12月24日の灯り
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家族でよく行くショッピングモールの、おもちゃ屋に足を踏み入れた。
平日だからガラガラ、子供ひとりだと浮くのか、レジの人がカウンター越しにジロジロとこちらをうかがう。
その視線に縮こまりながら商品棚をゆっくり見渡した。食指が動く物は…無さそうだ。
本当はいくつかゲームソフトが欲しかったが、ゲームソフトはねだるな、自分のお小遣いで買いなさいと釘を刺されている。
は、と誰にも気付かれない様に溜め息を溢した。いっそ現金をくれたりしないかな、母親が激昂しそうな案をふと浮かべて、慌てて打ち消した。
自分が本当に欲しいものが何なのか、この時の私は本当に分からなかった。自分の事なのに分からないのが、無性に悔しくて腹が立った。
「…本屋に、何かあるかな」
ぽつり言い落として
妹と同じか少し下かな、と見ていると、女の子のママだろう若い女の人が私の横を小走りで抜けて、女の子の横にしゃがんで「これ気に入ったの?」と優しい声で話し掛けた。
「あっぱっぱ」と言いながら女の子がおもちゃの鉄琴をカンカン鳴らし、「上手、上手」とママが目尻を下げながら手を叩く。
その光景を、その、何とも言えない気持ちで見ていた私は、ふと女の子の薄く伸びかけた髪を結ったヘアゴムに目が行った。
うちの妹は短い髪でよく男の子と間違われるから、あの子のようにはならないな…
そう思って、おもちゃ屋を後にした。
本屋に向かう筈の私の足が、それとは違う方へ向いた事に、私は全く気付かなかった。全く、無意識だった。
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