決戦は土曜日(後編)
「それで、どうするんだよ。お二人さん」
若干疲れた様子の和田が聞くと和仁がチラり、と軽く振り返り横顔だけ覗かせてニコ、と笑って見せた。
「そりゃ勿論決まってるよぉ~。」
そう言って顔を梶原の方へ向けると、穏やかだが威圧のある笑みで梶原を見据える。
「残念ですがその条件を呑むわけにはいきませ~ん。」
その言葉を聞いて和田と九条は同時に頷いてから、間を空けて、ん?と首を捻った。
この男は今何だかおかしな事を言わなかっただろうか。
そう思いながらニコニコと笑う和仁を同時に見据えた。
「虎組は千葉隆平という人物に人質としての価値は見出せませ~ん。」
「「何ぃいいいい!!!???」」
驚いたのは九条と和田だ。
さらっと爆弾発言をかました和仁は笑みを携えたまま、相変わらず飄々としている。
和仁の予期せぬ言動に梶原は「え、そーなの?」と残念そうな顔をして隆平を見た。当の隆平はすん、としている。
「なんかごめんね。」
「傷に塩塗らないでもらえます…?」
梶原の謝罪に隆平がいたたまれなさに遠い目をする。
そんな隆平を他所に、梶原は和仁達に視線を戻すと「はいっ」と挙手をしてみせた。
「作戦タイム!」
「認めまーす。」
和やかに受け答えする和仁に「ども」と頭を下げた梶原はゆる~い掛け声で「集合~」と周りに声を掛け隆平と梶原を中心に人垣ができる。
それを見た九条が和仁の肩を力任せに掴んだ。
「どういうつもりだ、てめぇ。」
ギリギリ、と肩に爪が食いこんで来る感覚を味わいながら、和仁は笑いそうになるのを、歯を食いしばって懸命にこらえていた。
「九条、そんなに千葉君が心配?」
「そうじゃねぇ。あいつがどうなろうが関係ねえ。」
ただ、と九条は続けた。
和仁の肩を掴む力が一層強くなる。
「てめぇがあいつを勝手に扱ってんじゃねえよ。てめぇのモンじゃねえだろうがよ。あんま調子乗ってっと殺すぞ。」
九条の言葉を聞いた和仁は耐えきれず「ぐふっ」と声を漏らした。
まじかよこいつ、と心の中で繰り返しながら目を瞑る。
「(全部漏れちゃってんだよねー九条。今てめぇのモンじゃねえって言った?やばーーーー!やばいんですけどこの人ーーー!でもお生憎様。)」
「お前のもんでもないでしょうが。」
呟いた和仁に、九条が眉間の皺を深くして「あ?」と低い声を出した。和仁は顔に笑みを戻した。
「なんでもないよ。てかそんなに怒ることないじゃん。別に捨て駒にするわけじゃないんだから。少し様子を見るだけ。」
「…様子を見る?」
九条と和仁のやり取りを黙って見ていた和田が怪訝な顔をする。
どうにも和仁の言動が理解できないと言った様子だ。
困惑の色を濃くする和田に、和仁は九条の手を肩からやんわりと外すと、静かに問い掛けた。
「和田チャン、奴らが千葉君の事を知っているのはどうしてだと思う?」
「…誰かが事前にタレ込んだんじゃねえか?罰ゲームで九条と千葉が付き合ってんのを知ってんのは組の内部だけだ。でなきゃ千葉に人質の価値があるなんて思いつかないだろうからな。」
「うちの内部にコウモリがいる?」
「考えたくねぇけどな。」
「いや、虎組以外にもう一人いるでしょ、可能性が高い奴が。」
見据えられた和田は、和仁の目が笑っていない事にようやく気が付いた。
「聞いてないよ、まさか拒否られるなんて。もうね、超予想外なんですけど。」
「そんなのおれに言われても困ります。」
「このままだと皆九条に皆殺しにされちゃうねー。どうする?」
「だからおれに聞くなよ!!!」
縛られた隆平は立つこともままならず只怒りに任せて怒鳴り散らした。
「大体いきなり人質って何⁉お前らは誰!?なんでおれの事知ってんの!?こんなんじゃいつまで経っても九条と話もできやしねえ!!お前らなんかに構ってる暇はねぇんだぞ!!おれは!!」
叫んでロープに縛られたまま暴れ出す隆平を周りがどうどう、と宥めてくるのがさらに隆平の怒りを買う。
一方梶原は隆平の言葉を聞き、「へぇ」と感心したように笑うと、隆平の前にしゃがんで目線を合わせる。
「君、九条と話したいのかい?」
「質問に答えろよ!」
どこか焦っているような隆平に梶原は優しく笑うと、その頭に手を載せる。
「俺らがなんなのかなーんも言えないけど、最初に言った通り君に危害を加えるつもりはないんだわ。ただ、ちょっっっっとした手違いでね。九条と君がここに来る事は想定外だったんだよね。」
「意味が分かりません。」
「ですよねー。」
笑う梶原に隆平はまたしても毒気を抜かれる。
そういえば、今まで怒って気がつかなかったが、周りをよくよく見ると、ガラの悪い奴等に混じって、どう見ても戦闘要員ではない者も見受けられた。
どちらかと言うと、家でパソコンを弄ってる方が似合いそうな細身の男が何人もいる。
