覚悟(後編)





夜明けが近い。


パソコンの画面から洩れる光だけが煌々と部屋の隅を照らしている。
その部屋には無数の配線が縦横無尽に広がり、様々な機器が備え付けられていたが、起動しているのは、一台のパソコンだけ。
そのパソコンの前に座った男は黙ってその画面を見ながら、ゆっくりと唇の端を上げる。

計画は着々と進んでいる。
後は、「彼等」がどう変化していくか、それが問題だった。

「なるべくだったら穏便に済ませたい、けど。」

そう簡単にいくのであれば苦労はしない。
やはり重要な鍵を握るのは、この子か、と男は一人の少年の画像を拡大する。
何も取り得が無さそうな平凡な少年が無邪気に笑っている写真が引き伸ばされて、男もその笑顔につられる様に笑った。

「うまく働いてくれれば良いんだけどね。」

そういいながら、男は窓に目を向けた。
綺麗な朝焼けを見ながら、男はあくびを一つ零した。



明けない夜はない。


だから、そろそろ自分も動き出さなければ。
本当を言うと、あの明るい太陽の光はあまり好きではないのだが、ここまで来たら後には戻れないから。


「さぁ、始めようか。」





覚悟なら、とうの昔に出来ている。



つづく
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