん。
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執事
はぁ。そんな可愛くうなずかないでくださ――
!!
お嬢様、他の男性とは絶対にこのような辛い料理は、召し上がらないでくださいね! -
お嬢様
どうして?
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執事
お相手の方が、オレのような行動に出たらどうなさるおつもりですかッ
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お嬢様
そんなわけないでしょ。
川島いつも心配しすぎ。 -
執事
お嬢様が、あまりに無邪気でいらっしゃるせいです。
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お嬢様
バカみたい!
ほらぁ、料理が冷めちゃったじゃない。温め直してくるから待っててね。 -
執事
あっ、またそうやって逃げるおつもりですね。
お嬢様、お嬢様ー!
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