-
謎の少年
ねえねえ、キミたち。
-
タケト
うん?
-
てっちゃん
なんだオマエ?
この辺じゃ見ない
顔だな? -
ケーマ
だーれー?
-
謎の少年
キミたちさ、いくつ?
-
タケト
おれ、9歳。
-
てっちゃん
オレも。
-
タケト
こっちのちっちゃいのは
おれの弟。 -
ケーマ
ケーちゃんねー
3しゃい! -
謎の少年
キミたちさ、
クリスマスプレゼント
ってもう頼んだ? -
てっちゃん
当たり前じゃん。
もう明日だもんさ。 -
タケト
なあ。
-
謎の少年
それってさ、
サンタクロースに
お願いした? -
ケーマ
したぁ!
-
タケト・てっちゃん
……
-
ケーマ
あのね、あのね、
あしたサンタしゃん
くるのー。 -
謎の少年
そっかそっか。
-
謎の少年
手紙は書いたかい?
書かないと
来てくれないんだよ。 -
ケーマ
かけないー(泣)
-
謎の少年
そっかそっか。
-
謎の少年
じゃー、キミは
絵でも何でもいい、
欲しいプレゼントを
キミ自身がかく。 -
謎の少年
字はにーちゃんに
書いてもらえばいい。 -
謎の少年
って、え?ナニ?
キミたち?
ボクの両脇なんか
持っちゃって? -
タケト
お前さぁ、
人の弟に何吹き込んで
くれちゃってんの? -
てっちゃん
サンタは親、
これ常識。
サンタなんて
チビッ子だましだよ。 -
タケト
(ちょっと、声でかい、
ケーマに聞こえる。) -
てっちゃん
(あっ、わるい。)
-
謎の少年
ふぅん?
じゃあキミたちは、
サンタクロースは
いないと?
そう思っているわけだ? -
てっちゃん
あたり前。
オレ、ゲームソフト
母ちゃんに頼んどいた。 -
タケト
おれも。
-
タケト
でも多分、
全然ちがうのを
用意してると思う。 -
てっちゃん
そうそう!
サンタさんが
お願いを聞いて
くれなかったのよー
って、わざとらしい
演技しちゃって。 -
てっちゃん
なんでそんなヘタな
ウソをつくかねぇ? -
タケト
さあね。
仕事で忙しくて
全然おれらを
分かってない事への
言い訳なんじゃないの。 -
てっちゃん
まあ、そうだろうね。
オレんちは酒屋、
タケんとこは
おじさんもおばさんも
会社だもんなぁ。 -
タケト
クリスマスイブくらい
早く帰ってこいって
感じだよ。 -
てっちゃん
まあ、そうだよなあ。
-
てっちゃん
そんなわけで、
タケとケーマは
これからオレんちで
夜までパーティーよ。 -
タケト
そうそう。
親が迎えに来るまで。 -
タケト
てっちゃん悪いね、
毎年。 -
てっちゃん
いいってことよ。
うちだってさ、
店が閉まるまで
オレひとりだし。 -
謎の少年
なんか、言いたい放題
言っちゃってるね? -
謎の少年
っていうか、そろそろ
放してくれない? -
タケト・てっちゃん
あっ、わるい。
-
謎の少年
やれやれ、
あー、いたかった。 -
謎の少年
あのさ。
サンタクロースは
いるんだよ。 -
謎の少年
キミたちが想像
しているのとは
全く違うと思うけれど、
いるのさ。 -
タケト
はあー?
お前いい加減にしろよ。
ケーマに言うなら
いいけど、おれらはもう
そんなトシじゃないし。 -
てっちゃん
そうそう。
だいたいオマエ、なに?
その真っ赤なド派手の
ネックウォーマー。
恥ずかしくねえの? -
謎の少年
わっ。何するのさ。
返してよ。 -
てっちゃん
やーだよー。
オマエがヘンな事ばかり
言うから。 -
タケト
お、裏は黒じゃん。
こっちにすれば
かっこいいじゃん。 -
謎の少年
ちょっと!
そんな勝手に… -
謎の少年
俺様に対して
そんな事をしていいと
思っているのか? -
タケト・てっちゃん
えっ?俺様??
-
謎の少年
もう遅いぞ、
後悔させてやる。 -
ぱちん!
-
タケト・てっちゃん
わあっ…!?
-
謎の少年
さあ、
どんどん落ちるよ。 -
謎の少年
下へ。下へ。
真っ暗闇を、どこまでも。 -
落ちる…
-
落ちる…
-
落ちる…
-
タケト
なん…っだよ、
お前!悪魔!?死神!? -
てっちゃん
ちょ、ちょ、ちょ、
足着かないワケ!?
