「黒猫」もうひとつの物語・第一弾「リアムの恋」
ランチの時間になると、蒼野が葵天を呼びに来た。
「アオイ、一緒に食堂行くぞ」
今日から葵天は食堂で昼食をとることになった。それまでは女子たちと楽しそうに弁当を広げていたのに、どうしたんだろうか。
「イツキ、槙先輩に話してくれて、ありがとう。僕、彼女たちの話には少し困っていたんだ」
「そうじゃないかなって思ってさ。俺、エスパーだから」
「イツキ、すごいね。いつからエスパーになったの?」
「まじに聞いてくるか、それ!」
「フフン」
葵天と蒼野の掛け合いが、すごく自然だな。一緒に生活をすると、あんなに馴染むものなのか? 羨ましいな。
「さあ。リアム、行こう」
葵天が、俺と手を繋いでくれる。
「なあなあ、なんで立花はリアムの手引いてんの? なんでイツキとリアムだけ名前呼びなん」
この高梨の下手な関西弁にも、慣れてきたな。
「イツキは幼なじみだし、リアムは……アメリカで知り合った……だからリアムも幼なじみかな。ね!」
俺に向かってウィンクしてるのか……それは凶器だ、葵天……。俺をどうしたいんだ。
「アカン。そのウィンクは絶対アカンよ」
「どうして……」
葵天……自覚なし。俺、しょげていいかな。
「好きになってまうやろう」
「シュウト、古い」
「アカンかったか……」
「それよか、俺らも立花のこと、名前で呼んじゃいけないかな」
コイツは、蒼野の次にできるヤツ。誠実そうだ。
「構わないよ。僕のこと『アオイ』って呼んで」
弁当を両手で持ち、小首を傾げるその仕草。可愛い。
「アオイ、シュウトじゃないけど、『好きになってまうやろう』だぞ」
「イツキ……」
食堂は笑いで溢れている……が、俺は笑えない。なぜなら……俺、本気だから。
「俺は結城大夢で、ヒロって呼んで」
「うん。結城くんは、ヒロだね」
「俺は空閑星矢。だからセイヤ」
「空閑ちゃんは、セイヤ」
「おいおい、いつ『空閑ちゃん』になったんよ」
「今」
高梨……柊斗、要注意人物が一人増えた気がする。
「おいらは山田健太。だから……」
「ケンタ!」
葵天の即答。やっぱ、いい!
「まんまだね」
「ラストを飾るんは、俺。高梨柊斗。シュウって呼んだって」
「シュウ? みんなからは『シュウト』って呼ばれてるじゃない」
「ちょっとでも差ぁつけたいの」
コイツ……って、葵天。なにこんなヤツにニコニコ顔で相手してるの。
「わかった。高梨くんは、シュウ。かっこいいね」
「おお、アオイ……なんか気恥ずかしいな」
「お前自分で言っといておかしくね」
「よっ! セイヤのナイスツッコミ」
こいつら、どこまで冗談なのかわからないな。
「リアム、俺らチームメイトだし、これからはお互い名前で呼びあおうな」
樹……俺、勝てる気しないな。結構凹みそう。
「一年。ゴールデンウィーク明けには、中間があるからな。赤点とったら、たとえレギュラーでも県大は出られないぞ」
「はい」
槙キャプテンが俺らにハッパをかける。
「大丈夫です。一年には、リアムとアオイがいますから」
ん? どういうこと……?
「僕とリアムで、テスト対策をしろっていうことかな」
なるほど……。
「そうだね。教えてはあげられないけど、一緒に考えようね」
「お前は漢字ドリルな」
「はっ、イツキそれ言っちゃダメなやつ……」
「なに、アオイ漢字弱いん」
「だって……記号にしか見えないんだもん……」
日本人学校に通ってなかったのか?
「ほな俺が教えたる」
「ダメダメ、こいつに個人レッスンさせると、やらしいことしてくるから」
星矢くん……『やらしい』ってなに?
