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九龍 千歳
ねえ。
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梅田 伊織
ん?どした?
授業中に連絡なんて珍しくない? -
九龍 千歳
ダメでしょ気付いちゃ。
授業中は電源切っとけよ。 -
梅田 伊織
それお前が1番言っちゃいけないセリフだぞ?
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梅田 伊織
で、なんだよ
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九龍 千歳
只今足を踏まれております。
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梅田 伊織
ちょっと待って、何その状況!
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九龍 千歳
今グループディスカッションで机を向かい合わせにくっつけてるだろ。
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梅田 伊織
うん、6人で固まって話し合ってますけど
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九龍 千歳
俺の目の前の奴が、思いっきり俺の足を踏んでるんだ。
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梅田 伊織
なんで俺に言うの?
本人に言えばイイじゃん -
九龍 千歳
言えないよ。
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梅田 伊織
なんでよ
「足踏んでるよ」でイイじゃん -
九龍 千歳
こっちのグループを見てみろ。
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梅田 伊織
うん、見た
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九龍 千歳
物凄く白熱したディスカッションを繰り広げているだろ。
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梅田 伊織
まあ真面目な人が集まったグループだからね
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九龍 千歳
そんな中、「足踏んでるよ」だなんて話の腰を折るような事出来るか?
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九龍 千歳
しかも目の前の奴が、1番盛り上がってると来た。
これは無理だろ。 -
梅田 伊織
じゃあ足をグッと動かしてみたら?
さすがに気付くだろ -
九龍 千歳
とんでもない強さで踏まれていて、1ミリも動かせないんだ。
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梅田 伊織
えー!
じゃあどうすんだよー! -
九龍 千歳
もう良い、このまま俺の右足を生贄にする。
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梅田 伊織
生贄って、そんな大袈裟な…( ̄▽ ̄;)
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九龍 千歳
俺の足を犠牲にする事で良い議論が出来るんだ。
生贄冥利に尽きるよ。 -
梅田 伊織
それ自己犠牲か?
ホントに良い議論がしたいが為か? -
九龍 千歳
ごめんなさい。
カッコつけました。
ただのコミュ障なだけです。 -
梅田 伊織
はい、素直でよろしい
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15分後
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九龍 千歳
俺はアイツが恐ろしい。
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梅田 伊織
今度は何?
もうディスカッション終わったんだから、解放されたろ? -
九龍 千歳
そう、その後だ。
ディスカッションが終わって机を戻してる時に、コソッとアイツに言われたんだ。 -
九龍 千歳
「踏まれてたのになんで何も言わないの?」って。
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梅田 伊織
こっわー!!
何それ、気付いてたのかよ!! -
九龍 千歳
そう、アイツは俺の足を踏んでいると自覚していたのに、敢えて踏み続けていたんだ。
そして何も言わなかった俺が悪いと言わんばかりに責めてきたのだ。 -
九龍 千歳
これは完全にイジメですわ。
教育委員会ですわ。 -
梅田 伊織
で、なんて答えたんだよ
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九龍 千歳
「君の素晴らしい討論に聞き入ってしまっていた」と。
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梅田 伊織
ん?
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九龍 千歳
そして彼は満足気に笑っていた。
そして「君のお陰だよ」と労いの言葉を掛けてくれたのだ。 -
梅田 伊織
ん?ん?ちょっと待って
おかしくね? -
九龍 千歳
こうして平和は保たれたのだった。
~完~ -
梅田 伊織
あ、終わった。
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