落ちっぱなし!?
オレ、この引きずられる
カンジ、イヤー!!
キライー!! -
謎の少年
えっと、キミ、
てっちゃんだっけ? -
謎の少年
そのイヤーな
感じのままで、
足元を見てごらん。 -
謎の少年
ほら、キミのお父さんと
お母さんがいる。
一生懸命、働いてるね。 -
謎の少年
それがだ。
突然、いなくなるんだ。 -
謎の少年
配達の途中で、
事故にあったら?
不治の病に倒れたら? -
謎の少年
常々、キミが
ウザがっていた
ご両親が。 -
てっちゃん
おい…ちょっと…
ウソだろ…? -
謎の少年
ほら、ドーン。
-
謎の少年
ほら、パタリ。
-
てっちゃん
ウソって言えよ!!
-
謎の少年
キミの心はさぞ、
清々しいだろうね? -
てっちゃん
うわああああああ!!!
-
タケト
てっちゃん…!?
-
謎の少年
あらら。
自分も闇に飲み込まれて
行ってしまったね。 -
謎の少年
さて。次はキミ。
えっと、ターちゃんで
よかったよね? -
タケト
それで呼ぶな!
ケーマだけが言うやつ
じゃねーかよ。 -
謎の少年
そうそう。
そのケーマくん。
どこだろうね? -
タケト
えっ…!?
そういや…
一緒に来たはずだろ!? -
謎の少年
そういえば
ターちゃんは、
ケーマくんがジャマで
仕方なかったよね? -
謎の少年
お父さんとお母さんは、
いつもケーマくんばかり
可愛がる。 -
タケト
はっ…!?なに言って…
-
謎の少年
ケーマなんか、
生まれなきゃよかった。
そしたら、お母さんも
働きに出ないで済んだ。 -
謎の少年
ケーマがいなくなれば、
また自分を大事に
してくれる。 -
謎の少年
ちがう?
-
タケト
…っ…
-
謎の少年
おや?
あのちっちゃい手は
なんだろうね? -
タケト
…!!
ケーマ!ケーマっ!! -
謎の少年
あらあら。引っ張るの?
-
謎の少年
もう飲み込まれてるよ。
無理だと思うけど。 -
謎の少年
そもそもキミが、
いなくなれって
願ったんだろう? -
タケト
ちがう!
-
タケト
ちがう!
-
タケト
ちがう!
-
タケト
そりゃあ、ちょっとは
寂しいとか思ったけど!
それとケーマは
関係ない! -
タケト
ケーマ、おれの事やっと
兄ちゃんだって分かって
きたんだよ!
ターちゃんって、
おれの事おっかけて
くるんだよ! -
タケト
こんなにかわいい
ヤツのこと、
いらないなんて
思うかよーーー!!! -
謎の少年
ふぅん?
あっ、そ。 -
謎の少年
ともかく、コレは
返してもらったよ。 -
タケト
…へっ???
-
謎の少年
あー、ヤダヤダ。
コレが黒になるとね、
ボク、おしおきしたく
なっちゃうんだよね。 -
謎の少年
俺様とか言っちゃうん
だよね。そんなキャラ
じゃないのにさ。 -
謎の少年
よっこいしょ。
うん。いつもの赤だ。 -
謎の少年
あ、キミのケーマくんは
ずっとボクの背中に
いたからね。
暗くて見えなかった? -
ケーマ
ターちゃん♪
-
タケト
な…ぁんだぁ…
てめえ、この… -
タケト
あれ?
じゃあ、この手は…? -
謎の少年
うふふ。
引っ張ってごらん。 -
タケト
…あっ!?
てっちゃん!? -
てっちゃん
うわあーーー!
びっくりしたーーー! -
てっちゃん
死んだかと
思ったぞーーー!! -
てっちゃん
タケが引き上げてくれて
たすかったーーー!!! -
謎の少年
うふふ。
ごめんね、怖がらせて。 -
謎の少年
でもキミたちが、
ボクの大事な
ネックウォーマーを
取っちゃうから
いけないのさ。 -
謎の少年
さあ、実はまだ下へ
降りているんだけれど…
さっきよりはだいぶ、
スピードがなくなって
きたね。 -
謎の少年
もうすぐ、終わるよ。
-
謎の少年
大事なことが分かる、
終着点へ。 -
謎の少年
……
-
謎の少年
さあて…止まったよ。
-
てっちゃん
やっとかー!