「そんなことせえへんよ」
「嘘つけ。中学ん時『女子とする前に練習しよ』って、チューしてきたじゃんか」
星矢……。
「未遂に終わったからええやん」
「いいことあるか」
やっぱコイツ、危険人物だ。
「シュウト、俺も一緒にいいか」
「はあ?」
俺も漢字は苦手だ。葵天と一緒にいられる。
「リアムお前も……」
「俺も漢字苦手なんだ。よろしくな」
「リアム……ふたりで頑張ろうね」
やっと俺のこと見てくれた。うれしい。
「わかった。ほなふたりの漢字は俺に任しとき」
「俺も一緒に見るよ」
ゲッ! 樹……お前も教える側に加わるんだ。
「イツキ、ありがとう」
「おい、話はまとまったか。さっさと食わねえと、午後の授業始まるぞ」
「はい」
明日から、昼も葵天と一緒にいられるけど、どいつもこいつも油断ならないヤツらばっかしだな。葵天に防犯ブザーでも付けるか? そんなのないよな。俺、やっぱ最弱。
──────────
もうすぐゴールデンウィーク。
俺らは部活で、東京と埼玉へ遠征試合。葵天は、ゴールデンウィークにどこかへ行くのだろうか?
「アオイ、おま……」
立花、俺が葵天と話してんだぞ。
「アオイ! ゴールデンウィーク、一緒に出かけない?」
「いいよ。僕に観光地案内してくれるのかな」
「それも、いいね」
立花……。
「あっ、リアム。どうしたの?」
「いや、ゴールデンウィーク……」
「アオイ、後で時間とか知らせるね」
「うん。……リアム、ごめんね。なんだったけ?」
「いや、ゴールデンウィークさ」
「リアムたちは遠征試合だよね。頑張ってきて! 応援には行けないけど」
「それは、いい」
「大変だよね。部活って」
「そうでもないよ。全国制覇がかかってるからな」
「リアム、かっこいい」
この笑顔だよなあ……って、葵天が立花とどこかへ行くのか? どこだ。
「メグ、私も行くからね。時間教えなさいよ」
「わかった」
女子の声は高いから響くな。一ノ瀬も一緒に行くのか。とりあえず三人、ふたりっきりになることはなさそうだな。ひとまず安心って、俺やっぱり最弱……。頭を遠征試合に切り替えないと、チームに迷惑かけるよな。
「リアム、顔が怖いよ。笑って」
葵天って、子供の時も思ったけど、誰にでも優しいんだよな。
「あっ、そんなだった。気をつけるわ……ハハハ」
この気持ち、いつか葵天に伝えたら、やっぱり『気持ち悪い』って、言われるのかな。それなら、伝えるのやめた方がいいかな。
ダメだ。ゴールデンウィーク中は、葵天を断つぞ。できるのか、俺……。
「アオイ、一緒に食堂行くぞ」
今日から葵天は食堂で昼食をとることになった。それまでは女子たちと楽しそうに弁当を広げていたのに、どうしたんだろうか。
「イツキ、槙先輩に話してくれて、ありがとう。僕、彼女たちの話には少し困っていたんだ」
「そうじゃないかなって思ってさ。俺、エスパーだから」
「イツキ、すごいね。いつからエスパーになったの?」
「まじに聞いてくるか、それ!」
「フフン」
葵天と蒼野の掛け合いが、すごく自然だな。一緒に生活をすると、あんなに馴染むものなのか? 羨ましいな。
「さあ。リアム、行こう」
葵天が、俺と手を繋いでくれる。
「なあなあ、なんで立花はリアムの手引いてんの? なんでイツキとリアムだけ名前呼びなん」
この高梨の下手な関西弁にも、慣れてきたな。
「イツキは幼なじみだし、リアムは……アメリカで知り合った……だからリアムも幼なじみかな。ね!」
俺に向かってウィンクしてるのか……それは凶器だ、葵天……。俺をどうしたいんだ。
「アカン。そのウィンクは絶対アカンよ」
「どうして……」
葵天……自覚なし。俺、しょげていいかな。
「好きになってまうやろう」
「シュウト、古い」
「アカンかったか……」
「それよか、俺らも立花のこと、名前で呼んじゃいけないかな」
コイツは、蒼野の次にできるヤツ。誠実そうだ。
「構わないよ。僕のこと『アオイ』って呼んで」
弁当を両手で持ち、小首を傾げるその仕草。可愛い。
「アオイ、シュウトじゃないけど、『好きになってまうやろう』だぞ」
「イツキ……」
食堂は笑いで溢れている……が、俺は笑えない。なぜなら……俺、本気だから。
「俺は結城大夢で、ヒロって呼んで」
「うん。結城くんは、ヒロだね」
「俺は空閑星矢。だからセイヤ」
「空閑ちゃんは、セイヤ」
「おいおい、いつ『空閑ちゃん』になったんよ」
「今」
高梨……柊斗、要注意人物が一人増えた気がする。
「おいらは山田健太。だから……」
「ケンタ!」
葵天の即答。やっぱ、いい!
