12月24日の灯り
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──そして12月24日を迎えた、その晩。
平日だったが父親はいつもより早く帰宅して、母親がはりきって作った豪勢な料理を皆で堪能した。
いつもは偏食で手を焼く妹が、この日のご飯だけは機嫌良く完食した。
「りっちゃん今日はとてもがんばったからね」
父親が帰りがけに買ってきてくれたクリスマスケーキを食卓に出しながら、母親はニコニコして言った。
「いーっこ、いーっこ」
大好きな苺に目を輝かせる妹、舌っ足らずに手を伸ばそうとしていたので、止めようとしたが
その時間はほんの数秒、手を掴むなり背後から腰ごと抱き上げたりなんかしたら、妹は泣き叫ぶだろうし、母親からは「何やってるのよ、余計な事を!」と刃が飛ぶに違いなかった──どちらも、特に後者は、嫌だった。
「りっちゃん、用意が出来るまでこっちでテレビ観よう。りっちゃんの大好きな◯◯マンやってるよ。
お椅子からー、テレビまでー、それいけりっちゃんー」
父親がそう言って妹の両脇に手を差し込んで抱き上げると、「きゃーっ、あっぱっぱぁ」妹はご機嫌に脚をパタパタさせて飛ぶ真似をした。
「おとうさんありがとうねぇ、助かるわ。ほら、今の内にお皿とフォークを並べて頂戴」
グラスにドリンクを注ぎながら早口で言う母親に対して、もう期待などしない。こんな祝い事の日にまで、負の感情を持つなんてしなくたっていいのだ──ロボットのように言いつけられた事をこなした。
ローソクに火を灯し、部屋の電気を消し、歌を一節歌って、「メリークリスマス」と声を揃えたと同時に妹がぶーっと息を吹きかけて火を消した。
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