夜間飛行

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 足下に鬱蒼と広がる暗い森、流れる雲に時折遮られる月光はそこへ届かない。

 その様子を私達は気球のゴンドラから、少し冷たい夜風に吹かれながら見つめていた。

「シーナ、寒くない? もう少しあったかい日に飛べばよかったかな」

「ううん、平気だよサザン。マント羽織ってるし、サザンが積んでくれた毛布だってあるし」

 イオが作ってくれたスープだってあるんだから、1Lのステンレスのボトルを掲げてみせると、サザンは大きく笑い、夜空を仰いだ。

 そこへちょうど雲が切れ、月の全てが晒される。

 再び下を覗くと、森に気球の影がくっきりと浮かび上がっていた。

 城を飛び立ってまだ10分も経っていないけれど、気流に上手く乗って、城はもう豆粒の大きさ程に遠ざかっていた。

「どこまで行こう、シーナ?」

「どこへでも。
 でも、サザンの村やルニアの町とは違う方へ。
 それで、ちゃんと城に帰れる距離内で(笑)」

「了解(笑)」



 私とサザンは、夜間飛行をしている。





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