12月24日の灯り
68/71ページ
右手に図鑑、左手にゲームソフト、仲間の家へ向かう途中で私はある場所へ寄り道をした。
もうクリスマスは終わった、いや、まだ25日、もしかしたら──一筋の期待を持った私は、再び出逢う事が出来た。あの奇っ怪な男に。
私の願いは叶った、あなたの寄越した契約書が効いたのだと、いの一番に伝えるつもりだった。
だが、私は彼に声を掛けられなかった。
何故なら、この時の彼があの日の彼と様子が違ったからだ。
もじゃ髪と無精髭、真っ赤なセーターに真緑のマフラー、恰好は全く一緒だったが、何と言ったらいいのか、とにかく別人に思えたのだ。
彼は先輩とおぼしき中年の男に缶コーヒーを奢られながら、
「集金あとどのくらい?」
「いやあ、皆さんなかなかご在宅でなくてね」
「お前いつまでそんな浮かれた服着てんだ、もう年の瀬だろうが」
「勘弁して下さいよ、僕の一張羅なんですって」
と話していて、妙にハキハキと喋っているのが違和感でしょうがなかった。
「さあもうひと回りしてかなくちゃな」とふたりがそれぞれ持ち場に戻ろうとする所を、私はチャンスと思い今度こそ声を掛けると一歩踏み出した。
ところが私が出来たのはそこまでで、どうした事か、私の身体がぴくりとも動かなくなったのだ。
前もこんな事あったな、焦りながらも頭の隅でそんな事を思っていると、手からふたつの贈り物がドサリと落ちた。
その音で、彼はこちらを振り向いた。
…