12月24日の灯り

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 彼は私の顔をじっと見つめて、私の事を思い出した? と私に思わせたが、動かない(動けない)私を不審がったのか、

「大丈夫? 落としたよ」

 さっとふたつを拾って私の腕に収めると、その足でそのまま向こうへ去ろうとした。

 やはり、別人なのだろうか? その背中に向けてありがとうございます、謝辞は声にならず、喉が異様に渇いていた。

「おぅい、オマエも今からタケん家?」

 公園の外側から仲間のひとりが私を呼んで、それに手を挙げる事で応えた──よかった、硬直状態でなくなったようだ。

 彼の事はもういいかと仲間の元へ駆け寄ろうとしたその時、またもや妙な事が起こった。

 キィンという音が静寂を連れてきて、酸素の薄い所へ移動してきたような息苦しさを感じた。

 なんだこれ、私が思うより先に、彼がまたこちらを見た──今度こそ、私と認識しての眼差しに見えた。



(ミッションクリアしたようで、おめでとう。

 どっちが、キミの望んだもの?

 まあどうでもいいや、僕には関係ない)



 彼と私の間は20m程空いていたが、そうはっきりと聞こえて、そのすぐ後に、

 ──ぱちん。

 指を鳴らす音と共にガクンと膝が折れかかった。

 今のは一体何だったのか。何ぼけっとしてんだ、早く行こうぜ、せっつく仲間にあぁと返事をして、最後にもう一度彼の方を見た。

 彼はキョロキョロと辺りを見回して、何が何だか分からないという風にモジャ頭をワシャワシャと搔いていたが、何してんだ、日が暮れてしまうぞ、遠くから先輩に発破を掛けられて、跳び上がるようにしてここを去っていった。





 その日以来、ここまで生きてきた私は、奇っ怪な男にも奇っ怪な出来事にも遭遇する事はなかった。





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