漆黒の王女〈後編〉

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 ゼノスが 私の額を更にグイグイ押し付ける。

「私は城中のあちこちで火事を起こした…
 燃えゆく者共のおぞましい叫びを聞きながら…
 ダルフォンとお前にとどめを刺したのだ…」

 ………?

 ゼノスが、おかしな事を言っている。

 私を…殺したって…!?

 怪訝の眼差しを向けると、ゼノスは苦々しげに私を見た。

「そうだとも…間違いなく、この部屋で、この手で、お前達を…
 数日かけてやっと火が消えた頃、私とガルバは死体を片しにかかった…
 その時だ…
 王女がすり替えられていた事に気付いたのは…!
 私が殺めたのは、お前の服をまとい、黒髪を被った身代わりの女だったのだ…
 本物の王女は逃れた、黒の血筋はまだ絶えていない、私は血眼になった…お前の行方を何としても突き止める為に。

 そして私は見つけた…
 その女が家族宛てに書いたと思われる手紙を。
 お前の事が書かれてあった…赤いピアスを片方だけ付けた女の事を宜しく頼むと…
 住所など書かれて無かったし、名前はあったがそれだけでは分からぬ…使用人の名簿も焼けてしまったしな…
 黒髪、黒い瞳、赤いピアス。たったこれだけの情報を持たせてガルバを外へ行かせ…
 結果、こうしてお前が今、ここにいるというわけだ…!」

 私は話の途中から、身をガタガタ震わせて、涙を流していた。

 私を逃がしたとパパに伝えなければと言って、城に残ったザザ。

 ザザはあの後、私に成りすましたしたの?

 私が脱いだ王族の衣服を着て、切り落とした私の黒髪も付けて、

 それでパパと一緒にゼノスと対峙したの?

「…いやあーあーぁー…っ!!」

 ああ、ザザ、ザザ、

 ザザが殺された、

 私のせいでザザが殺された…!!!

「長く遠回りをしたが、これでようやく漆黒の血筋を終わらせられる…くっくっくっ!
 ──さらばだ、ユリシーナ・レグルスよ!」

「!!!」

 背後のガルバの締め付けが強まると共に、ゼノスの杖が振り下ろされた。





 パパやママ、ザザの元へ、私はゆくんだろうか。





《Continued to another point of view…》






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【漆黒の王女】中間雑談・11





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