さくら



「そしたら、俺は、死んでもお前が泣かない様に」


夜の星を背負って、嘉国は満面の笑みで、太陽みたいに笑った。


「生まれ変わって、ちゃんとお前に会いに行くから。」






闇を裂いた嘉国の声に、シン、と辺りが静まり返った気がした。
思いがけない一言に面食らったのは浩一だ。
鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をして、浩一はポカンと口を空けて嘉国を見つめた。


なんの迷いも無く言い放った嘉国に、浩一はもう怒鳴る気にもなれなかった。








アホか


坂道に立って叫ぶ嘉国は、アホ以外の何者でも無い、と浩一は心底呆れた。

あいつは本当に頭が悪い。
生まれ変わったらだと?



「な、約束っ」



晴れやかに笑う嘉国。


ふ、と浩一の視界が歪んだ。
胸が、締め付けられる。




そんな非常識な事簡単に言うなよ。
本当に馬鹿だな、お前は。



そんな馬鹿が大事な俺も。
大概どうしようも無い馬鹿なんだろうけど。


そう思いながらも目頭が熱く、浩一はそこに立ち尽くしたまま、動くことができなかった。
頬を伝う滴を垂れ流したままでいると、歪んだ視界の先から大事な少年がこちらに駆けて来るのがぼんやりと見えた。



それでもさ、なぁ嘉国。
お前がいくら馬鹿でも
憎まれ口ばっかで可愛くなくても


生まれ変わって、また会えるんだとしても



お前が死んだら、
俺はやっぱり泣くと思うよ。










おわり
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