「まんまだね」
「ラストを飾るんは、俺。高梨柊斗。シュウって呼んだって」
「シュウ? みんなからは『シュウト』って呼ばれてるじゃない」
「ちょっとでも差ぁつけたいの」
コイツ……って、葵天。なにこんなヤツにニコニコ顔で相手してるの。
「わかった。高梨くんは、シュウ。かっこいいね」
「おお、アオイ……なんか気恥ずかしいな」
「お前自分で言っといておかしくね」
「よっ! セイヤのナイスツッコミ」
こいつら、どこまで冗談なのかわからないな。
「リアム、俺らチームメイトだし、これからはお互い名前で呼びあおうな」
樹……俺、勝てる気しないな。結構凹みそう。
「一年。ゴールデンウィーク明けには、中間があるからな。赤点とったら、たとえレギュラーでも県大は出られないぞ」
「はい」
槙キャプテンが俺らにハッパをかける。
「大丈夫です。一年には、リアムとアオイがいますから」
ん? どういうこと……?
「僕とリアムで、テスト対策をしろっていうことかな」
なるほど……。
「そうだね。教えてはあげられないけど、一緒に考えようね」
「お前は漢字ドリルな」
「はっ、イツキそれ言っちゃダメなやつ……」
「なに、アオイ漢字弱いん」
「だって……記号にしか見えないんだもん……」
日本人学校に通ってなかったのか?
「ほな俺が教えたる」
「ダメダメ、こいつに個人レッスンさせると、やらしいことしてくるから」
星矢くん……『やらしい』ってなに?
「そんなことせえへんよ」
「嘘つけ。中学ん時『女子とする前に練習しよ』って、チューしてきたじゃんか」
星矢……。
「未遂に終わったからええやん」
「いいことあるか」
やっぱコイツ、危険人物だ。
「シュウト、俺も一緒にいいか」
「はあ?」
俺も漢字は苦手だ。葵天と一緒にいられる。
「リアムお前も……」
「俺も漢字苦手なんだ。よろしくな」
「リアム……ふたりで頑張ろうね」
やっと俺のこと見てくれた。うれしい。
「わかった。ほなふたりの漢字は俺に任しとき」
「俺も一緒に見るよ」
ゲッ! 樹……お前も教える側に加わるんだ。
「イツキ、ありがとう」
「おい、話はまとまったか。さっさと食わねえと、午後の授業始まるぞ」
「はい」
明日から、昼も葵天と一緒にいられるけど、どいつもこいつも油断ならないヤツらばっかしだな。葵天に防犯ブザーでも付けるか? そんなのないよな。俺、やっぱ最弱。
──────────
もうすぐゴールデンウィーク。
俺らは部活で、東京と埼玉へ遠征試合。葵天は、ゴールデンウィークにどこかへ行くのだろうか?
「アオイ、おま……」
立花、俺が葵天と話してんだぞ。
「アオイ! ゴールデンウィーク、一緒に出かけない?」
「いいよ。僕に観光地案内してくれるのかな」
「それも、いいね」
立花……。
「あっ、リアム。どうしたの?」
「いや、ゴールデンウィーク……」
「アオイ、後で時間とか知らせるね」
「うん。……リアム、ごめんね。なんだったけ?」
「いや、ゴールデンウィークさ」
「リアムたちは遠征試合だよね。頑張ってきて! 応援には行けないけど」
「それは、いい」
「大変だよね。部活って」
「そうでもないよ。全国制覇がかかってるからな」
「リアム、かっこいい」
この笑顔だよなあ……って、葵天が立花とどこかへ行くのか? どこだ。
「メグ、私も行くからね。時間教えなさいよ」
「わかった」
女子の声は高いから響くな。一ノ瀬も一緒に行くのか。とりあえず三人、ふたりっきりになることはなさそうだな。ひとまず安心って、俺やっぱり最弱……。頭を遠征試合に切り替えないと、チームに迷惑かけるよな。
「リアム、顔が怖いよ。笑って」
葵天って、子供の時も思ったけど、誰にでも優しいんだよな。
「あっ、そんなだった。気をつけるわ……ハハハ」
この気持ち、いつか葵天に伝えたら、やっぱり『気持ち悪い』って、言われるのかな。それなら、伝えるのやめた方がいいかな。
ダメだ。ゴールデンウィーク中は、葵天を断つぞ。できるのか、俺……。
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