若干疲れた様子の和田が聞くと和仁がチラり、と軽く振り返り横顔だけ覗かせてニコ、と笑って見せた。
「そりゃ勿論決まってるよぉ~。」
そう言って顔を梶原の方へ向けると、穏やかだが威圧のある笑みで梶原を見据える。
「残念ですがその条件を呑むわけにはいきませ~ん。」
その言葉を聞いて和田と九条は同時に頷いてから、間を空けて、ん?と首を捻った。
この男は今何だかおかしな事を言わなかっただろうか。
そう思いながらニコニコと笑う和仁を同時に見据えた。
「虎組は千葉隆平という人物に人質としての価値は見出せませ~ん。」
「「何ぃいいいい!!!???」」
驚いたのは九条と和田だ。
さらっと爆弾発言をかました和仁は笑みを携えたまま、相変わらず飄々としている。
和仁の予期せぬ言動に梶原は「え、そーなの?」と残念そうな顔をして隆平を見た。当の隆平はすん、としている。
「なんかごめんね。」
「傷に塩塗らないでもらえます…?」
梶原の謝罪に隆平がいたたまれなさに遠い目をする。
そんな隆平を他所に、梶原は和仁達に視線を戻すと「はいっ」と挙手をしてみせた。
「作戦タイム!」
「認めまーす。」
和やかに受け答えする和仁に「ども」と頭を下げた梶原はゆる~い掛け声で「集合~」と周りに声を掛け隆平と梶原を中心に人垣ができる。
それを見た九条が和仁の肩を力任せに掴んだ。
「どういうつもりだ、てめぇ。」
ギリギリ、と肩に爪が食いこんで来る感覚を味わいながら、和仁は笑いそうになるのを、歯を食いしばって懸命にこらえていた。
「九条、そんなに千葉君が心配?」
「そうじゃねぇ。あいつがどうなろうが関係ねえ。」
ただ、と九条は続けた。
和仁の肩を掴む力が一層強くなる。
「てめぇがあいつを勝手に扱ってんじゃねえよ。てめぇのモンじゃねえだろうがよ。あんま調子乗ってっと殺すぞ。」
九条の言葉を聞いた和仁は耐えきれず「ぐふっ」と声を漏らした。
まじかよこいつ、と心の中で繰り返しながら目を瞑る。
「(全部漏れちゃってんだよねー九条。今てめぇのモンじゃねえって言った?やばーーーー!やばいんですけどこの人ーーー!でもお生憎様。)」
「お前のもんでもないでしょうが。」
呟いた和仁に、九条が眉間の皺を深くして「あ?」と低い声を出した。和仁は顔に笑みを戻した。
「なんでもないよ。てかそんなに怒ることないじゃん。別に捨て駒にするわけじゃないんだから。少し様子を見るだけ。」
「…様子を見る?」
九条と和仁のやり取りを黙って見ていた和田が怪訝な顔をする。
どうにも和仁の言動が理解できないと言った様子だ。
困惑の色を濃くする和田に、和仁は九条の手を肩からやんわりと外すと、静かに問い掛けた。
「和田チャン、奴らが千葉君の事を知っているのはどうしてだと思う?」
「…誰かが事前にタレ込んだんじゃねえか?罰ゲームで九条と千葉が付き合ってんのを知ってんのは組の内部だけだ。でなきゃ千葉に人質の価値があるなんて思いつかないだろうからな。」
「うちの内部にコウモリがいる?」
「考えたくねぇけどな。」
「いや、虎組以外にもう一人いるでしょ、可能性が高い奴が。」
見据えられた和田は、和仁の目が笑っていない事にようやく気が付いた。
「聞いてないよ、まさか拒否られるなんて。もうね、超予想外なんですけど。」
「そんなのおれに言われても困ります。」
「このままだと皆九条に皆殺しにされちゃうねー。どうする?」
「だからおれに聞くなよ!!!」
縛られた隆平は立つこともままならず只怒りに任せて怒鳴り散らした。
「大体いきなり人質って何⁉お前らは誰!?なんでおれの事知ってんの!?こんなんじゃいつまで経っても九条と話もできやしねえ!!お前らなんかに構ってる暇はねぇんだぞ!!おれは!!」
叫んでロープに縛られたまま暴れ出す隆平を周りがどうどう、と宥めてくるのがさらに隆平の怒りを買う。
一方梶原は隆平の言葉を聞き、「へぇ」と感心したように笑うと、隆平の前にしゃがんで目線を合わせる。
「君、九条と話したいのかい?」
「質問に答えろよ!」
どこか焦っているような隆平に梶原は優しく笑うと、その頭に手を載せる。
「俺らがなんなのかなーんも言えないけど、最初に言った通り君に危害を加えるつもりはないんだわ。ただ、ちょっっっっとした手違いでね。九条と君がここに来る事は想定外だったんだよね。」
「意味が分かりません。」
「ですよねー。」
笑う梶原に隆平はまたしても毒気を抜かれる。
そういえば、今まで怒って気がつかなかったが、周りをよくよく見ると、ガラの悪い奴等に混じって、どう見ても戦闘要員ではない者も見受けられた。
どちらかと言うと、家でパソコンを弄ってる方が似合いそうな細身の男が何人もいる。