罰ゲーム開始

「俺と付き合え」


呟かれた言葉の意味とは裏腹に、眼前の男の目は限りなく据わり、声にはドスがききまくっている。
それはどう見ても脅迫カツアゲの類であった。







Penalty game(ペナルティゲーム)









現状を簡潔に述べると、俗に言う愛の告白の真っ最中だ。
告白しているのは男。
名は九条くじょう大雅たいが

恵まれた体格。
金と黒の髪は虎の毛皮のようで、強面だが美しく整った顔立ちを引き立てている。
町を歩けば誰もが振り返る、派手で華やかさのある男。

所謂いわゆる、美形というやつである。



対して、その九条の告白を受け、ぽかんと口を開けたまま間抜けな顔をしているのも男。

名は千葉ちば隆平りゅうへい

町を歩けば誰しもが口を揃えて「普通」と形容する容姿、体型、髪型。
説明するにもあまり特徴がない。

所謂いわゆる、平凡というやつである。


この平凡な男は、今まさに自分に降りかかっている状況が呑み込めず、硬直していた。

お互いの面識もない状態でなぜ己は愛の告白を受けているのだろう、と隆平はただただ眼前の男を見つめるほかない。


しかし、そんな隆平を他所に、この状況を一番異常だと感じているのは告白している九条本人であった。

(ありえねぇ。)

さきほどから何十回と心の中で呟いた言葉が九条の脳裏に浮かぶ。

最初にことわっておくと九条は同性愛者では無い。
むろん、目の前の少年が好きというわけでもない。

好きとか嫌いとかいう以前に、今の今まで九条はこの少年の存在を認識すらしていなかった。

なぜこんな事になったのだろうか。
なぜ男に告白しなければならないのか。

しかも全く初対面と言って良い相手に。


(ありえねぇ。)


後悔先に立たず。

そんな先人の言葉が思い浮かび、彼は涙が出そうになった。
この不幸な男、九条大雅の苦悩の記憶は数時間前にまで遡る。
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