-
てっちゃん
つーか、まだ地面じゃ
ないじゃねーかよ!
オレ、このフヨフヨ感も
キライー!! -
タケト
ここ…おれらの町の上?
浮いてるの?
夜景、キレイだな。 -
ケーマ
きゃー♪
-
謎の少年
サンタクロースはね、
12月24日の夜、
毎年この灯りを
見ているんだよ。 -
謎の少年
電気の灯りじゃない。
サンタのその年の役目を
果たしたという証の、
心の灯り。 -
謎の少年
誰がそれを、
灯していると思う? -
てっちゃん
…あっ…父ちゃんだ…
-
てっちゃん
…あんな所に並んで
なにやって… -
てっちゃん
…あっ!
ゲームソフト、
買ってくれてる!! -
タケト
あれ…
お父さんとお母さん… -
タケト
なんで家にいるの…?
仕事は…? -
タケト
…あっ…
料理してくれてる…
…飾り付けして
くれてる… -
タケト
…ケーマと…おれの
プレゼントだぁ… -
謎の少年
ほら、見てごらん。
キミたちのご両親から、
光が放たれている。 -
タケト・てっちゃん
うん。
-
謎の少年
12月24日に子供の為に
何かしている
大人は全員、
サンタクロースなのさ。 -
謎の少年
厳密には、
サンタクロースの使い、
かな?
サンタクロースの神様に
頼まれている、健気な
サンタクロース達。 -
謎の少年
ちゃんと仕事を
やり遂げたかどうか、
あの光を
サンタクロースの神様が
ちゃんと見ているんだよ。 -
タケト・てっちゃん
…うん…
-
謎の少年
サンタクロースの
使いにも、
役目の終わりが来る。 -
謎の少年
プレゼントを
送り続けた子供が、
大人になった時。
もう、送る必要は
なくなるね? -
タケト・てっちゃん
…うん…
-
謎の少年
そしたらさ。
あっ、ほら。
例えばあのおじいさんと
おばあさんの所に。 -
タケト
あっ…!?
-
てっちゃん
サンタ…クロース…!?
-
タケト・てっちゃん
うっそ、まじで…!?
-
謎の少年
ははは。まじまじ。
-
謎の少年
サンタの役目を
終えると、
サンタクロースが来て、
願いを叶えてくれるって
ワケ。 -
謎の少年
さて、あのふたりは
何を願うのかな…?
まあ…見ない方が
いいだろうね。 -
タケト・てっちゃん
…………
-
謎の少年
あれ?
なんか放心状態だね?
おーい。 -
ケーマ
ターちゃん。
-
タケト
…あっ、うん?
-
ケーマ
かえろ♪
-
タケト
……
-
タケト
そうだな。
サンタが来るから、
帰ろうか。 -
てっちゃん
だなー!
-
ケーマ
かえるー♪
-
謎の少年
うふふ。
じゃ、そういうわけで。
お三方、ご帰宅ー♪ -
てっちゃん
え?
ちょっとまて、オマエ、
結局なんだったの?? -
タケト
悪魔?死神?妖精?
あ!もしかして…… -
ーーーぱちん!
-
タケト
……
-
タケト
あ?
あれ?
おれら…何してた? -
てっちゃん
え?えーっと…
-
てっちゃん
あぁそうそう、
家に帰るんだよ。
タケんとこ、仕事から
早く帰ってきたんだろ? -
タケト
あぁ、そうだった。
-
タケト
ったく、てっちゃんと
パーティーするとこ
だったのによ。 -
てっちゃん
とか言って、タケ、
ニヤニヤしてんじゃん。 -
タケト
へへへ。
-
ケーマ
かえろー♪
-
謎の少年
(ふー、やれやれ。)
-
謎の少年
(ネックウォーマー
取り上げられて
どうなることかと
思ったけど、なんとか
切り抜けたぞ。) -
謎の少年
(神様にバレたら、
大変な目に遭うところ
だった。) -
謎の少年
(今回はボクの
気まぐれでひみつを
ばらしちゃったから、
記憶を消させて
もらったけれど。) -
謎の少年
(大人になって、
サンタクロースって
やつの意味を、
自分自身の手で
自分なりに見つけて
いたなら…) -
謎の少年
(その時また、
キミたちに
逢いにいくよ。) -
謎の少年
(その頃にはきっともう
ボクは、見習いじゃ
なくなっている
ハズだから。) -
謎の少年
(堂々と、キミたちに
プレゼントを渡しに
行ってもいいかい?) -
謎の少年
(……)
-
謎の少年
(……)
-
謎の少年
(…いいでしょ?)
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